項目別バックナンバー[5]:技術情報:23

光通信

光通信を技術面から取り上げます。
光とは、可視光だけでなく電磁波全般を指します。
従って透明材料の必然性はありません。実際に、マイクロ波通信や赤外線通信 も行われています。
電磁波では、波長が短い程情報量が多く含められるという性質があります。
情報は、位相や周波数に載せることが多いので、波長が短い程に有利なのです。
波長の逆数が周波数になります。
実際の取り扱いや材料から考慮すると、可視光が現実的な選択になる様です。
透明光ファイバーが中心になっているのは、それまでの技術の集積と情報量の ふたつの面から生まれたものと考えられます。

電磁波=光には、無線と有線の双方の利用方法があります。
無線では、マイクロ波通信や赤外線通信などが利用されています。勿論、テレ ビ・ラジオを含む多くの無線通信も基本は電磁波通信です。
電磁波(光)は、波長が短い(周波数が高い)ほどに直線性が高くなる性質が あります。2点間の通信は高い周波数を利用し、広域の回り込みを期待する 通信はやや低い周波数を利用します。
周波数と情報量は傾向としては、正の相関関係がありますのでテレビ波はラジ オよりも高い周波数を利用します。
実用的な範囲で、周波数を高くすると赤外線・可視光にたどりつきます。
それより高い周波数は、まだ技術的な進歩が必要です。
赤外線通信は、2点間の直線通信に使用されています。
可視光線も同様になる筈ですが、現実的でないので、光ファイバーという有線 の中を走り通信する事に使用されています。

有線光通信には、レーザーと光ファイバーという大きな製品の登場が必要でした。
有線の指向性を生かし、信号の減衰を少なくする信号路の確保が出来て初めて 有線光通信は可能になります。
信号の減衰の面からは、信号光の波長が揃っている事と必要な強度が得られる 必要があります。その双方を満たすのがレーザーです。
光ファイバーというある意味、夢のような材料の製造技術が確立したのは、需 要予測の大きさが重要です。需要がないまたは、将来的に見込めない所に長 い時間と労力と資金を掛けた研究・開発は生じません。
上記の2製品は、量子論から生まれ、材料の純度という電子材料の基本技術と 共に育った、まさに現在の時代でしか生まれなかったものです。

光ファイバーの中を走る光の減衰率は、非常に少ないです。
これは、光ファイバーの材質の純度の高さが光の吸収を殆ど無くしています。 また、同心円上に光の屈折率を変えてなめらかに光をファイバー内に閉じ込 める仕組みは、光の反射でのロスやファイバーから光が漏れるロスを最小限にします。
同時に、外部からの雑音光の侵入も防ぎます。光ファイバーを長く製造する技 術とロスなく接続する技術は実用上重要です。
また、通常は光半導体と呼ばれる、受光素子・発光素子・光増幅素子・光受発 光素子の進歩も光通信の発達に寄与しています。

光ファイバーは石英系のガラスです。
ガラスというと壊れやすいイメージがありますが、それは形状や構造によるも のが大きいです。
結晶性の高い線状の光ファイバーは、それほど弱くなくしかも多数本を束ねて 使用します。束を保護する物があれば、一層強度が上がります。
同時に軽量性も特徴です。金属とガラスの単位密度・重量を考えれば当然です がこれは非常に有利です。
そして、絶縁性があります。金属線は絶縁皮膜が必要でしたが、光ファイバー とレーザー光の組み合わせは絶縁材は不要です。

光通信の課題はなにでしょうか。
たぶん、通信のみが進歩してその他は電子回路の金属・半導体がメインである事でしょう。
そこには必ず、インターフェイスが必要でそれがネックになりやすいです。
光回路の研究も行われていますが、まだまだ時間がかかると思います。
光通信を語る時に、速度はかかせませんが、逆に実用上はシステム内のボトル ネックで速度がきまります。通常はそれは、光伝送部ではありません。
それをもって、能力が一部しかでないと言う人がいますが、それも光通信の持 つ問題点との認識が必要です。
実用利用者は、潜在能力を求めている訳ではありませんから。


