目に見えぬもの

「湯川秀樹」について

日本人の著書も取りあげたいです。
版を重ねて、入手しやすいものが多い事が多いです。

湯川秀樹は、日本人最初のノーベル賞受賞者として知られています。
分野は。素粒子論を中心とした理論物理学です。

20世紀は、物理学が大きく変貌し大きく発展しました。
それは、相対論と量子論です。
その具体的形が、特殊相対性理論と一般相対性理論発表と、
量子力学の確立です。

それは、素粒子論と物性の双方の発展を促しました。

理論は物理学以外も含め、仮説ですので、実験・観測での確認が
必要です。
従って、理論発表後あるていどの時間を置いて、その正否が確認
されます。

内容が複雑ほどに、その確認と正しさの証明に時間を要します。
理論発表から、その証明と評価に時間が空くのは今でも変わりなく
むしろ、長くなっています。

以下、物理学と湯川秀樹の中間子論とノーベル賞の年を羅列
します。

1907年−誕生
1916年頃−一般相対性理論がアインシュタイン発表
1926年頃−波動方程式と行列力学による量子力学の確立
     シュレディンガー・ハイゼンベルグ等
1934年−中間子理論構想発表。
1935年−「素粒子の相互作用について」発表、中間子の存在を予言。
1946年−本書。
1949年−ノーベル物理学賞受賞。
1981年−74歳没。

相対性理論>量子力学>中間子論>本書が偶然とはいえ10年の
時系列なっています。
中間子構想から、ノーベル賞までが15年です。
中間子論は勿論、戦前です。

「目に見えぬもの」の内容

「目に見えぬもの」
      湯川秀樹
       1946年
       甲文社

・目次
第一部
理論物理学の輪郭
 自然哲学 − 近代物理学 − 現代物理学
古代の物質観と現代科学
 古代インドの自然観 − 現代の物質観との対比 −
 因果と時間の問題 − エネルギーの源泉
 物質の構造 − 放射線の本体 − 力とエネルギー 
 − 原子内のエネルギー − 太陽のエネルギー
物質と精神
 二つの通路 − 物理学的世界 − 物質から精神へ 
 − 科学の根源
第二部
 半生の記
 ガラス細工
 少年の頃
 二人の父
第三部
 物理学に志して
 科学と教養
 真実
 未来
 日食
 眼の夏休み
 読書と著作
 話す言葉・書く言葉
 『現代の物理学』
 『物質の構造』
 『ピエル・キュリー伝』
 目と手と心
 目に見えないもの
 思想の結晶

感想


本書は書き下ろしではなく、それ以前に書いていたものを
まとめた物です。

第一部が、いわゆる専門分野の入門編に相当します。
「中間子」が登場するのは、「力とエネルギー」です。

第二部は、著者自身の「半生の記」のエッセイです。
この項を好む人はかなり多いと思います。

第三部は、物理学・自然科学に関するエッセイをまとめた物
です。

第一部にしても、歴史的な背景から次第に現在の状況を書いて
います。(その様に並べています)

物質の理解は、どの時代でも持てる知識で理解しよう試みられ
ます。
それは必ずしも、自然科学的に限定されなく、哲学的思想的で
す、理論物理学もそれ自体はそれに近い面もあります。

理論が歩き出すのは、実験や観察・発見で自然現象との一致が
確認されてからです。

理論では、人間はシンプルさと美しさを求める傾向があり、
結果もその様な時がしばしばあります。
だからと言って、実験等で証明されていない理論は、その内容で
判断はされません。
人間の思いや、好みどうりに自然が成っている保証は何も
ありません。

本書がまとめられたのは古いですが、これ以後も単体や、湯川
英樹著作集の形で繰り返し復刊されています。

日本人研究者の著作は、日本人は接する機会がより多い筈ですが
必ずしも読んだ人が多くはないでしょうが、内容的に読みやすい
本書等はお薦めです。

日本人研究者の著書も読みたいです。

20世紀の物理学の進歩から、物質の素粒子論が進化しました。

中間子論で有名な湯川秀樹の、一般向け著作とエッセイを集めた著書です。