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光学レンズ

レンズとは、狭い意味では光学レンズを指し、光を屈折させたり発散させたり集束させたりする光学素子を指す。
光は物理的には電磁波の一部のある波長の可視光線かそれに準じるものを指す、その性質では波の性格と粒子の性格を合わせて持つ、その二面性は電磁波以外の物理現象でも存在する、故にあらゆる物理現象では多かれ少なかれ光と似た性質が見られるとも言える。
光学素子と類似した現象や性質を持って同じ役割をする素子や技術があり、似た自然現象もある、そこでもレンズを含む言葉が使用される。
光学レンズに関してはより狭い用途に限定した写真レンズを指して使用することもある、そこではカメラあるいはカメラ機能を持つ機器、あるいはその機器の部品を意味する、複数のレンズと他の機械部品と電子回路などでカメラ機器が構成されている。
量子力学とその応用の量子光学の以前では、光学という分野が展開されていて、光は波の性格を持つとして公式や法則がある、光学レンズや写真レンズではその光学が主として扱われる。

光学レンズは光を屈折させて、発散させたり集束させたりするために使用する光学素子であり、通常は透明体の両面を球面にする、あるいは片面は平面で使う場合もある。
用途によれば、片面または両面ともが球面ではないという、非球面レンズも利用されるが、それも光学レンズに含める。
光学レンズは一般的には、実用上の面や製造上の面から、光軸と呼ぶ1つの軸のまわりに回転対称な形状の面で出来ている、その性質を説明する時は紙の上に書いた断面図が使われる。
光学レンズには凸レンズと凹レンズがあり、凸レンズはレンズに入射した平行な光束を収束させる働きを行う、他方の凹レンズはレンズに入射した平行な光束を発散させる働きがある、通常はレンズの中央部分は凸レンズでは厚くなり、凹レンズでは中央部部分は薄くなる。
光軸のまわりに回転対称でないレンズも一部では使用されている、その例としては乱視用の眼鏡がある。

光学レンズは材質は透明材料であり、ガラスや有機ガラスや透明なプラスチック類が使用される。
光学機器のレンズには透明度が高い材料が使用されるが、特に透明度が高いものは光学ガラスと呼ばれる、透明度以外の特殊な性質が必要な時は蛍石や石英などの特殊な材料も使用される。
光学レンズの代表的な用途は顕微鏡や望遠鏡でありそれらは、発明された当時から科学の発展に密接に関わって来た。
民生用途としては、写真用途が大きくそのカメラ用途は歴史は古いが現在でもスマートホン等に搭載されるカメラとして需要は大きい、写真と類似用途に映画等の動画がありその撮影装置の需要も大きい。
写真技術は印刷や各種のフォト技術に繋がっている、その分野ではフォトマスク技術とそれを利用した加工と製造技術がある、それらは半導体素子や集積回路の製造には欠かせなく、現在社会の中心技術の一つとなっている。

日本では、眼鏡や望遠鏡で使われた「鏡」の用語が本来は反射鏡の意味であったがレンズにも使用された。
西洋ではレンズは凸レンズの形状がレンズ豆に似ていたので、名前が付いたとされる。
光は透明な物質に入るときに屈折して、そこから出るときにも屈折するが、回転対称なガラスに於いて、中心軸から離れる場合にはより内側に屈折させるように傾けた形状すなわち中央が厚い形状にすれば、光を集める事が出来る、その形状を凸レンズと呼ぶ。
凸レンズの性質は以下がある。
・光軸に平行な光線は凸レンズを通った後で、その焦点を通る。
・逆に、焦点から出た光線は凸レンズを通った後では光軸に平行な光線になる
・レンズの節点を通る光は角度を変えずに進む

