「ハインリヒ・リッケルト」について
ハインリヒ・リッケルトはドイツの学者ですが、哲学者とされる 事が多い。 1863年− 1936年という生年・没年を古いと思うか、最近と思うか ですかが、そもそもの初めです。 その学問の対象としたのは、科学・哲学等を、自然科学と歴史的 科学とに分けて考える事。 そして、形式的な思考の末に、後者を文化科学として分けた事です。 現在、一般に使用される「自然科学」「文化科学」あるいは、 理系と文系という常識とも言える分類は、彼の業績によるものです。 それが、1900年に入ってからと言われて最近と思うかどうか です。 リッケルトは、総括的かつ形式的な方法論や分類を行い、それが 含まれる個別事項については別の事としています。 逆に言えば、それ以前は「自然科学」はほぼ分類されていましたが、 それ以外は言葉としても、形式としても境界が確立していなかった のです。
「文化科学と自然科学」の内容
日本版「文化科学と自然科学」 ハインリヒ・リッケルト 著 佐竹哲雄・豊川昇 訳 岩波文庫 1929年 原題 「文化科学と自然科学」 ドイツ 1898年発行 第1章:議題 第2章:歴史的状況 第3章:主要対立 第4章:自然と文化 第5章:概念と現実 第6章:自然科学的方法 第7章:自然と歴史 第8章:歴史と心理学 第9章:歴史と芸術 第10章:歴史的文化科学 第11章:中間領域 第12章:量的個性 第13章:没価値的個性 第14章:文化史の客観性
感想
本書は、リッケルトの代表的著書「自然科学的概念構成の限界 −歴史的諸科学への論理的導引」の、元になった先駆的講義録 をまとめたものとされています。 その講義的な内容から、判り易いものとされています。 しかも現在では、常識とさえ言える内容に達する過程を書いて います。 その意味では、まさに古典なのですが、意外に最近である事が むしろ驚きです。 その中で、幾つかの反対論があるとして、その反論的な部分も あります。 特殊科学が2つの主要部から成る事、そして自然科学がいくつ かの共通の関心で統合されている。 その他の方も同様とも言えるが、自然科学ほどには、個別の 研究者に共通のものがない。 そこで、双方の境界を明らかにする事によって、双方を明確に するとしています。 その理由・目的は、方法論を明らかにする事としています。 その考察は、歴史的な背景や、現実の方法論を考察する事で なされるとして、結果的に文化科学という分野や言葉を定着 させました。 彼は、方法論や形式による構成を行っており、自然と精神を 対立させる視点を批判しています。 自然科学の進歩が、人間に関わる進化論や遺伝子に関わる 研究に対して、倫理・宗教等の思想から色々な制約が発生 しています。 一度、常識として構成された文化科学が、その出発で取ら なかった精神という面で、再び絡みあって来たという気が するのです。
「文化科学と自然科学」は、当時共通意識がなかった、
文化科学という言葉を、明確化して共通の境界を明らかにした。
概念にのみ言及し、個別には立ち入っていない。