セグロカモメの世界

「ニコ・ティンバーゲン」について

ニコ・ティンバーゲンの読み方はいくつかあるが、単純な英語読みも
本人が認めており、ニコラスという名も本人がニコと署名するので
その様に広がっています。

オランダ人で、兄が経済学者で、おとうとは動物生態学者という一家
です。

生活・研究は移住したイギリスで行われました。

世界的に著名になったのは、ローレンツとフォン・フリッシュと共に
1973年のノーベル医学生理学賞受賞でしょう。

動物行動学という分類でも、そもそも賞の該当分野と見られていません
でした。

生物学は、多彩に広がりを見せて、マクロとミクロとか実験と観察
とかの単純な分類は出来なくなっています。

それを動物学や動物生態学と狭めてもまだ不十分です。

ティンバーゲンはローレンツ等と、動物行動学という分野を開きまし
たが、その研究ほうほうからナチュラリストとも呼ばれます。

そして動物の中には、集団生活をするものが多くいて、そこには
社会行動が存在するとして、セグロカモメで研究したのが
本書です。

「セグロカモメの世界」の内容

日本版「セグロカモメの世界・世界動物記シリーズ11」
     『鳥類の社会行動の研究』
      ニコ・ティンバーゲン
      安部直哉・斎藤隆史 訳
      浦本 昌紀 解説
       1975年
       思索社

原著:
「セグロカモメの世界」
   The Herring Gull`s Woeld
      ニコ・ティンバーゲン
      1953年

・目次
第一部:はじめに
 第1章:野外観察の心得
 第2章:執行器官
 第3章:感覚器官
 第4章:非繁殖期の行動
第二部:コロニーへの定着・争い・テリトリー
 第5章:コロニーへの渡来
 第6章:争いと威嚇行動
 第7章:威嚇姿勢の起源
 第8章:個体識別
 第9章:場所定着性
 第10章:争いとテリトリーの機能
第三部:番形成と番の維持
 第11章:成鳥の番
 第12章:新しい番の形成
 第13章:番の行動
 第14章:コートシップ・ディスプレーの起源
 第15章:巣造り
第四部:抱卵行動
 第16章:抱卵行動
 第17章:卵の識別に関する実験
 第18章:孵化
 第19章:雛の保護
 第20章:セグロカモメのコロニーの管理
第五部:家族生活
 第21章:雛の行動
 第22章:雛の世界の解析
 第23章:他の動物にみられる信号刺激
 第24章:親鳥と雛の結び付き
むすび

感想

動物行動学、特に社会行動の研究は、対象生物の棲息する場所で
の観察が中心になります。

そして、本書に度々登場する、実験を行う事も含まれます。

対象に影響を与えない観察から始まり、長期の結果に、観察者が
自らが僅かの外乱を投げかける。

それに対する行動も含めて、動物の行動を観察・研究するのです。

興味も手法も特殊ですが、研究対象の全てを明らかにする訳で
なく、全ての対象動物に共通の方法を示す訳でも無いです。

あくまでも、自分が対象とした動物とその行動と、幾つかは社会
行動を対象にします。

手法や考え方や、類似性は期待出来ますが、動物の多様性からは
とても網羅は出来ません。

ただ、それまでのナチュラリストと異なるのは、観察・研究に
論理性を入れたことです。
観察と実験のバランスには絶えず注意し、絶えず客観的に行動
して対象と接します。

それらの行動は、逆に生物学では、常識的な生物学者とさえ呼ばれ
ます。
何か、生物に変化を与えるとか、新しく作るとか、突飛な事は
せずに、観察とシンプルな実験をもって行います。

動物行動学の創始者の一人です。

ナチュラリストと同様の観察に、実験を加えます。

対象動物が社会行動を取ると、動物社会行動の考えになる。