注:節点とは、レンズで光軸に斜めに入射した光がそれと平行な出射光を得る時に、入射光・出射光それぞれの延長が光軸と交わる点。

凸レンズの性質(前回)の内容は、光学での用語と説明も含んでいた。
レンズの形は回転対称体でありその対称軸を「光軸」と呼ぶ、光軸と平行な方向でレンズに入射する広がりのある光を「光束」と呼ぶ、光学では光束が細くて光軸付近の狭い範囲に限られるという「近軸近似」が成り立つ事を仮定する、以下は近軸仮定で進める。
光軸に平行な光線は凸レンズを通過して一点に集まるがこの点を「焦点」と呼ぶ、さらにはレンズに入る前の光線とレンズから出て焦点を通る光線との交点から光軸上に下ろした垂線の足を「主点」と呼ぶ。
主点から焦点までの距離を「焦点距離」と呼ぶ、「焦点」は平行光をレンズの前後どちらの方向から入れるかで二つ存在する、同様に主点も二つ存在する、ただし焦点距離は前後どちらでも等しい。
レンズの厚みが無視できる程度に薄いと仮定する「薄レンズ近似」が成立する時には二つの主点は一致する。
「屈折率」は光の伝播に関する基本物理量であり、「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表す、光の伝播速度は物質により異なる、しかも同一物質でも波長により異なる、故に屈折率もそれぞれで異なる。
「屈折」は、光が異なる物質の境界面を通過するときに、光が進む方向が変化する現象で、この性質からプリズムを通過した白色光が虹に分解される。

物体から光軸に平行にレンズに入った光は、屈折されたあとに反対側の焦点を通る光になる、その時に出来る像を実像と呼ぶ。
実像は、物体を凸レンズの焦点の外側に置いたときにできる像であり、実像はスクリーンに映す事が可能であり、その時は実際の物体と上下左右が逆になる、軸からの物体点の高さと像の高さとの比は一定になるので拡大・縮小された像が映る事になる。
虚像は、物体を凸レンズの焦点の内側に置いたときにできる像であり、スクリーンには映す事は出来ず、実際の物体と同じ向きでかつ大きく見えると言う特徴がある。
物体から出てレンズへ入った光をレンズの反対側から見ると、あたかも物点より遠くの一点から出たかのように進むので、実際には光線がその位置に集まっていなくともそこに物体があるように見える。
実際には物体が存在しなくても、物体が存在する時と同じ状態の光線が目に入ると存在しない物体が見える現象であり、それは実際の物体からの光線と虚像からの光線との区別方法は存在しない事が理由だ。
虚像の例は、ルーペでレンズを見るときの像や、鏡で自分を見る時の像や、バックミラーを通して映す左右や後方の自動車等の像などがある、レンズで虚像が見えるのは目が網膜上に実像を結像させるからだ。


レンズの種類

屈折率により光路を制御するレンズの種類には下記がある。
・回折レンズ
 回折を利用したレンズであり、一部の写真レンズの部品で使われる。
・セルフォックレンズ
 屈折率分布型の端面が平坦なレンズであり、光通信の部品などに使われる。
 アレイ状に並べたセルフォックレンズアレイはプリンタやコピー機の光学系に使われる。
・非球面レンズ
 収差を抑えるために、面が真球面では無いレンズだ。
 写真レンズや光学式メディアのピックアップ用レンズとして、あるいは眼鏡用として使用される。

セルフォックレンズ(GRINレンズ)
 光は一様な媒質内では曲がらずに直進するが、一様でない時は屈折率の大きいほうへ曲がる性質がある、GRINレンズは光線をレンズ媒質内で放物線状に屈折させるレンズであり、ガラスの両側で収束する作用がある。
 レーザーダイオードやLEDからの光を、ガラスファイバーの端面に映して、細長い光学系を作る用途に適し、光通信素子に使われる。

非球面レンズ(Aspheric lens)は、平面と球面以外の曲面を屈折面に含んだレンズだ。
球面のみで構成されたレンズでは収差が発生して、像がぼやけたり湾曲したりするので、これを抑える目的で、色収差を抑える為に相補的な形状のレンズを組み合わすなどの工夫が行われた、しかしレンズ枚数の増加は重量や価格面で問題があり実用上の限界がある。
非球面レンズでは球面レンズより、対象とする収差を小さくできるような、球面よりも理想的な曲面を採用する。
例えば写真レンズでは大口径レンズでの球面収差と、超広角・ズームレンズでの歪曲収差の補正を行っている、非球面レンズは用途に特化した目的に合う性能のレンズを作れるので、写真レンズ以外の利用が多い。
非球面レンズは中心部では球面に近くて、周辺ほど球面から外れるので、効果は周辺部ほど大きい、複数のレンズから構成されたレンズでは光束が広がる部分で効果が大きくなる、例えば写真レンズでは非球面レンズの効果は開放絞りで大きい。

