天文対話

「天文対話」について

通称:「天文対話」
正式名:「プトレマイオスとコペルニクスとの二大世界体系に
             ついての対話」
著者:ガリレオ・ガリレイ
発表年:1632年、フィレンツェ
所属:ピサ大学特別数学者

目次等

日本版(上巻)
  はしがき
  献辞
  序言
  第1日
  第2日
日本版(下巻)
  第3日
  第4日

日本版
 天文対話(上)
  青木靖三 訳
  岩波文庫 1970年第5刷
天文対話(下)
  青木靖三 訳
  岩波文庫 1970年第5刷

内容

原題から分かるように、プトレマイオス(地動説)とコペルニクス
(天動説)との対立する意見を持つ2人と登場人物と、中間的な
3人目の対話形式で進めながら、ガリレオの考えを代弁する人物が
対立する考えを持つ人物の疑問を説明して行きます。
全体が4日に分かれており、1日ごとに話題を変えて話を進めて行
きます。
対話形式は当時では珍しくなかったと言われています。
3名は、サルヴィアチ<コペルニクス、サグレド<中間、
シムプリチオ<プトレマイオスデス。
本書がガリレオの晩年の著作であり、有名な宗教裁判や発禁処分
からガリレオの地動説が主題と思われている節があります。
それを前提に読むとかなりの違和感があります。
本書を読んだかどうかが分かるような、風説と異なる内容です。
第1日は、「世界の三次元性と完全性の実証」という理解しがたい
内容に終始します。ただ、天体に関する話題と地上に関する話題が
同等に議論されている事は、重要です。
双方で「世界」であり統一した性質を持つ事を議論しているからです。
本書は大著であり書くのにかなりの年月を要しているとされています。
従って、1日目はかなり古い時代のガリレオの考え方あるいは
思考錯誤の状態を表しているとも言えるでしょう。
具体的な、議論は2日目からはじまります。
2日目は、「地上で生じる数々の現象」が語られます。
3日目は、「天体で生じる数々の現象」が語られます。
これで全ての筈ですが、4日目に「潮汐現象」が語れます。
構成からは、2日目と4日目はまとめるべきであるでしょう。
それを最後に、4日目を設定したのは「潮汐現象」で
ガリレオは地動説を強く説明できると考えたと思われます。

細部は時代的に色々とあるとして、本著の構成からは最大の
地動説の根拠として説明されている4日目は完全に間違っています。
まだ「ニュートンの万有引力の発見」以前ですので、引力が原因で
生じる潮汐現象の説明が間違っている事はやむを得ないとも言えます。
ただ、ガリレオ自身が地動説を信じていた事は事実ですが、
本著でそれを、見事に説明したとは言えません。
それでも、本著の持つ重要性は非常に大きいと言えます。
当然ながら、本著の反対者も具体的な間違いの証明を持っていた
訳ではありません。

本著の内容を現在的に見ると、地動説を証明したのではなく、
「天動説でも地動説でも、地上・天体の現象は説明できる」と
いう事を証明したと言えるでしょう。
これが3日目までの内容です。そして積極的に地動説を証明
しようとした4日目は間違いでした。

この状況からは、後年に語りつがれる色々な逸話がどの程度に
真実かは疑問があります。

ガリレオ自身が発見した多くの事実を集めても、この時代では
地動説の証明には不十分だったというのが、当時の状況だったと
思います。

感想

ガリレオの論文は多く存在します。それらもいずれ取り上げたいと
思います。
まとまった著作では、本著と「新科学対話」があります。
まだ高校生の私には、読み切れる内容ではありませんが、当時の
恩師から「新科学対話」の訳は自然科学的に適切でない、「天文対話」
は優れているので是非読むように薦められた事を思い出します。
いずれにしても、それらを判断する能力は無かった時です。
ただ、世に語られる逸話に疑問を持つきっかけになり自身が自然科学
を志すきかけのひとつになったと思っています。
内容は充分に理解出来なくても、読みあさった頃でした。

フーコーの振り子で地上で地動説が証明されるのはもっと後ですし、
天文学的にも地動説の証明に必要な観測精度がもたらせるのももっと
後です。

ガリレオは地動説を確立してはいなかった。しかし、間違った内容の
指摘ではなく宗教・イデオロギー的に否定された。
その詳細はあまり知られていない様に感じます。
歴史とはそのようなものなのでしょう。

歴史に残る古典的自然科学書をよみましょう。

間違いがあっても天才の思考を少しでも理解しましょう

哲学的・宗教的な部分は現在の遺伝子工学にも匹敵