自然発生説の検討

「パストゥール」について

ルイ・パストゥールは、19世紀のフランスの科学者です。そのころ
までの科学者に多いですが、多数のジャンル・研究の業績を
残しました。
今では、その名前のついた研究所名が有名ですし、細菌学の始まり
として有名です。

多数の業績の中で、「自然発生説の検討」と発酵現象が関連する大きな
ものです。
なぜならば、これらから「微生物学」の基礎を築き、それがはじめと
なり、大きく多彩な分野の研究が進んだからです。

「自然発生説」とは、古代のアリストテレスのまだ微生物が知られて
いないときの説で、何も無いところからも生物が発生するという考えで
当時でも信仰の様に信じられていたとされています。


「自然発生説の検討」の内容

日本版「自然発生説の検討」
      ルイ・パストゥール 著
      山口清三郎 訳
       岩波文庫 昭和45年
原題 「大気中に存在する有機体性微粒子に関する報告書。
      自然発生説の検討」
        1861年 フランス発行

1章:自然発生説の歴史
2章:大気中に散布されている固態粒子の顕微鏡検査
3章:強熱処理された空気を使った諸実験
4章:空気中に浮遊している塵埃を下等生物の発育に適する液の中に
    撒く実験
5章:きわめて変敗しやすい他の液に対する以上諸結果の拡張−−
    尿−−牛乳−−炭酸石灰を加えた蛋白質含有糖液
 1節:尿
 2節:牛乳−−炭酸石灰を加えた蛋白質含有糖液
6章:(あらかじめ加熱された)浸出液に出現するあらゆる有機体性
    生成物の起源は大気中に浮遊している微粒子に存することを
    証明するためのきわめて簡単な別の方法
7章:浸出液の中にその液に固有な有機体性生成物を発生せしめるには
    普通の空気の微量をもってすれば足りる、という見解の誤謬
    −−種々な場所の空気に関する実験−−いわゆる自然発生に
    関する実験に水銀槽を使用することの支障
 A:いわゆる自然発生の原因が不連続に分布することを証明するに
    適した予備実験
 B:動揺していない空気に関する実験
 C:種々な標高における空気に関する実験
 D:水銀に関する実験
8章:黴の胞子および大気中に浮遊している芽胞の発芽力に対する
    温度の作用の比較研究
9章:いわゆる酵母なるもの、黴、ならびにインフソリアの栄養
    様式について

感想

何も無い所から生物が自然に発生する、と聞いてもいまでは信じない
ですが、微生物の研究がされる前は、微生物が原因の現象は、自然発生
するという古代の考えが根強く残っていました。

なかなか今では、イメージできませんが、この説を実験によって否定
して、微生物の存在とその研究の基礎を作りました。
その意味では、長い原題の方が意味は判り易いです。

見えない生物が存在する事を、実験で証明してそれが「自然発生」と
考えられていた現象の起源だと説明しました。

この考え方の転換から、発酵・黴等の研究も進歩し、多数の微生物が
絡むジャンルが進化しはじめました。

そしてそれは、伝染病等の医学・細菌学の発展へと繋がります。
ただし、著者自身はこれらの原因を強く意識していましたが、
本論文中でも、「自然発生」の否定だくでは、上記については全く
足りていない事を述べています。

パストゥール自身は、発酵・腐敗・熟成等では成果を上げましたが
まだまだ、未検討の分野は多数ありました。

彼の意見書により、未踏の研究への企画が進みましたが、
パストゥール自身は関与する前に亡くなりました。

しかし、間違いなく微生物が関与する多くの分野のはじまりは、
彼の研究だといえるでしょう。


ルイ・パストゥールは名前のついた研究所名が有名です。

微生物が関与する多くの分野の始まりとして有名です。

見えない生物の存在を証明し「自然発生」現象の起源と説明。