心理学(上)

「ウィリアム・ジェームス」について

ウィリアム・ジェームスは、アメリカを代表する哲学者・心理学者
です。
その経歴は異色で、生物学>医学>生理学>解剖学>心理学>
哲学へと拡がって行きました。

1875年にアメリカで最初の心理学教授になっていますが、1880年には
併行して哲学の助教授になっています。

人間の精神状態を説明するのに、生理学・心理学だけでは不足で、
哲学に興味を持ったとされています。

心理学の業績としては、1890年の「心理学の諸原理」からの複数の
専門書群があります。

専門書としては、大著の1890年の「心理学の諸原理」が代表とされて
います。
しかし、「心理学」という新しい分野を紹介するには、当然ながら
難しすぎます。
そのために、翌年に、内容を短縮して教科書的な内容に書き改め
ました。
それが、本著「心理学」です。

当然ながら、教育・啓蒙・普及等に興味の薄い専門家には、本書
は価値のないものと見る意見もあるとされています。

「心理学(上)」の内容

日本版「心理学(上)」
      ウィリアム・ジェームス 著
      今田 恵 訳
       岩波文庫 1939年

原題 「心理学・(心理学の教科書)」
       アメリカ 1891年発行

第一章:緒論
第二章:感覚総論
第三章:視覚
第四章:聴覚
第五章:触覚 温度感覚 筋肉感覚および痛覚
第六章:運動の感覚
第七章:脳髄の構造
第八章:脳髄の機能
第九章:神経活動の一般的条件
第十章:習慣
第十一章:意識の流れ
第十二章:自我
第十三章:注意

感想

本著は、日本への紹介は1927年で、1939年に改訂されて
います。
そして、1993年に今田寛によって改訳されています。

ウィリアム・ジェームスの著書は、かなり多く日本に紹介されて
います。
「心理学の諸原理」も訳されている筈です。
今回、「心理学(上)」を紹介したのは、単に私が1939年に改訂
版の上巻しか保有していないという事情だけで、他の理由は
ありません。

心理学の創始者という位置ずけですが、そもそもこの分野は自然
科学でしょうか。
現在でも、脳の解明は進行中であり漸く自然科学的になっています。
自然科学は、追試と再現性が必要ですが、心理学は特に初期は疑問
です。

ジェームス自身も、生物学>医学>生理学>解剖学>脳の研究と
進み、心理学に至りました。
しかし、心理学だけでは、脳の解明は無理であると考えて、哲学
へと併行して進んだ様です。

当時の医学レベルの問題もありますが、それぞれの分野が現在も
発展してきている事は興味があります。

「心理学(上)」は、専門向けの論文を

出版社等の要望で一般の教科書として削ってまとめた本です。

心理学の創始者で、哲学でも業績を残しています。