近代医学の建設者

「メチ二コフ」について

エリ・メチ二コフは、細菌学・免疫学で有名なひとりです。
元々が、動物学からという変わり種です。

微生物学は、当初はその正体が不明だった為に、研究者の分野は
広いです。
その中には思想的面から、入って来た人もいます。

動物学から、細胞特に運動性細胞と呼ばれるものに関心が移り、
そこから免疫理論へと移って行きました。

本書は論文ではなく、末期の第1次世界大戦中に、研究が
出来にくい
中で、「世に役立てれば」という所から書かれており、読者は
医者ではなくこれから道を探す若い人向けとしています。
微生物学の貢献者の伝記の形になっています。

「近代医学の建設者」の内容

日本版「近代医学の建設者」
      エリ・メチ二コフ 著
      宮村 定男 訳
       岩波文庫 1968年

原題 「近代医学の建設者」
       モスクア 1915年発行
       パリ   1933年発行

緒言
第一部
 第一章:パスツゥール以前の医学
 第二章:醗酵と伝染病
 第三章:パスツゥールの醗酵説
 第四章:パスツゥールの生物自然発生否定説
 第五章:リスターの消毒法
 第六章:病原菌との闘争

第二部
 第七章:パスツゥールの伝記
 第八章:パスツゥールの晩年の思い出
 第九章:リスターの伝記と思い出
 第十章:コッホの伝記
 第十一章:コッホの思い出
 第十二章:近い未来に解決されるべき問題

感想

パスツゥールについては、既に著書を取り上げています。
微生物学では、パスツゥール以前と以後に分けるほど
大きな影響を与えています。

リスターは、防腐学・衛生学の分野を改革しました。

コッホは、結核の研究で有名です。
ツベルクリンの研究の歴史は波乱が多いです。
効果が出たり、無かったりが当初は生じました。
研究の途中の評価なのですが、対象がその時に大きな問題と
なっている病気だけに、評価も揺れました。

本書は、パスツゥールとリスターとコッホの3人を中心に
した微生物学の進歩を振り返る「第一部」と、この3人の
伝記と思い出を書いた「第二部」とからなります。

そして「第二部」最後 第十二章:近い未来に解決される
べき問題で、これからこの分野の研究者になる人へ語り
かけます。

メチ二コフ自身が、免疫学の大家として知られていますが、
その生涯も波乱の多いものです。

微生物学が、その形になり始めた頃はまだごく最近ですが、
それほど混乱していたのです。

微生物学は、長く混乱していた伝染病に非常にシンプルな
回答を出しました。

メチ二コフが第十二章で述べた課題を含めて、現代の医学も
多くの問題を抱えています。
ひょっとすると、その答えは伝染病と微生物学の関係の様に、
非常にシンプルなものかもしれない・・・そのような期待
も起こさせます。

「近代医学の建設者」は、専門の医者向けでなく

これからこの分野に興味を持つ若者が対象の内容です。

微生物学の発展に貢献した、3人の研究者の伝記です。