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自然選択

ダーウィンから始まった「自然選択説」はある程度確立されて、受け入れられるのは1930年代だった。
自然選択の原則は
1:遺伝性の遺伝子変異が存在する
  これは遺伝子にノイズがあると事で、メンデルの交配実験はこれを示していた。ダーウィンはこれを間違っていた。
2:親は生き残れる数以上に子を作る
  哺乳類の中の高等動物ほどに子は少なく、進化のツリーで下等な動物程に子を多く作る。これはダーウィンが参考にしたとされるマルサスの人口論では人間社会で書かれている=「西洋諸国の中産階級は子が少ない」。
3:繁殖出来る子孫は環境に最も適した者だ
  これはその時々の自然現象だ。だが、最初は長期の現象と誤解され適者適応という人種差別的な考え方に利用されて、「自然選択説」自体が誤解された。

自然選択の原則「1:遺伝性の遺伝子変異が存在する」は、現在の遺伝のメカニズムが判っている状態では基本的な考えだ。
だがダーウィンは遺伝元の親の形質が混ぜ合わさる混合説を考えた、この説では混ぜ合わされて親の形質を受け継ぐ訳だから進化するメカニズムにならない事になる、その状況では進化論は普及しなかった。
メンデルは交配実験から法則性を見つけた
 1:優劣の法則>対立する遺伝子には現れ安さに差がある
 2:分離の法則>遺伝子は混ざらず、隠された遺伝子が別の世代で現れる事がある。
 3:独立の法則>対立遺伝子組は、他の対立遺伝子組と独立して受け継がれる
 これらは遺伝のメカニズムや染色体の働きの解明で説明つけられた。
遺伝と遺伝子は複雑なので、メンデルの法則から外れる事は幾つか見つかっている。

自然選択の原則「3:繁殖出来る子孫は環境に最も適した者だ」は、あくまでもその時その場での現象だと考える必要がある、人は頭の中で未来・将来を考える傾向があるが自然選択では未来の展望を持たない。
その時に最も適した選択をする、それが現実の未来に適さない事もあれば進化を止める可能性はあるが、未来を予測出来ない状態で選択を行っている。
自然選択は多数・少なくとも複数の傾向が競合するなかでの結果なのでそれ故に予測不能だ、また単独で結果を予測してもなかなかそこに至らない事もある。
自然選択は自然界の捕食者と被食者の対抗の性格がある、片方が進化すると他方は対抗側に合わせて進化しようとする、その関係は終わる事がなく双方が進み続ける事になる、未来予想での調整はない。
その場しのぎの自然選択は場所も反映する、離れた場所で似た進化が起きる収斂進化が言われ、異なる進化による種間闘争も変化の力とされる。

自然選択は未来を考えないが、問題になるのは選択対象は何かだ、自然は種を意識しなく個体は個々の利益を求める、ただし自己の為の行動が利他行為に見える事もある。
血縁選択は、個が自分の遺伝子の繁殖を目指す時にライバルに見える遺伝子の生殖を助ける様に見える事で、種のメンバーが共通の遺伝子を持つ事で起きる、ただし行動と遺伝子の関係は複雑であり明確でないと言える。
個は進化の展望を持たない(未来を考えない)ので行動は集団に影響を与えない、それ故に集団を意識する「群選択」は否定されている。
遺伝子を不滅の自然選択単位と考える事は生物学的に指示されている、そこでは遺伝子変異はあるが、自然選択を受けても変わらない単位と考える事が出来るからだ。
ただしそれより小さい単位の染色体やその断片を主張する意見もある。

種の保存手段として生殖手段があるがその手段の進化も自然選択で説明つけられる必要がある、特に有性生殖の進化の見方だ。
両性を必要としない単為生殖・処女生殖は植物では多い、ハ虫類でも無性生殖(単為生殖とほぼ同じに使う)を行う種は多い。
有性生殖では両性を必要とするがその比率は安定しないなぜならば産む子の数と死滅しないで育つ子の合計比率が両性で同じには通常はならない。
有性生殖はそのメカニズムは減数分裂だ、親の半数ずつの染色体を受け継ぎ受精すると同じ数に戻る、この複雑さが残ったからには優位さがあった筈だ。
無性生殖では同じ個体が継続的に世代を続けて行く、これが有性生殖となると両親の半数のみを受け継ぐ、有利な形質を受け継ぎやすい事と有害な変異を受け継ぎにくい事を自然選択から期待出来るとすれば有性生殖は有利だ、両親共に異常があったとしても正常(健常)な子が産まれる事も期待できる。
有性生殖の利点は複数ありそうだ、だがどのような過程でそこに辿り付いたかは判っていない。

