宮田一誠論 三浦半島ミステリー

宮田一誠は1976年に、探偵小説専門誌である雑誌「幻影城」の新人短篇コンクールで宮田亜佐名義で最終選考に残り、入選1名と佳作2名と共に最終選考の5名全体が雑誌に掲載されてデビューした、その後に雑誌「幻影城」に5作の短篇を発表した。
そしてその後で、初長編となる長編「火の樹液」を発表した。

その後に江戸川乱歩賞に応募して1979年に「ショケラ」が最終候補に残ったが出版されていないようだ、江戸川乱歩賞にはそれ以降にこれ以外にも応募があったとされている。

プロフィール上では、雑誌「幻影城」が廃刊になり、勤務先の神奈川県三浦市役所を定年退職してから作家生活に入ったと紹介されている。
1987年以降に、宮田一誠名義で3作の長編を発表した。

長編「浦賀与力」の二上洋一の解説によれば、神奈川県や神奈川新聞主催のコンクールの小説部門での入選があると紹介されているが、どのような作品かは不明だ。

作品数が少ない事と発表先が限られている事もあるが、作品は神奈川県や三浦半島を主な舞台にしている。
それは現代小説でも時代小説でも同じであるし、地名や題材にテーマとしての重きを置く場合もあれば、それ程は強い設定の必要性のない場合もある。
後者のケースについては、作家が生活経験がある場所や、訪問経験がある場所を背景に選ぶ事は普通である、作家はやはり土地鑑がある場所の方が描きやすい。

デビュー作の「お精霊舟」は動機に関わる背景が土俗的・風土的な内容であり、歴史・土地・人間性等を描く事で成立している、短篇コンクールにおいてもその様な紹介と評価を受けた。
その後の雑誌「幻影城」ではその時の見方が継続したが全ての作がその方向では無かった。

ただし長編「火の樹液」はまさしく、三浦半島を背景にした作品であり、復讐談という重いテーマが目立つが、背景には城ヶ島の大火という歴史の謎も設けている。
短篇代表作の「お精霊舟」と長編代表作の「火の樹液」が双方共に、同じ傾向と評価軸上にある事から、この作者への見方がそれで定まって来た事も妥当だと思う。

名義を宮田一誠としてからの、長編2作は題名からは旅情ミステリかと思わせるが、内容は題名とは全く異なり、サスペンスであり犯罪小説であり、人間の持つ殺意と要望と残酷性を描く事が主題となっている。
題材的には地方紙に発表された民話や青木原の樹海が含まれているが、土地鑑のある地域を舞台にしたと言える。
雑誌「幻影城」時代の作品と比較すると恐怖性や残酷性という類似性を見つける事は可能だが、作風が変わったと見るのが普通だ。

長編「浦賀与力」は、中島三郎助という幕末の人物を主人公にした時代小説だ、視点となる人物を変えて、黒船来航・造船・箱館戦争を描いた。
(2019/10/03)


作品リスト(2019/10)

作品

宮田亜佐名義 %

お精霊舟 197603 %
白い釣瓶 197605 %
実朝の首 197608 %
決算委員会 197705 %
ガセネタ・ヤポン 197801 %
火の樹液 197800 長編 %
三浦岬「民話」殺人事件 198704 長編
三浦半島殺人岬 198806 長編
浦賀与力 199412 長編

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