項目別バックナンバー[5]:技術情報:13

S/N比

信号(S:シグナル)と雑音(N:ノイズ)の比率は、デジタル時代では基本事 項になっています。
デジタル信号は、劣化しないと言われています。しかし現実には、誤動作ある いは信号の変化は生じます。
例えば、0-5V(ボルト)電気信号の場合は、0-0.5Vが1状態で、2.5-5Vが もう1状態です。中間は不定です。
劣化しないと言うのは、この範囲で変化しても問題はない事を意味し、かつ再 充電等でこの状態を改善維持できる事をさします。従って、規定範囲を外れ れば信号は変わります。状況にもよりますが、実際に起こっています。
ノイズはどのような場合にも発生します。原因は状況により異なりますが、避 ける事は不可能とされています。従って、実用上で問題が生じないレベルに 抑えられるかどうかです。

デジタル信号は、「増幅」が簡単に可能です。正確にいえば、信号・ノイズ共 に同時に増幅されてしまいます。
ノイズフィルタがあると言っても、信号よりはっきり区別出来る程にノイズが 小さい事が条件となります。ノイズが大きくて、信号と区別できなければ分 離して除く事はできません。
これは、増幅して双方を大きくしても変わる事はありません。従って、信号( S)とノイズ(N)との大きさの比が重要になります。比率は増幅しても変わりません。
逆に信号はいくら小さくても、ノイズが非常に小さいと増幅が有用になります。
デジタル化が進む現代では、ノイズ対策が非常に重要になります。所が、その 発生原因を探すことは経験的なノウハウが重要になったままの状態です。 ただ、解析装置等は発達して調査という面では進歩しています。

アナログからデジタルへ移行している傾向があります。しかし、この過程でア ナログ>デジタル変換を行うケースが多いです。
現実のアナログ信号も、厳密にはデジタル単位は存在しますが(例えば写真の 銀塩分子)一応は連続と考えます。これをとびとびのデータ=デジタルに変換します。
ここに登場するのが、有名な「サンプリング定理」です。簡単に言えば人間の の聴覚や視覚で分からないようにアナログ信号を間引く方法です。
(1)通常の人間では感じない、高い周波数と低い周波数をカットします。 あくまでも、通常の人間ですので特別に広い周波数に感じる能力のある人に は差が分かるとも言われています。
(2)残った信号を連続と感じる間隔で、デジタル的に切り出す。この連続 と感じる方法がサンプリング定理です。
上記でも分かるように、必要最小限のデジタル信号にしますので、1信号の脱 落でもその影響は大きいと言わざるを得ません。それ故に、雑音の発生は致 命的になります。

信号の送信方式に「変調」があります。信号を直接に送らずに別の大きな信号 と組み合わせて送ります。無線などで電磁波を空中にとばすにはあるていど 以上のエネルギーが必要なために、充分なエネルギーを持った電磁波に信号 を載せて運んでもらいます。
変調の方式にも色々ありますが、角度変調としては、位相変調や周波数変調が よく知られています。 その他には、パルス変調・ずばりのデジタル変調等があります。
無線以外でも、信号を送りやすくする目的で、生の信号を送るよりも変調して 扱いやすい状態で使用する事があります。信号を精度よく、効率よく、雑音 の影響を受け難くその時々の最適の方法に変換して送ります。
パソコンで扱う信号は弱いので、転送する場合は、変調するのが一般的です。


触媒

触媒という言葉を専門外でも目にするようになりました。本来は化学用語で、 ある状態から化学反応を起こし別の状態になる時に、それに関わる物質を指します。
そして、その関わり方はある特定の化学反応を促進する働きでしかも自分自身 は化学反応の前後で変化しないものをいいます。
広く使われるようになると、必ずしも意味が異なる時もありますが、化学用語 として使われる時は上記です。 そして、イメージとしては化学反応で変化する物質と比べて非常に少ない量です。 また、あくまでも化学的な意味ですので例えば液体状から固体状への変化の 化学反応の場合などは、実際は自分自身は変化しなくても固体化した物質の 中に埋もれてしまいますので消耗品となってしまいます。

触媒は、本来起こりえる化学反応を促進する。別の言い方ならば、化学反応速 度を増加させる働きをします。ただいつかは起こる化学反応であっても、そ れに必要な時間は現実的に起こっている事が確認しにくいレベルをの含みます。
触媒は反応を起こりやすく・時間を早くする物質ですので、元々が自発的に起 こらない化学反応は、触媒を使用しても起こる事はありません。
エネルギー保存の法則は知られています。触媒は化学反応の前後で、変化しな いのですから、エネルギーを放出はしません。従って、外部からエネルギー をもらわなければ起きない化学反応は、触媒を使用しても起こらないのです。

