ビーグル号世界周航記

「ビーグル号世界周航記」について

「ビーグル号世界周航記 ダーウィンは何をみたか」
  チャールズ・ダーウィン
     Charles Darwin

  「What Mr.Darwin saw in his voyage round
     the world in the ship "Beagle"」
    1880

「ビーグル号世界周航記 ダーウィンは何をみたか」
   1958 日本訳初出
   2010 講談社学術文庫 荒川秀俊 訳
 
目次
 
第1章 動物
第2章 人類
第3章 地理
第4章 自然
人名索引
事項索引

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チャールズ・ダーウィンはイギリスで大学卒業後に、1831年から軍艦ビーグル号で出航した。
目的は「世界周航」「ビーグル号のパタゴニアおよびティエラ・デル・フェーゴの測量を完成する」
「チリ・ペルーならびに太平洋における数個の嶋の測量を完成する」ことに参加だった。
航海は1831年から1836年まで行われた。
ダーウィンは帰国後に「ビーグル号航海記」を出版した。
大作であり学術的な本だった。

1880年にニューヨークの出版社が、「ビーグル号航海記」等のダーウィンの著書から抜粋したものを、家庭の親や少年少女向きに編集して出版した。
その目的はダーウィンが訪れて見て書いたものを、イラスト・絵を含めた本で易しく見せる事だった。
上記内容から本書「ビーグル号世界周航記 ダーウィンは何をみたか」は厳密にはダーウィンの著書とは言えない面がある。

感想等

本書は、ダーウィンが書いた著書から編集して、読みやすい内容に変えて少年少女でも理解できて楽しめる内容にした本だ。
主人公の「私=ダーウィン」が見た事・聞いた事をその視点から描かれる内容であり、それ故に「ダーウィンは何をみたか」になる。
地名や動物・植物などの読み方や表記は、訳し方や分野ごとで変わる・食い違う事は多い。
それが歴史的な時間を経ると大きく変わる事も多い。
特に南米の海岸を中心にした地名は、日本人に限っては馴染みの無い事は多い。
読者は本書に載っている地図を事前に確認しておく必要があるだろう、それが判りやすい。
同時に読みながらもしばしば参照する事になる。

訳者は同時に、イギリスのフィート・ポンド法の単位から、メートル法に変えたとしており、読む者は助かる。
動物名や植物名でも同様だと言う、そこには日本人には馴染みがあるものや珍しい名称もある。
流石に時代と地域とが重なると、本書の目的が「知らないものや生態を紹介する」という内容からも、伝わり難い事は普通にある。

掲載されている地図「ビーグル号航路地図」は繰り返し時間を掛けて見る事になるだろう。
世界地図で「イギリス>南米のブラジル海岸>南米南端のホーン岬>チリ海岸>ペルー海岸>ガラパゴス諸島>太平洋>タヒチ>ニュージーランド>オーストラリア>インド洋>アフリカ南端喜望峰>大西洋>南米東海岸>イギリス」がおおまかなルートだ。

南米の拡大図はより詳しい、南米東海岸(ブラジル・アルゼンチン)と西海岸(チリ・ペルー)間は主要な測量地域であり、年をまたいで繰り返し往復している。
航路を見ると、南米の南側の海岸を中心に、南半球が世界周航航路だと判る。

本書の本文は読み易いが、地名や人種名や珍しい動物が頻出するので理解しやすいとは言えない。
その部分はあまり深く考えないで、地図や絵を見て楽しむ方法が向いているとも思える。
本書自体がその目的や楽しみ方向きに、作られたとも思えるからだ。

目次項目には「馬」「牡牛」「イナゴ」と表記されても、実文は「牡牛(ウルグァイ)」でありそれぞれの地域でを書き表している。
地理・自然の項目でも、似た表記方法が使用されている。
主人公は見た事を書くと同時に、その土地の人びとから聞いた事、聞き集めた事も多く書いている。
観測と測量に各地を訪れて、同時に現地の人に聞き込む調査の意味が非常に大きいと判る。
聞きとり調査でも自ら現地に出かけて調査する、それを記述する、それがダーウィンの一つの大きな手法だ。

現在に似たものを出版してそこに掲載するならば、絵ではなく写真だろうと思う。
だが本書の絵・イラストは文章と共に、大きな意味と比重があり、欠かす事が出来ない。

本書の多彩な内容の、個別のどの部分に興味を持つかあるいは楽しむかは、個人で異なるだろう。
本書が時代を越えて読まれる事の理由として、読者に何を楽しむかを委ねている事もあるだろう