自然選択は霊長類と人(ホモ・サピエンス)への進化を説明するのに適している、それはこの問題を調べる理由とも言えるが、宗教を持ちその内容を学んだ人は自然選択との違いに悩んできたとされる、現在でも人が関わる進化論を否定する人はいる筈だ。
自然選択の結果は人は特別ではなくサルの子孫でありホモ・サピエンスが登場したと示している。
1:陸上生活へ移行(陸生化)、2:直立して手を使う二足歩行、3:体と比較して脳の比率が高い(脳発達)、4:文化が生まれた、らの霊長類と人の特徴は自然選択で説明される、順序は複数説あるとされる。
世界で見つかる原生人類の骨や歯等の化石や住居跡は、まだまだ繋がっていない部分のあるが、霊長類全体の研究と共に人へと進化する過程を表している。


遺伝子

現在では遺伝の本質を遺伝子と考えてそのメカニズムを理解している、それには長い歴史と時間を要した。
20世紀は量子論の時代だが、遺伝子は遺伝を量子化して理解する考え方だと現在は考えられている、それ故に19世紀には長く理解されなかった。
19世紀は全体を混合する「遺伝の融合説」でありそれでは新しい適応項目が生まれても薄まる為に自然選択が成立しない、遺伝の情報が離散的な量子論的な考え方では離散した単位で受け継がれるので薄められない。
それはメンデルの交配実験の本質であり、そこで形質と呼ばれた内容は後に遺伝子と呼ばれた。

遺伝子の考えが生まれるまでに、「生物種の進化の歴史をしめす「系統発生」と、個々の生物が生体になるまでの過程の「個体発生」があり、「個体発生」は「系統発生」を繰り返す」考えが生まれた、そこから細胞核に遺伝に関する情報がある考えが生まれた。
細胞核で発見した遺伝に係わると思われたものが色素で染まった事から「染色体」と名付けられた、下等と考える生物の染色体はやや少ない事が多く、人間はそれより多いと考えたい研究者は多くいた、その為に人の染色体・23対をチンパンジーと同じ24対と考えた時期があった。
遺伝情報が含まれる化学物質については、最初は「遺伝情報は複雑な物質に含まれる」と考えられた為にタンパク質の説が強かった、その考えは細菌を使った解析で否定されるまで続いた。
細胞核に含まれる核酸は最初は構造が単純すぎると考えられたが、後に遺伝情報を持つ化学物質だと判った。

核酸の一種のデオキシリボ核酸(DNA)が遺伝情報を持つ化学物質と判り次に構造が調べられた。
組成分離から2種類の塩基ペアの2組の関係から、DNAが種により異なる多数の種類がある事が判り、その後でX線解析がその専門家で行われた、複数の研究者やグループが競った様子は歴史書的・ドラマ的に語られている。
ワトソンとクリックのDNA構造仮説は、X線解析者が知らない内にそのデータが使用された事によると言われている。
DNAの構造は右巻き二重螺旋構造として知られている、アデニンとチミンと、グアニンとシトシンとはペアになり、水素結合という化学結合で2本の鎖が繋がっている、この弱い結合方法が鎖が分離して半分になる減数分裂を容易に起こし、別の半分の鎖と結合する方法に繋がっている。

