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冷凍・冷蔵
冷凍とは、一般的には保存目的・食品の品質保持目的等のために人工的・人為的に冷凍機・冷凍庫等の機器を使用するか、あるいは液体窒素などを使用して凍結させることを指す、加えて自然環境を利用して凍結させる場合もありそれは自然冷凍と呼ばれる。
工学的・工業的には、固体や液体や気体などの物体から熱を奪って、周囲の環境温度よりも低い温度にすることを指す、工業製氷用途や化学工業用目的の用途もある。
そこからは閉じられた容器などの中の温度を周囲の温度より低くすることでの食品の冷蔵用途があり、それを拡大しての閉じられた室や空間をその周囲の温度より低くする冷房などの空気調和用途があり、言葉的には特に食品や原材料を-15℃以下に冷却して凍結・貯蔵することを冷凍ということが多い。
冷凍機とは、冷凍のため低温の物体から高温の物体へ熱を運ぶ装置であり電気冷蔵庫や冷凍庫として普及しているが、電子冷凍も小型機器で実用化され、それ以外の冷凍方法も実用化されている。
食品の冷凍・冷蔵に於いて、原材料を氷点以下の温度に冷却して凍結状態にすることを冷凍と呼び、農業品・水産業品・畜産品の貯蔵等に多く使用する操作だ、そして凍結状態での貯蔵を冷凍貯蔵と呼ぶ。
一方では常温以下ではあっても氷点以上の温度で保ち、凍結させない状態で貯蔵する方法が冷蔵である。
氷点以下の冷凍作業での低温・凍結状態下では、生体は冬眠的な生物活性の低い状態になると共に、他の微生物や化学的な作用が抑制される、そこでは貯蔵材料は新鮮な状態が維持されやすくなる。
ただし全てが冷凍や冷凍貯蔵が向いてはいない、例えば果実や野菜などには、ある温度以下で低温傷害を生じる場合もある、それらは冷凍貯蔵温度に制限がある。
冷凍や冷凍貯蔵に於いても材料で異なる温度領域が使用されることも多い、魚類や肉類などでは零下20-零下40℃の比較的低温領域が使用される、一方農産物では氷点下でも比較的高温の零下数℃の温度域が使用される事が多い。
冷凍では、凍結作業に於いて冷却速度が緩やかであれば、水分が凍って氷になりそれが食品等の材料内部に生じてその氷の結晶が大きく成長する事になる、成長した氷の結晶が食品などの細胞組織を破壊してしまう、凍結作業で破壊された細胞組織は、解凍した場合に風味を失わせて体液を流出させる事になる。
その対策として、氷の結晶が育たない短い時間で冷凍を終える必要がある、具体的には液体窒素等の極低温用材料を使用しての高速冷凍法が開発されて使用されている、それは一気に冷凍品質を向上させた。
それに加えて、冷凍した材料の保管・貯蔵に於いても温度管理が大事だ、例えば貯蔵中に冷凍材料の温度が氷点以上に上昇すると、部分的に融解が起こり細胞の破壊が起こる、たとえ氷点下でも温度上昇の温度変化があると氷の結晶が成長する場合がある、それも細胞破壊に繋がる。
そして冷凍と冷蔵に加えて、冷凍品を融解して常温に戻す解凍技術も品質に大きな影響があり重要となる。
冷凍・冷蔵に関する規格・規定は明確ではない。
農林水産省規格(JAS)では、冷蔵は10℃以下での保存、チルドは5℃以下、冷凍はマイナス15℃以下だ。
日本工業規格(JIS)では、冷蔵に関する規定はなく、チルドは0℃付近、パーシャルはマイナス3℃付近の温度帯と定められ、冷蔵の温度はチルドより上(5℃程度)となる。
注:パーシャルは「半凍結・微凍結状態」まで冷却し保存が可能
チルドは「凍結寸前」の温度に冷却し保存が可能
チルド食品の定義は、JASでは「チルド食品とはチルド温度帯において冷蔵してあるもの」で具体的な温度は規定していない、食品ごとの特性にあう温度帯を業界で自主的に定める目的が理由だ。家庭用冷蔵庫を考慮した広い解釈では「10℃以下で冷蔵保存が必要な食品」ともなる。
物流では配送・保管時の温度指定を表し、一般には冷凍・冷蔵・常温の3種類で呼ばれておりこれらを3温度帯と呼ぶ。実用では配送商品の特性で細かい区分が行われる事になり、冷蔵倉庫は3温度帯の中の冷凍・冷蔵の温度帯を提供する。
