「物質と光」について
正式名:「物質と光」 著者:ルイ・ドゥ・ブロイ 発表年:1939年、フランス 日本訳原本:1972年版
目次等
諸言 一 現代物理学の概観 現代物理学の進歩 近代物理学における物質と光 量子と波動力学 二 物質と電気 波の概念と粒子の概念に関する考察 二種の電気に関する考察 電子の進化 電磁理論の現状 三 光と輻射線 光学史管見 光の理論における古い道と新しい展望 物理学における逐次的綜合の1例、光の理論 四 波動力学 電子の波動的性質 波動力学とその種々の解釈 ポテンシャルの障壁を貫く帯電粒子の通過 相対論と量子 五 量子力学に関する哲学的研究 近代物理学における連続性と個別性 確定性の危機 量子力学によって導入された新思想 新しい物理学における諸可能性の同時性表現 六 哲学的雑論 物理実在と観念化 メイエルソンを悼む 機械と精神
内容
20世紀は、「量子論」と「相対論」が登場しました。 とりわけ「量子論」は理解の差はあれど、現在では生活にも密着 しており非常に大きな影響を与えました。 どのような学問・理論等もその成長過程は色々な議論が行われます。 量子論の問題は、本著の目次を見ればほぼ分かります。 本著の出版時期はその初期の課題がある程度出たときですが、ただ 解釈については完全にまとまっていません。 哲学的雑論という自然科学?と思うような話題もある必然性があります。 量子論は、物質の持つ2面性が問題になります。 あるときは「粒子」としてふるまい、あるときは「波動」として ふるまいます。この事をいかに解釈するか、どのようにつなげるかが 課題でした。そこに著者のドゥ・ブロイの式が登場します。 本著で著者は、数式をなるべく使用しないと述べていますが、上記は 重要であり別です。 エネルギー=プランク常数*波動振動数 というドゥ・ブロイの式で関係つけられます。 これにアインシュタインの物質の質量とエネルギーの関係式 を組み合わせる事で物質と波動が関連つけられます。 物質の2面性をどのように説明するかは色々な試みがあります。 本著でもなされています。 同時に本著では、波動力学と光の電磁理論の関連付けも行っています。 粒子の確率解釈が確率するには時間を要しますが、進むべき道は この頃に出来つつあると分かります。 現在は、量子論の基本方程式はシュレディンガーの波動方程式とされる 事がふつうですが、ドゥ・ブロイの式が消え去ることはありません。 本著には、量子論の発展に寄与した多数の物理学者の名前が登場 します。詳しい人は、業績の整理に、知らない人は大きな理論形成は 多くの人たちの努力でなされる事を理解できると思います。 新しい理論が形成される時期には、優れた直感とそれを足場に 推論を進める能力が要求されます。 本著者は、それを持った人物です。
感想
20世紀の著書でかつ、現在の中心の理論の「量子論」に関する本が 古典かと問われれば、「量子論」という分野の古典であると答えます。 著者は、その業績でノーベル賞を1928年に受賞しています。 「量子論」を全面にした受賞としては初期のものです。1939年の の本著にはその時の受賞講演も含まれます。 昔なつかしい古い時代ばかりではなく、まずは幅広い範囲からはじめて 徐々に進めるのが当初からの、予定です。 従って、また天動説の時代にもどる予定ですが、時代は順序に従う 予定は今後もありません。また得意分野の物理・数学が中心ですが 生物学や他の分野も勉強して取り上げたいと思います。 量子論で有名な研究者の多くは、教科書となる著書を残しています。 量子論の基本方程式の波動方程式で有名なシュレディンガーにその 著作が無いことがかえって有名です。 ドゥ・ブロイは量子論の創生期に活躍した事もあり教科書として 取り上げられる事はありません。 しかし、朝永振一郎の有名な著書であり教科書の「量子力学」では 基本方程式として、シュレディンガー方程式と同等に、ドゥ・ブロイ の式を使用する独特の構成を取っています。 現代でも(正確には少し前になりますが)、その功績は生きています。 量子論の古典として、あえて取り上げた理由でもあります。
歴史に残る古典的自然科学書をよみましょう。
間違いがあっても天才の思考を少しでも理解しましょう
哲学的・宗教的な部分は現在の遺伝子工学にも匹敵