ワトソンとクリックのDNA構造仮説後でも1970年代に正確な構造が判るまで長い時間が掛かった、だが仮説が遺伝子複製の仕組みを説明出来るために早くから信じられたと言える。
DNAは非常に長いのでそれが小さい細胞に入っている構造と理由が長く判らなかった、それは後に螺旋構造がまた螺旋に巻かれ、それがまたと何重にも巻かれている構造だと判った。
4種類塩基の2個のペアが複製の基本と判ったがそれが遺伝子暗号となる仕組みは直ぐには判らず実験が行われた、それとは別に理論が登場した。
4種類塩基だから3基1単位で暗号とすると64種類になり適当と考えたがそれは後に正しいと判った、だがそれのアミノ酸との対応は不明だった、間違いの理論が複数に提案された、3基が同じ種類では無効と考えると数が一致したが実は有効であり間違いだった、1対1の対応と考えたが複数の3塩基対が1アミノ酸に対応していたと判り間違いだった。
人間はきっちりした組み合わせが好きでそれを理論で考えるが、自然では冗長性が有った、後には遺伝子では実際の自然界の仕組みの方が事故で情報が失われた時に修正し易いのだと説明されたが、後で合わせた考え方だ。

細胞レベルの遺伝子暗号の解読機構が調べられて、細胞内の大きなDNAの情報を利用して細胞の外でタンパク質合成を行う機構に「リボ核酸(RNA)」が働いていると判った。
RNAはDNAよりも原子的な核酸とされていて構造は似ていて一部の塩基が異なるそして一本鎖が特徴だ、遺伝情報暗号は最初はRNAに有ったが後に安定したDNAに移った(進化した・引き継がれた)とされる、RNAは酵素として働くと判った。
RNAにはメッセンジャーRNA(mRNA)と転移RNA(tRNA)がある。
mRNAはDNAと同じ様に一本の鎖から合成される、DNAの情報を写したmRNAは核内から細胞質に出て行く。
細胞質にはtRNAがあり実際にタンパク質を作る、ここでDNA>RNA>タンパク質の順で情報が伝わって行く事が判る、従って生物が獲得した形質のタンパク質はDNAに伝わらない=遺伝しない事が判る。

DNAの分子レベルでの複製と転写が遺伝子暗号となりタンパク質になる事が判ったが、それはいつも完全ではなく間違った接続が行われる事がある、これが細胞増殖レベルならばその細胞だけに限られて生体全体には影響しない。
生物発生の初期に間違いが起きた時はそれが複製を繰り返して生体全体に行き渡るこれを「生殖細胞突然変異」と呼び次の世代に伝わる、DNA変異は「塩基置換」であり生じるとDNAの読まれ方が変わる。
自然突然変異は確率的に起きるので世代に比例して変異の数が増える、従って祖先の生物種から別の種が2つ別れた時は、2つの異なるアミノ酸の数を調べる事で祖先から別れた時期を調べる事が出来て分子時計と呼ばれる。
環境により変異は誘発突然変異と呼び放射線・紫外線・化学物質・酸化等で起きるこれは避けられない、だがそれは同時にDNA組み換えを行う方法になる人工的に上記を加えて組み換えDNAを作っている。


数学・算術

自然科学は自然界での実証にゆり真実だと判断される、推論がどれだけに内部的に正しく矛盾無く展開されていても、自然界との一致の検証が出来て初めて採用される。
従って、思考と推論で構築した世界が自然との合致を検証されなくとも可能な分野は自然科学から外されるが、場合によっては科学から外す考えもある、例えば哲学・論理・数学などがある。
数学はそれが扱う領域を自由に設定できる、そこでは厳密であり内部矛盾しない論理があれば成立するので自然界と無関係でも存在出来る、だが数学は自然科学の分野の推論の構築に有用だったりそれの精度を上げる為に重要な位置にある。
それ故に自然科学者が推論を立てる思考方法で必要なものとなっている、そして現実には生物学や物理学では抽象化を進めると次第に、科学と数学との区別が見えにくくなってくる。

数を扱うには、日常で物を数える事とそれに使う数=自然数(0,1,2・・と並ぶ)から始まる、自然数は0を含むかどうかは意見が別れる可能性がある、そして自然数は要素としてと順序を表す数としての性格がある。
そこから10進法という現在の標準になったが、今でもダース:12進や分秒:60進等は残る、そこに四則とイコールの演算が加わり記号がまとまり現在に来ている、プラス演算の結果は自然数だが、マイナス演算から負が生まれて整数(・・・、-2、-1、0、1、2・・・)になり、掛け算から素数の考えが生まれて素数は掛け算の基本となる。
割り算から有理数が生まれるが、それとは異なる無理数(平方根や円周率等)が有り、双方を足して実数と呼ぶ。
この算数の数の全体の関係は、他の自然界を体系化したものと類似性があるという定理がある、正負・離散・・・・確かに幾つか似たものはあるようだ。