冷蔵庫は、食料品等の物品を低温で保管することが目的の製品・設備だが現代では電気エネルギーを冷却手段として使用する電気冷蔵庫を指す事が多い。
かっては氷を使用する冷蔵庫が一般家庭でも使用されていたが、今は希でありそれは保冷庫や冷蔵箱と呼ぶ。
電気冷蔵庫は生鮮食料品等を低温で保管する目的や、保存期間を長くする目的や、食品・飲料を冷やす目的や、少量の氷を作る目的等がある電気設備・施設あるいは電気製品であり、一般家庭への普及率は非常に高い。
電気冷蔵庫は食品冷蔵規格に準拠した使用方法が想定されて、一般には0℃以上で使用され、水を凍らせない目的では4ー10℃程度で使用される。
電気冷蔵庫の中でも、0℃以下の設定温度で凍らせる目的で使用するものを冷凍庫と呼ぶ、0℃以上の冷蔵機能と冷凍機能の両方の機能が一台にした装置を冷凍冷蔵庫と呼ぶ、温度設定や用途の異なる2ドア(2庫)式や3ドア式が家庭用冷蔵庫(冷凍冷蔵庫)の主流となっている。
冷蔵庫は形状の分類で縦型と横型に分かれ、家庭用の電気冷蔵庫の多くは縦型冷蔵庫になっている、業務用では横長冷蔵庫も多数使用されている。
電気冷蔵庫の構造は、外部とを断熱材で熱的に隔離する壁で分けられた内部庫と食品等を出し入れする扉があり庫には照明が設置されている、そして家庭用の多くは冷蔵庫と冷凍庫が1台にまとめられている、内部庫に熱交換器としてヒートポンプ用の冷凍機を付けて庫内の熱を外部に排出する。
電気冷蔵庫では内部庫内を冷却するので、庫内の空気中の水分が冷却部分に凝結して結露する、結露は冷蔵能力を落とすので定期的に露を溶かして庫外へ水として棄てる、この事で庫内の湿度が下がり乾燥する。
業務用冷蔵庫では高湿を維持する装置が使用されるが、家庭用では乾燥を避けたい食品はラップフィルム等を使用する、野菜類を保管する野菜室は湿度の低下を抑える目的で使われる、そこでは冷蔵庫内に分離した庫(野菜室)を設置して、野菜室の周囲の冷蔵室の温度によって庫外から間接的に冷却される構造となっている。
熱交換器は原理的には放熱だけでなく発熱もあるので、電気冷蔵庫の設定温度よりも周囲の室温が低い場合には保温用にも使用出来る、例えば冬季に室温が氷点下になる寒冷地域では、冷蔵目的では無くて、食品を凍らせないと言う目的で使用されることがある。
冷凍・冷却技術
冷却方法としては、気化により物体の温度が下がる現象・冷却の原理を利用した2方法の冷却方式が長く使用されてきている。
一般に液体は蒸発するとき周囲から蒸発熱を奪うので、それによって温度が下がる、これを冷却の原理として効率的に行う方法が考えられた。
冷媒を使用する事で効率を高める事が出来る、効果的に行うための方法としては冷媒を圧縮して液化する蒸気圧縮式がある、もう一つには蒸気噴射式がある。
機械的圧縮を使用する上記方法以外には、熱源を利用して冷媒蒸気の吸収回収と、凝縮分離再生とを行う吸収式がある、熱源に都市ガスを利用する方式が広く使用されている。
活性炭などの多孔性物質が高圧・低温の状態で吸着した多量のガスを脱着する時に熱を吸収するので、それを使い低温を得る冷凍方式もある。
近年では気化ではなく、半導体のペルティエ効果を利用する方式も小型用途で実用されている。
磁場を利用する磁気冷凍もある。
冷蔵庫は、冷媒物質を使い冷蔵庫内の熱を奪って外に放出するのが基本で、冷媒の状態と温度変化を管理して冷却し続ける、その仕組みを冷凍サイクルと呼ぶ。
冷凍サイクルは「膨張」「蒸発」「圧縮」「凝縮」の四状態を繰り返している、「膨張」部で冷媒の温度や気圧を下げて、「蒸発」部で周囲の熱を奪い蒸発させる、この工程が冷却を実際に行う部分だ。
気化している冷媒に圧を加えて「圧縮」部で圧縮して、それを「凝縮」部で凝縮させて元の液体に液化させる、そして再び最初の「膨張」部の工程に戻ることを繰り返す。
このサイクルでは圧縮を利用して閉じたパイプの中を冷媒が循環する、それ故に圧縮型と呼ばれる、家庭用冷蔵庫では圧縮を行うために電気作動のコンプレッサを使用する事が多く、それが一般の電気冷蔵庫となる。