触媒はトータルでエネルギーを生み出しませんが、反応物質と反応中間体を作 る段階で、反応に必要な活性化エネルギーの低い別の反応経路を作ります。 簡単なたとえでいえば、同じ高さ(エネルギー)の所に移動するのに間に山 があれば、それを登る必要があります。 頂上まで達するとあとは下りになります。実際の登山ではエネルギーは消費 しますが、化学反応のエネルギー計算では反応の前後でエネルギーは変化し ていません。ただし、山を越えるために必要なエネルギーを一度(後で回収 しますが)必要とします。これに関与して、反応を早くするのが触媒です。
働きとしては同じですが、それ自体は変化しないが反応を遅くする物質も同様 に存在します。これを負触媒(逆触媒)といいます。 通常の反応が早すぎて、制御が難しい場合は逆触媒を使用して反応速度を遅 くして人間にとって都合のよい速さにする事もしばしばあります。

最初は化学反応の促進についてのべました。前回は負触媒について述べました。
これらを合わせると、必然的に次に登場するのは「選択的反応触媒」です。 むしろ考え方としてはこれが基本でしょう。複数の起こりうる化学反応の中 で、望む反応のみを選択的に起こす事は極めて一般的です。
触媒と単純に述べられる時は、これを指すと考えている方が無難とも言えます。
近年注目されている触媒の一つが「光学的活性」です。やや意味が異なります が「光触媒」という名の商品もあります。光は外部からエネルギーを与える 方法としては、自然光(太陽光)もあればレーザー光もあり色々と使い易い です。これに目をつけるのは、必然と言えます。


CTスキャン

CTスキャンは、コンピュータ断層撮影(Computerized Tomography)が正式? 名で初めて頭蓋骨を切開せずに脳の内部の形を見ることができるようになり ました。CTスキャンを使用すると体の組織の放射線吸収の違いをコンピュ ータで分析することにより、脳構造を断面として映しだすことができます。
数学的には、高速フーリエ解析法で2次元X線写真を3次元方向にスキャンした 内容から立体構造の断層写真として再構成したものです。
出発は、X線・医学(脳構造)ですが、断層写真を撮る方法は色々あり、スキャ ンする対象や用途は限定されません。
非破壊で簡単に、3次元の内容を知る事ができる事から急速に拡がりました。

原理的に、断層撮影できる物であればX線に限定されません。既に、色々な方 法が実用化されています。名称も方法ごとにつけられています。走査線の発 生・透過光反射光の受光・コンピュータ処理・被写体のスキャン装置が必要 ですので、ある程度の大きさが必要になる事は避けられません。
また、取り扱い上の責任者や技術者が必要な場合もあります。いわゆる放射線 関連や医療関連やコンピュータ関連や総合的な装置メンテナンス関連です。
また、使用する装置ごとに被写体に制約があります。元々が人間の医療用に開 発されていても、磁場・X線等にさらされるので、時計・携帯電話・補聴器・ 心臓ペースメーカー等を知らないでスキャンさせない注意は必要です。

CTスキャンの通常のイメージは、医療用です。しかし、用途としては一般の 工業用もあります。
断層撮影の対象が、人間でないだけ安全性にシビアではなくなりますが、色々 な放射線を扱いますし、保全・安全の確保の面から取り扱いの専門性と設備 の高価化は避けにくくなります。
実際の所は、詳しい人が個々の部品を購入して作れば医療用とは桁違いに安価 に作る事は可能です。もっとも、これを安全性を確保して販売するとやはり 高価になりがちです。
用途は非破壊での、内部観察です。 非透明物の内部に、気泡や空洞がないかどうか、異物の混入がないかどうか 等は製品にもよりますが、かなり用途はあります。
たとえば、耐圧碍子ならば気泡や異物含有は耐電圧上で致命的です。この為に 出荷試験という名の破壊検査(実際には破壊しませんが、製品にダメージを 与える事は事実です)を行います。内部の気泡等の存在と耐電圧とに相関デ ータがあれば、CTスキャンを行うことで製品にダメージを与える事なしに 出荷検査が可能です。もし詳しい人ならば、樹脂碍子の硬化前にCTスキャ ンをかけて樹脂の充填に問題がないかを調べる事も検討するでしょう。

CTスキャンに使用するのは、X線です。
断層撮影としては、これ以外にも色々の技術が開発されています。
磁気を使用するのは、原理的にもことなる部分がありますが類似技術として扱 われます。(MRI、NMR-CT)
陽電子断層撮影は非常に設備が大きくなりがちですが、特にガンの検査に有用 とされています。(PET)
光断層撮影は、フォトカプラで二つに分けた光の片方を被検査体にあて、再度 二つを干渉させます。主に眼の検査用です。(OCT)
乳房撮影(マンモグラフィ)は、X線ですが乳ガン検査用の別の装置です。
技術開発は続いており、検査線種・対象・時間・精度など全てが対象ですので ますます進むでしょう。

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