モーター

動力源としてのモーターの進歩は激しいです。
その技術と、電子部品の進歩は大きな関係があります。
モーターというと回転モーターを連想しがちですが直線状運動のリニアモータ ーも存在します。直線状運動という表現は間違いやすいですので、非連続回 転運動というべきでしょう。
動力源は色々ありますが、電気駆動の多数の機能別に開発されているモーター は精密電子機器を中心に、電子・情報産業や機器とは密接な関係があります。

モーターは今では、動力用と制御用とにおおきく分けられています。
大きなものを動かす事と、小さな物を精密に動かす事は両立は困難です。
それぞれの用途を分ける事で、実用に達します。
動力用は、電力を如何に有効に動力に変えるかが課題です。その規模は幅広い範囲を含みます。
電子産業では、動力用といっても小型に属しますが動力としての安定性の要求 は非常に大きいです。
ハードディスクのスピンドルモータを代表として、高速で無塵で回転速度が安 定で寿命が長い(ノーメンテナンス)など、現実には精密なモータなのです。

回転モーターの基本は3極モーターです。
回転と同期した極性の変化を3極で連続で伝える事で、回転方向が決まります し回転速度が決まります。
この基本の改良・センサーによるモニター・フィードバック制御などの組み合 わせで機能と精度の向上が図られています。
回転位置のモニターには、ホール素子が使用される事が多いです。
磁気を電気信号に変えるこの素子は、回転子の一部に磁性があればその部分の 通過を電気信号で伝える事が出来ます。
位置のモニターは、他の方法でも可能で目的と精度とコストとスペースで決められます。
モーターの回転をモニターしない場合は、回転子に載った信号を持つ部分とそ れを検知するものとの間で代用となります。これは記録媒体が回転して、信 号の読み書きが行われる状況を想定しています。

電子産業においては、パルスモーター・ステップモーターの進歩の影響が大きいです。
これらは、デジタル制御に対応し、かかせない機能だからです。デジタル化さ れたパルスの数に応じて動作量が変わるこれらのモーターは電気信号のデジ タル制御を力学的動作にかえるためには欠かせません。
アナログからデジタルへの移行が、電子産業の流れならば、パルスモーターは それを具体的に外的動作に伝えます。
デジタル制御の進歩と共に、多様な機能要求があり多くの種類のモーターが登 場しましたが、基本の考えは同じと言えるでしょう。
モーターの回転力・動作を他の色々な動きに変換する機能は同時に進歩する必要がありました。

媒体と動作からは、回転式モーターが圧倒的な多数ですが、この方式の媒体を 記憶メディアとすると、角運動になります。
角運動では、半径方向の位置と回転角度の2つで位置が決まります。
回転式モーターによって、回転角度が決まりますから、もうひとつ半径方向の 位置を決めるものが必要です。
それが、リニアモーターやアクチュエーターと呼ばれるものです。
考え方は、直線運動で位置を制御するものです。ただし直線には拘る必要は有りません。
往復運動と考えて、その軌道が一定しておれば電気信号で位置を制御出来ます。
最近は減少したFDD(フロッピーディスク)は直線運動のリニアモーターでした。
最近の主流は、ロータリーアクチュエーターです。一周しない往復回転運動を 繰り返す事で決まった軌跡を作り位置決めします。


電池

昨年の小型電池の発熱不良や、現在の不況による多くの商品の製造縮小にも限 らずモバイル機器用の小型電池への参入や、生産能力増加の投資が行われています。
リチウム電池を主体とするこの分野は、上記不良問題でも分かるように・・・
・技術的に高度である
・日本メーカーが多くのシェアを持っている
分野です。
半導体やフラットパネル等の電子機器が、既に国際間の価格競争・シェア争い に突入している状況と、モバイル機器の成長が期待できるなかで必須の小型 電池の分野にシフトする事は充分に考える事です。
ただ、どんな分野も参入が多いと一気に成熟し、シェア争いから価格競争にな る事は予測されます。
最後には、企業間の事業統合や譲渡になる事も予想できますが、技術競争に参 入しないと企業全体が衰退するという事情もあるのでしょう。