冷蔵庫にはヒートポンプという技術が利用されていて、冷蔵庫内のパイプの中で冷媒を循環させながら冷凍サイクルを行うのが気化圧縮型のヒートポンプになる、パイプの太さを変えることで冷媒の温度がさらに下がって、低温の冷媒が冷蔵庫内のパイプを循環することで冷蔵庫を冷やす仕組みになっている。
気化圧縮型冷蔵庫の、冷媒物質に対する冷凍サイクルの「膨張」「蒸発」「圧縮」「凝縮」に対応する装置と機能は下記になる。
・エクスパンジョンバルブ(膨張弁):細い管が急に太い管となると減圧して沸点が下がり液体になる。
・エバポレータ(蒸発器・気化器):沸点が下がった液体は、周囲から蒸発熱を奪って蒸発・気化する事で、冷却が起きる。
・コンプレッサ(圧縮器):気体の冷媒は圧縮されて高圧気体になる。
・コンデンサ(放熱器・凝縮器):冷媒は高圧気体状態で熱を蓄えているが、放熱する事で液体になる。
冷媒としては初期にはフロンが使用されたがオゾン層破壊の環境破壊問題で禁止された、以降はイソブタン等に移行した、アンモニアは効率が良い冷媒だが漏洩時に危険がある事から冷凍倉庫に利用てはいるが家庭用には使われていない。
気化圧縮型以外の方式に、気化吸収型冷蔵庫があり、閉じたパイプの中を冷媒が循環する事では同じだが、冷媒の循環のために冷媒以外の異なる液体を使用する、その液体が冷媒を吸収(吸着)して循環して、それで冷媒を移動させる、その液体を吸収液と呼ぶので、方式が吸収型と呼ばれる。
液体を循環させる為に熱するが、その熱源としてガスバーナーを用いるのがガス冷蔵庫であり、電気ヒーターを用いるのが電気冷蔵庫だ、実用吸収型冷蔵庫ではガス/電気交流100V切替方式(2ウェイ型)や、ガス/電気交流100V/直流12V切替方式(3ウェイ型)もある、従って吸収型冷蔵庫=ガス冷蔵庫に限られない。
冷媒と液体の組み合わせとしては、「アンモニア(冷媒)と水(吸収液)」や、「水(冷媒)と臭化リチウム(吸収液)」が例にある。
吸収型冷蔵庫ではコンプレッサーを必要とする圧縮型に比べて、静かさが特徴であり、動力源が電気以外でも良いので用途的には拡がる。
物質の性質で、熱と電流の関係する法則には主に3つある。
・ゼーベック効果:異なる金属等を接合して温度差を加えると電圧が発生する(熱電対の原理)。
・トムソン効果:一様な金属等に温度勾配を加えて電流を流すと、抵抗によるジュール熱以外に温度変化が生じる。
・ペルチェ効果:異なる金属を接合し電圧をかけて電流を流すと、接合部で熱の変化が生じる、電流の向きで吸収か放出が起きる。
ペルチェ効果型冷却装置は冷媒と圧縮機(コンプレッサ)を使用しない冷却装置として使用出来る、作動音が殆どないのは吸収型と同様の特徴だ。
ペルチェ効果型は圧縮型や吸収型に比べると装置的には非常に安価に出来るが、反面としては冷却効率は低い(エネルギー効率は数%)、それ故に用途的には超小型冷蔵庫に使われる、またはパソコンのCPU素子等の冷却やアウトドア用の保冷庫や自動車用冷蔵庫等に使われる。
その他にも幾つかの冷凍・冷却方法がある。
スターリング冷凍機
スターリングエンジンは温度差を利用して駆動するエンジンであり、それを利用して、外部の動力で回転させる事で温度差を作る仕組みをスターリング冷凍機と呼ぶ、原理的には温度差があれば動き、素子や磁石の冷却に使用される。
ケミカルヒートポンプ
低温部分から熱を奪い、高温部分へと熱を移動させる仕組みをヒートポンプと呼ぶ。
その中でも化学反応を利用したものをケミカルヒートポンプと呼ぶ、吸熱反応と発熱反応を可逆的に行う化学反応を組み合わせて、低温の熱を高温の熱に周期的に転換する、高温の工場熱源を得るための省エネルギー技術として注目されている。
水素吸蔵合金
金属と合金が水素と金属水素化物を作る(水素吸蔵合金)時の発熱反応と、逆の金属水素化物を加熱して金属と水素に分解する時の吸熱反応とを組み合わせて金属水素サイクルを作り、それをヒートポンプに利用して冷暖房を行う装置・方法だ。