レンズという用語は光学レンズ以外にも使用する、そこでは色々な自然現象とそれを利用した技術がある。
光(主に可視光、およびそれと近い波長の光)は電磁波であり、波の性質と粒子としての双方の性質を持つ、レンズ現象はそこでの波の性質が反映した現象であり、光学(主に古典的光学)では波として扱う。
物理学等の自然科学の量子論では、全ての現象は量子化され同時に波の性質も保有するので、レンズ現象が現れる可能性がある。
たとえば、光学レンズと同様な働きをする技術・現象の例には下記がある、または現象を焦点に集まる技術に対して使用する事もある。
・重力レンズ
・電子線レンズ(電子レンズ)>磁界レンズ・静電レンズ
・X線レンズ
・音響レンズ
・爆縮レンズ・爆薬レンズ
・風レンズ
・誘電体装荷アンテナ

重力レンズは、恒星や銀河などから出た光が、地球に達するまでの途中にある天体の重力により曲げられる現象だ、その結果として光源と重力源との位置関係で、例えば複数の像が見えたり、弓状変形像が見えたりする。
一般相対性理論では、銀河や質量がある天体があると、その影響で時空が歪む、背景の天体からの電磁波が歪んだ時空を通過する時に、電磁波の進路が変わる。
地球の観測者から見ると、電磁波が色々な方向から入ってくるので、重力源の天体がレンズの役割に観測されるので、重力レンズ効果と呼ぶ。
強い重力レンズ効果の場合は、重力源の天体の背後にある遠方の天体(銀河)が重力レンズ効果で弓状に見える。
弱い重力レンズ効果の場合は、はっきりとした重力源が無くとも、天体(銀河)が集団に存在していると、その背後にある天体(銀河)からの電磁波も弱いが重力レンズ効果を受ける、その場は少しだけ変形して見える。
重力レンズ効果は一般相対性理論の正しさの根拠であり、歪んで見える天体(銀河)を統計的に調べて、宇宙のどの方向にどの程度の質量があるかを調べることが行われている。

光学レンズでは光を使用するが、代わりに電子線を使用するのが電子レンズであり、一点からいろいろな方向に出た電子線をふたたび一点に集める機能を有する。
電子線を曲げるレンズ(電子レンズ)として電磁石を使用する磁界レンズがありその用途は電子顕微鏡であり、試料の拡大像や回折図形を得れる。
他の電子レンズとして静電場を使用する静電レンズがあり、その用途としてはブラウン管がある。
電子レンズにも、光学レンズと同様の収差として像のぼけや歪がある、それに加えて磁界レンズには像回転収差が加わる。
磁界レンズでは主に軸対称電磁場を使用するが、それは凹レンズにはならない事が理論的に判っており、その為に光学レンズでの凹凸組合せレンズでの収差打ち消し方法が使えない、そのために電子顕微鏡の分解能は対物レンズの収差のみで決まる。
X線を使用するX線レンズは、X線回折で使用されてX線を集光する。

磁界レンズは、電子の速度はレンズの中で変化しない事が静電レンズや光学レンズとは異なる。
入射電子は磁場の動径成分の作用で光軸を中心とする回転運動を行う、電子が回転すると、磁場の作用で中心方向の力を受けて、その力は軸から離れると大きくなるので凸レンズの作用となる、磁場が2回作用した結果のレンズ作用故に磁場の方向を逆転しても凸レンズのままで、凹レンズにはならない。

音響レンズは 超音波を収束したり発散させる目的で使用する、周辺の媒質と異なる音速で超音波を伝達させて、減衰の無視できる材料の表面をレンズ状にして使用する。
光学レンズと同様に凸レンズと凹レンズがある。
音響レンズの用途には,超音波探傷・超音波診断・超音波顕微鏡などがある。

風レンズは、風車に取り付けて風力効率を上げる部品であり、小型の風力発電用風車に使用する技術だ。
風レンズを装着した風車を「風レンズ風車」「レンズ風車」と呼ぶ。

爆縮レンズは原子爆弾の起爆に用いる技術だ、ウランやプルトニウムの核分裂反応を起こすには、周囲を火薬で囲み爆発させて中心部に圧力を発生させるがそれを爆縮と呼び、衝撃波をレンズの集光のように中央に集中させる爆縮レンズが作られた。

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