電池には、使い捨ての1次電池と再充電可能な2次電池があります。
モバイル機器の小型化によって、電池も小型化の要求が広がっていますが同時 に小型になっても発生電圧等の確保は必要です。
電圧を上げるには電池を直列に並べれば可能ですが、小型で薄型では単独で実 現する必要があります。
元素番号が3のリチウムは、最大のイオン化傾向(低い電位)ですのでこの材 料を負極に使うと大きな電圧を得ることができます。
リチウム電池が普及している理由です。同時に元素番号が低く分子が小さいの で電気容量が大きく寿命も長い性質があります。
陽極は色々な材料が使用されていますが、二酸化マンガンが普及度が高いです。
この場合、通常のマンガン電池より2倍の電圧が得られます。
名称は規格が決められています。例えば「CR2032」(よく見かけます)は「C」 が「二酸化マンガン陽極」・「R」ボタン型・数値は「直径(mm)X厚さ(0.1mm) 」です。

使い捨ての1次電池は、陽極にリチウム金属を使用します。
一方の再充電可能な2次電池では、陽極に酸化リチウム化合物を使用します。 初期の開発では、1次電池とおなじ材料も検討されましたが、充電・放電に 対して安定ではなく材料の移行が行われています。
既に実用になっていますが、性能・安定性・その他まだまだ発展中であり材料 もまだまだ研究中です。
電池の基本構成である、負極材料・陽極材料・電解質・スペーサーに限っても 多くの組み合わせがあり、それに実用製品とする為にはより多くの材料や加工技術が必要です。
リチウム電池(2次電池はリチウムイオン電池)の歴史は浅いのは実用範囲と 不安定範囲が接近しておりその制御が難しいからです。

リチウムイオン電池は最近特にバッテリー用途で需要が増えています。
しかし、それを安全に使用する技術の難しさは前回でも述べましたし、市販品  の発熱事故も生じています。
対策と、製品設計・製造技術の開発は非常な速さで行われていると思います。
そして、この用途に参入するメーカーが増えています。
1次電池(使い捨て)のリチウム電池は、電池単体で販売されています。
一方、2次電池(充電可能)のリチウムイオン電池は、一般には電池単体では なく、電池パックの形態で販売されています。これは保護回路を設置して安 全に使用する為に必要だからです。
リチウムイオン電池の発火原因は報告されています。電池の正極と負極とが電 解質を通して繋がっていますが、その直接の接触を避けるために間にセパレ ータを入れます。これはイオンのみ通過させますが、電池内部に不純物の金 属が混入する事が原因とされています。金属がセパレータを突き抜けて電極 と反応して発熱等の反応を起こすとされています。

リチウムイオン電池は電解質に液体を使用します。比較上ですが、これは形状 と重量に制限があります。
リチウムポリマー電池は、セパレータに半液状の物質を塗る事で薄い電池・よ り軽い電池を作る事を実現しています。
セパレーターと電解質が一体化する事は、フィルム状構造になりますので全体 が層状の薄い構造が可能になります。
勿論材料の開発や製造技術の開発は必要ですが、体積当たりの蓄積エネルギー 量(2次電池=蓄電池)が大きくなり、軽量・長時間使用等も考え方として 改良できます。現在では、モバイル機器の用途を中心に採用が進められています。

リチウム電池は、発展途中で機能・安全性・コスト等の改善がされてゆくでしょう。
実用面ではしばらくは主流でいると思われます。
ただ、異なる方式も開発・改善されていますので、長い目で見るときの予測は 難しいのが電子産業です。
具体的には太陽電池・燃料電池等があります。
最近注目されているのが、燃料電池です。既に試作品の発表はありますが、量 産までには時間がかかるという見通しが多いです。
当面、機能とサイズはリチウム電池と同等を目標としているようです。
リチウム電池はまだ長い期間の、使用実績とデータの集積が不足しています。
これらが徐々に積み重ねられてきました、そこへの新製品の参入は、リチウム 電池を超えるメリットの提案が必要になるでしょう。

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