素数は1と自身を除く自然数の積(掛け算)で表せない数だが、現在の情報科学では暗号方法の基礎技術になっており軍事や国家機密やビジネスでの通信の必須アイテムとなっている。
公開鍵暗号方式では、「公開鍵」と「秘密鍵」の二つをペアで使い、文章を数字化してそれを「公開鍵」で暗号化した数字列を送信する、受信者は自分だけが「秘密鍵」を持っていて暗号文を元の文章に戻す。
数学では片方の変換は容易だが逆方向の変換は困難な事がある、その一つの「桁数が大きい合成数の素因数分解問題が難しい事」を利用しるのが、公開鍵暗号方式であり、現在に実用化されているRSA暗号方式だ。
RSA暗号方式の安全性は素因数分解問題と同じとされており、素因数分解方法が解明出来ない場合は安全だとされる、それが不明な場合はコンピュータの計算時間の長さを越える桁数の素数が使用される。

実数を1次元で考えた次にはその数のペアを考える事になるだろう、(A、B)と記述して数学者は自由に発想を展開する、その説明の1つとして複素数という考えが可能だ、X軸に実数をY軸に虚数(iをつける)を取る2次元空間を考える。
一般人でも、1次元と2次元は理解出来るし3次元は難しいがある程度イメージを持つ事は可能だろう、そして複素数の2次元平面座標は電気回路という実用的に使用されるそこでは「抵抗・キャパシタンス・インダクタンス」の交流抵抗の3要素は複素数空間に当てはまめ事が可能であり、電気回路論や電子回路論のハイブリッドパラメーターに応用されている(数学も電気回路も苦手な人は流石に縁がなさそうだが・・)。
元が数字ペア=2次元だから、ペアの要素数を増せば3次元からそれ以上の多次元まで同じ様に展開することが可能だし数学者は多次元=n次元として扱う、ただし平面や立体空間のようなイメージを越えるので一般には理解はしにくい内容だ。
多次元を同じ様に思考出来るかどうかは、数学者とその他の境目かも知れない。

数理論理学では、論理学の言葉で数や数学の公理を定義しようとする。
公理として「ある性質が0に属し、その性質をもつ任意の数の後続者にも属する時、それはすべての数に属する」がある、これは数学的帰納法と呼ばれる「n=0で成立し、n=nがn=n-1で成り立つならば全てのnで成り立つ」だ。
数学を論理的な体系で構築しようとすると数の概念の定義が必要となる、数理論理学の創始者・フレーゲは自然数を小さな集合から順に集合の名前として定義を考え論理用語を使用した、またラッセルも数学が論理学の1分野だとしてその実証を考えた、
論理的に展開した公理は、1つのパラドックスや矛盾が見つかっただけで数学的帰納法的に全体が破綻する事になる、度々修正を行うが結果は数学はただの論理学の1分野でない方に傾いているとされている。

計算する作業についてはコンピュータの登場で大きく変わった。
イギリスの数学者・チューリングは「論理計算機」を考案した、そこではチューリング・マシンが人間が計算する行為を模倣するが、それはアルゴリズムというルールを順に使い計算して行く事だ、それは現在のデジタル・コンピュータの方式として知られる。
チューリング・マシンとそこから産まれたコンピュータは第二次大戦時に暗号解読用に研究された事でも知られ、暗号解読での勝利は戦争を早期に終結させたとしてチューリングの功績とする意見もある。
数学的には、チューリングが行ったチューリング・マシンの限界を調べる研究が重要だ、限界があるならば人間はどれだけ時間を長く要しても解けない問題が存在する事になる、それはコンピュータの性能がいくら高くなっても同様に解けない問題は存在する事を示す。
チューリングが得た結論は、数学の問題の答えを決定する普遍的なアルゴリズムは存在しない場合がある事だった。

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