「世界の和声学」について
正式名:「世界の和声学」(Harmonics Mundi) 著者:ヨハネス・ケプラー 発表年:1619年 ドイツ 日本語訳 「宇宙の調和」: 岸本良彦 訳 初出:2009年 工人舎
原典「世界の和声学」について
多くかつ多様な著書があるケプラーは日本でも有名です。 世界的にも全集にあたる「ケプラー選集」が編まれています。 ただ、その時代性から見て著書の完訳は限られています。 初版年から分かるように2009年は刊行後390年ですが、 「新天文学」(1909)からは400年です。 原典の訳名から分かるように、完訳版ではなく抄訳でこの紹介を書 いています。 ケプラーの著書では、3作が有名です。 最初の著書で「コペルニクスの天動説」を取った「宇宙の神秘」 (1596)と、有名なケプラーの3法則の1:楕円軌道と、2:面積 速度一定とを発表した「新天文学」(1909)と、本著です。 本著では、ケプラーの第3法則が発表されています。
「世界の和声学」の内容
序 第1章 五つの正多面体について 第2章 これらと調和比との類似について 第3章 天体の和声を考察するのに必要な天文学的学説の摘要 第4章 惑星運動に属するどのようなものに単純な和声が表現 されているのか、また歌唱に存在しているすべての和声は天 にも見いだされるということ 第5章 音階の諸段階、組織の音高、長調とか短調という和声 の種別は、ある種の運動によってあらわされる 第6章 音調または旋法は、個々の惑星についてそれぞれあら わされる 第7章 すべての惑星の対位法または和声法が存在し得、それ らは相互に異なっていること 第8章 惑星において四つの声部、ソプラノ、アルト、テノー ル、バスがあらわされる 第9章 この和声的排列を得るためには、各惑星がみずからの ものとしてもっている離心率こそーー他のものではなくーー 定められねばならないという証明 第十章 きわめて豊穣な推測からする太陽についての結語
感想
ケプラーは天文学・物理学が大きく展開する時代の中で活躍 しました。 1543年 コペルニクス死去。 1564年 ガリレイ誕生。 1571年 ケプラー誕生。 1596年 「宇宙の神秘」を出版。 1600年 ティコ・ブラーエの助手となる。 1609年 「新天文学」出版。 1619年 「世界の和声学」(「宇宙の調和」)出版 1630年 ケプラー死去。 1642年 ガリレイ死去。ニュートン誕生 コペルニクス>ガリレイ>ティコ・ブラーエ>ケプラー> ニュートン という著名な人物の流れがあります。 これは、コペルニクスの地動説から始まり、ニュートンの 万有引力の発見へと繋がる重要な歴史です。 ティコ・ブラーエは莫大な天体観測を行いました。 このデータなくして、ケプラーの3法則は生まれなかったと されています。 日本語完訳のある「宇宙の神秘」で地動説の立場で話を展開し ティコ・ブラーエのデータ解析から、「新天文学」で第1・2 法則を発表し、そして「世界の和声学」で第3法則を発表し ました。 その内容は、「惑星の公転周期の2乗は、太陽からの平均距離 の3乗に比例する」です。 この第3法則がニュートンの万有引力の発見の元になったと されています。 この時代の著書は、自然科学であっても異なる思想的な表現や 説明で書かれているのでなかなか分かりにくいです。
ケプラーの3大著作の最期です。
3法則の、3番目が本著で発表されています
それは、ニュートンの万有引力の発見に繋がります