大陸と海洋の起源

「ヴェーゲナー」について

アルフレート・ロータル・ヴェーゲナーは1880年のドイツの学者
で職歴からは気象学者に分類されますが、大陸移動説の提唱で有
名です。
名前の表記は、ドイツ読みとアメリカ読みがあり、個人的には
アメリカ読みが最初だった。

グリーンランドの測量と、アフリカと南アフリカの地図的相似か
ら大陸移動説が浮かび、1912年に発表し、1915年に本著の1版を
発表したが、当時は受け入れられなかった。

その後に1929年の4版(本著)まで書かれたが、事象を説明する
他の説があり、大陸移動の原動力が何かを自身が説明出来なかっ
た。1930年に死去し、生前は説は認められなかったが、皮肉にも
本書に触れられているマントル対流が30年後に大陸移動の原動力
とされて大陸移動説が甦ったが、本には気づかなかった。

その後に発展して、地殻変動を総合的説明説としてプレートテク
トニクス理論が提唱される事になり、ヴェーゲナーの大陸移動は
再評価されている。

そもそも地球物理学がない時代で、気象学・地質学・生態学等が
入れ乱れており、全ての賛同は簡単には得られない状況でした。

「大陸と海洋の起源」の内容

「大陸と海洋の起源:第四版」Die Entstehung der Kontinente 
          und Ozeane. 4 ,umgearbeitete Auflage
   アルフレート・ロータル・ヴェーゲナー Alfred Webner
       1929年
      
「大陸と海洋の起源 大陸移動説」
      ヴェーゲナー
      都城秋穂・紫藤文子 訳
       1981年:岩波文庫>本書

・目次
<日本版・上巻>
第四版に対するヴェーゲナーの序文
第一章:歴史的序論
1:私の大陸移動説の起源と発展
2:大陸移動説の先駆者たち
第二章:大陸移動説の本質、ならびに地質時代における地球表面
   の変化についての従来の諸見解に対する大陸移動説の関係
1:陸橋説
2:地球収縮説
3:アイソスタシー
4:海洋不変説
5:大陸移動説
第三章:測地学的議論
1:はじめに
2:地質時代の長さ
3:大陸の移動速度
4:ヨーロッパに対するグリーンランドの移動
5:ヨーロッパに対する北アメリカの移動
6:そのほかの移動
7:緯度変化
第四章:地球物理学的議論
1:高さの頻度曲線の二つの極大
2:アイソスタシーと大陸移動
3:地震学的研究からみた大陸と深海底の違い
4:地球の層状構造をつくる物質、シアル、シマ
5:地球の力学的性質
第五章:地質学的議論
1:南大西洋の両岸の比較
2:南大西洋の両岸についてのデュ・トワの議論
3:北大西洋の両岸の比較
4:アフリカ、マダガスカル、インド
5:アルガンの議論
6」オーストラリアとニュージーランド
7:スンダ諸島とその付近
8:南極大陸
9:むすび
第六章:古生物学的および生物学的
1:根本的な問題
2:南アメリカとアフリカとの間の陸地のつながり
3:北アメリカとヨーロッパとの間の陸地のつながり
4:インドとマダガスカルとオーストラリアとの間の陸地の
   つながり
5:オーストラリアの動物群
6:ニュージーランドおよび南太平洋地域における陸地の
   つながり
7:大陸移動説に基づく研究
<日本版・下巻>
第七章:古気候学的議論
第八章:大陸移動と極移動についての基礎的問題
第九章:大陸を動かす力
第十章:シアル層についての補足的覚え書
第十一章:深海底についての補足的覚え書

感想

プレートテクトニクス理論やヴェーゲナーの大陸移動説の
再評価が1960年代で、日本への紹介もほぼ同時期です。

特に1973年に小松左京の小説「日本沈没」がプレートテクト
ニクス理論で書かれ、同年公開のその映画は一般に説を普及
させた。大陸や島が突然に沈没するSFは以前からあったが、
時間を掛けてゆっくりと沈む設定が特徴だった。

ただ地球物理学系と地質学系との間でこの説の受容に差があ
り、1980年代までは扱いに差があり、日本列島の形成まで大
陸移動とプレートテクトニクス説が日本で定着したのは1990
年ころされる。

ちなみに私の学生時代1970年代は地球物理学がある理学部も
少なく講義でも地球物理学と地質学がそれぞれ半期で合わせ
て1コマで卒業研究に忙しく、前期の地球物理学のみ受講し
ました。

理論は現象の証明で成立しますが、地球物理学では現象の説
明が合いやすい事で早くにこの説を受け入れ発展させました。

その関係の雑誌や書籍でも同様でした、物理関係の当時の私
は完成された説として受け止めていましたが、他の分野を含
めるとまだしばらく時間がかかったと知ったのは、後の事です。

現在では、マントル対流の出口が大西洋の中央にあり、地殻
が移動して、プレートとぶつかった地点でその下に潜りこむ
という考えが行き渡り、その戻る場所の一つが日本でそのぶ
つかりが地震の原因とも常識的になっています。

ニュートンが林檎が落ちるのを見て万有引力を発見したかど
うかは不明ですが、ヴェーゲナーが地図の海岸線の形で大陸
移動説を思いついた事は本書の内容にも含まれます。

注:下巻が見つからず細部の目次は省略しました。

大陸移動説の提唱者と書籍です。

死後に、その理論の正しさを示す理論や現象が発見され再評価されました。

現在では基本的な考えとなり、それを用いた地震等の研究に進んでいます。