「因果性と相補性」について
正式名:「因果性と相補性」 著者:ニールス・ボーア 発表年:1933年 デンマーク 日本語訳 「原子理論と概観」: 井上健 訳 「ニールス・ボーア論文集」:山本 義隆編訳
原典「因果性と相補性」について
古典とはなにでしょうか。 20世紀の2大物理理論である「量子論」と「相対論」では その確立にいたる過程の業績と著書は、当然に20世紀に 書かれています。 量子論では、プランクの量子論から約25年がその発展と解釈の 歴史であり、1925年以降の理論の蓄積から、量子力学という 20世紀で最も成功した理論が構築されました。 量子力学の成果は、あらゆる分野に広がり、同時に半導体や分光学 磁気等の応用から、実用に急激に進んだ事は21世紀ではむしろ 常識的です。 この様な分野では、量子力学の基礎になる著書・論文は、古典に 当たると考えます。 量子力学の急激な進歩の中では、既にその基礎の構築に貢献した 論文として扱われるからです。 その量子論の基礎段階では、ボーアとアインシュタインの寄与は 双璧ともいえます。 ただその解釈では、完全に対立しました。それは現在の量子力学の 基礎方程式や理論が登場してからも続きました。 古典物理学と量子論の徹底的な違いは、物質の持つ二面性です。 古典的には同時に持てない性格を量子論では持つ事で解釈が可能 となります。 物質の性質の「波動性」と「粒子性」を合わせて持つ事。 そして、物質の挙動の記述の「時間と空間の記述」と「因果性」 とは互いに補いあうこと。 まるでパラドックのような反対のものを合わせて持つ事を解釈する する事で量子力学が構築されて行く事になりました。
「因果性と相補性」の内容
「因果性と相補性」自体は、ボーアの多くの論文のひとつですが ボーアの論文を集めた論文集のタイトルとしても用いられています。 内容は、原典について述べた内容の論文といえます。
感想
量子論から量子力学への進歩の歴史は、文字どうり年きざみ です。 1900年 プランク・量子発見。 1905年 アインシュタインの光電効果理論。 1913年 ボーアの原子構造解明。 1918年 プランクのノーベル賞。 1921年 アインシュタインのノーベル賞(光電効果理論)。 1922年 ボーアのノーベル賞(原子構造論)。 1925年 ハイゼンベルクの行列力学。 1926年 シュレディンガーの波動力学。 1927年 ハイゼンベルクの不確定性原理。 これほど短期間に量子力学の基本方程式に辿りついた事は驚き です。 ただし、現在では同じ理論の異なる表現方法として知られてい る「行列力学」と「波動力学」ですが、発表当時は前者が物質 の粒子的性質に近い考えで解釈しており、後者が波動的性質で 解釈されるという事で、反するものとして扱われていました。 それゆえ、性質の二面性・相補性による解釈が重要な発展の 為の解釈となりました。 この二面性は、統計的な解釈で成り立ちます。 そこには古典物理学では矛盾する事が多数存在します。 この矛盾から全ての人が、21世紀の現在では解き放たれた のかは、よく判りません。 矛盾はパラドックスになります。 統計的解釈は、直感的でないので誰でもが賛成ではありません。 反対者の代表がアインシュタインです。 彼の有名な言葉「神はさいころを、ふらない」はここから生まれ ました。 2009年時には、量子力学に変わるものはまだ無く、基本方程式 も変わっていません。 しかし、ジャンル的に見ればこれらの発表は古典として見れます。 古典とは、時代年号ではなくジャンルごとに見た位置付けとの考え 方で取り上げています。
20世紀の量子論発展功労者ボーアの論文です。
短期間に急速な進歩を遂げた量子論
原子構造の研究と基礎を築く理論物理学者