「幾何学基礎論」について
正式名:「幾何学基礎論」 著者:ダーヴィッド・ヒルベルト 発表年:1930年 プロイセン (複数の論文を集めた定本) 日本語訳 「幾何学基礎論」:ちくま学芸文庫 中村幸四郎 訳 初出:1969年清水弘文堂
原典「幾何学基礎論」について
幾何学といえば、ユークリッドの「原論」から始まります。 「原論」も邦訳がありますが非常な大著です。 「原論」は5つの公準からはじまりますが、古くから第5公準 を省く試みがなされてきました。 その結果は、「非ユークリッド幾何学」を生みました。 その結果は新しいものを生み出すとともに、急激な拡大は幾何学 自体のその後の進み方も曖昧にしました。 ヒルベルトの「幾何学基礎論」は公理の考察と、無矛盾性・独立性 を考察してその後の道筋を作ったものです。 現代では、用語・方法論を始め単純に適用する事はないが、それは 当然でしょう。
「幾何学基礎論」の内容
序 第1章 五つの公理群 1:幾何学の構成元素と五つの公理群 2:公理群1:結合の公理 3:公理群2:順序の公理 4:結合公理と順序公理からの結論 5:公理群3:合同の公理 6:合同公理からの結論 7:公理群4:平行の公理 8:公理群5:連続の公理 第2章 公理の無矛盾性および相互独立性 9:公理の無矛盾性 10:平行の公理の独立性(非ユークリッド幾何学) 11:合同の公理の独立性 12:連続の公理5の独立性(非ユークリッド幾何学) 第3章 比例の理論 13:複素数系 14:パスカルの定理の証明 15:パスカルの定理に基づく線分算 16:比例と相似定理 17:直線および平面の方程式 第4章 平面における面積の理論 18:多角形の分解等積と補充等積 19:同底、同高の平行四辺形と三角形 20:三角形および多角形の面積測度 21:補充等積性と面積測度 第5章 デザルグの定理 22:デザルグの定理とその合同公理による平面における証明 23:平面において合同公理なしにデザルグの定理は証明不可能 24:合同公理によらざるデザルグの定理に基づく線分算の導入 25:新線分算における加法の交換律と結合律 26:新線分算における乗法の結合律と二つの分配律 27:新線分算に基づく直線の方程式 28:複素系とみなした線分の全体 29:デザルグ数系を用いる立体幾何学の構成 30:デザルグの定理の意義 第6章 パスカルの定理 31:パスカルの定理の証明可能に関する二つの定理 32:アルキメデス数系における乗法の交換律 33:非アルキメデス数系における乗法の交換律 34:パスカルの定理に関する二つの証明(非パスカル幾何学) 35:パスカルの定理による任意の交点定理の証明 第7章 公理1−4に基づく幾何学的作図 36:定理と定長尺とを用いる幾何学的作図 37:定理と定長尺を用いる幾何学的作図の実行可能の鑑定法 結語
感想
幾何学においては、ユークリッド「原論」から始まります。 その第5公準(平行線が1つ以上存在する)の証明の歴史も 長く大きなドラマです。 そこから生まれた非ユークリッド幾何学は、数学という公理と 矛盾のない閉じた世界の存在の証明からなる分野に特有のもの でしょう。 しかし、それは進歩でありながら多きな変化と拡大をもたらし 本来の姿を曖昧にしがちです。 この時に登場したヒルベルトの「幾何学基礎論」が整理とその後の 出発点となったといえます。 ヒルベルトは幾つかのモデルに対して考察していますが、それは 自然な事でしょう。現代でもそのまま適用できる事を期待する事 は意味はないです。 なお、公理・公準をはじめ多くの用語の意味や使い方自体が時代と 使用者で変わっています。本著での訳や使い方が、現在の一般的な 事とはかぎりません。
非ユークリッド幾何学で混迷した状況を整理。
数学の公理を再考察してまとめた著書
歴史に残る古典的自然科学書をよみましょう。