人口の原理

「自然科学と社会科学」について

自然科学は自然界の現象を研究する学問であり、生物も含む物質的自然を対象とする人間の認識活動ともされ、数学のような抽象的知識や、哲学のような理論的知識は除く。

「自然」とは人為的ではないもののことであるので生物としてのヒトも含む。
人間が作り出した文化や社会(芸術・文学・法律・規範・倫理 等)に関しては自然科学は扱かわない。
それらの領域は主に人文科学・社会科学が扱い、経済や政治も人為的だが、対象が大きい。

生物学の動物の集団を扱う分野と全く無関係とは言えない。
人の係わりを完全に二つに分けれないとも言える。

「人口の原理」について

「人口の原理」
  ロバート・マルサス
  The future improvement of society, with remarks

   1798

  第一版「人口の原理に関する一論」

   岩波文庫 高野岩三郎・大内兵衛 訳
 
概要
 
第1部(1章−7章)
「貧困と悪徳が社会に多い」
それは簡単には除けない

1:食物が生存に必要
2:情欲は必要で、ほぼ変わらない
を前提にすれば、それが理想を制限する

第2部(8章−15章)

人間完全性論者・平等主義者・社会制度改革論者
へ、「人口の原理」からそれらは成功しない

第3部(18章−19章)

「人口の原理」の神学的説明

感想等

ダーウィンはその進化論の「自然選択」論に辿り付く過程でマルサスの「人口論」を読んで知識を得たとされる。
具体的には、「人口論」では下記を示す。
「人口は食糧供給を上回る速さで増加しているので、人間には当然の結果で資源が不足する運命が待ち構えている。」

そこから、
「動植物の生存競争では有利な変異が保存されやすく、不利な変異は消失し易い。」
と思い立ち、「自然選択」論になった。

自然科学では、検証された理論が正しいとなる。

それ故に、マルサスの「人口論」も同じように扱わう人がいる。

理論を予言と考えて、その後の未来との一致性で判断する事だ。
人間社会は、要因の多さと、政治・経済が人為性が高い事が自然以外に加わる。

それ故に、自然科学の様に単純に検証は出来ない。

そもそも生物学自体が広く、自然科学のみの要素だけでない。
動物の集団行動を調べる事は純自然科学とも言いがたい。

「人口論」は出版当時に大成功した、それ故に多数の反対する意見が出た。

また時間の経過の結果としての社会の変化を見てからも批判は多い。

「人口論」では人口の増加は食糧不足を生じて、大きな貧困を起こすと考えた。

その後の社会は人口が増加して行ったが、技術革新も同時に起こり食糧供給を確保出来た、それで多いな貧困と飢餓は起きなかった。

その事を、自然科学の検証として理論は正しくない意見があった、あるいは「人口論」を予言と見て外れたという意見があった。

「自然」とは人為的ではないものと理解しておれば、「人口論」のような社会・経済論は予言でも恒久的な真理でもなく、人間の行動指針や社会・経済活動への提言としてとらえるものだ。

マルサス自身も、楽観的な考え方への警告・警鐘の意味で書いている面を感じる。

社会・経済は時間や環境の影響で変わる面が大きい、ある時点とある社会を見て短絡的に正否を判断出来ない性格がある。

自然科学とに接点があっても、別の分野として分けられている理由が判る。