不思議なシマヘビの物語
         (野川で出会った“お島”)

                遠藤英實 作


私が“お島”と名付けたシマヘビの子どもの物語である。
何故、不思議というのか?
お話したい。本当に不思議なヘビであった。

*出会い*

十一月晩秋の或る日、都郊外の野川の畔でシマヘビの子どもに出会った。
その時はどうということもない。ヘビなんて何度も遭遇している。
二度目に同じ場所で会った時、我が目を疑った。
不安そうな表情のシマヘビの子どもと泰然自若としたヒキガエルが寄り添っている。
何から何まで対照的なこの光景に茫然とした。
 

*長い付き合い*

野外でヘビに遭遇しても、彼らは瞬時に姿を消してしまう。一期一会とも云えない。
ところがお島は死ぬ迄付き合ってくれた。

*愛くるしいポーズと表情*

飼育しているヘビとの交流は餌だけ、と聞いたことがある。
(もっとも、心を開かないのがヘビの魅力という人もいるらしい。)
ところが、お島はかくも愛くるしいポーズと表情で迎えてくれた。
(私が勝手に思うのだが)私になついていたように思う。

*冬眠を拒む*

シマヘビの冬眠は他のヘビに比べて遅いと云われる。
それにしても、出会った十一月には既に冬眠していてもいい筈なのだ。
ところが冬眠を拒んで年を越した。
そして二月三日、旅立った。冬眠用のシェルターはすぐ目の前にあるのに!

*旅立ちでの不思議*

お島との七十三日間の付き合いは終わった。最後もお島らしく不思議な別れとなった。
旅立つ一週間位まえ、お島のマンションにクサグモが居るのに気がついた。このクモは極
く普通にいるし、成虫でも越冬するらしいのだが、それにしてもお島のマンションにだけ
現れたのだ。この日、遊歩道6km位を散策したけれど、野生動物と云えば、(鳥、魚を除
いて)文字通りこの二匹だけだった。お島の暖かさに惹かれてやって来たのに違いない。
二月三日弔いの日、もっと不思議なことが起こった。ハナアブが傍を飛んだり止まったり
している。ハナアブは(名前の通り)花に来るアブで、例えばシデムシのように死骸に集
まってくる虫ではないし、クサグモのように暖を求めてとも考えられない。この日も河川
敷を探索したけれど、動物はこの3匹(お島もいれて)だけであった。お島を見送るため
に現れたのだと思う。かくの如く、最初から最後まで不思議なヘビであった。


         ** お島紹介 **

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


         ** 新しい年へ **

 

 

 


         ** お島 天上に旅立つ **

 

 

 

 


         ** 万華鏡のお島 **

 


最後に筆者から。
ヘビのウロコをデジカメで撮り、パソコンで遊ぶとかくも見事な万華鏡を
楽しむことが出来ます。
「ヘビはヌルヌル、ベトベトしているから嫌いだ。」という人は多いのですが、
この写真で見ると、その謂いは誤りであることが分かります。
こんなことで殺されてはたまりません。
もっとも、ヌルヌル、ベトベトしていたら殺しても良いということでは
勿論ありません。例えばミミズは大地の神ガイヤに使えていて、
豊饒な土を作っているのです。
ダーウィンは進化論で有名ですが、実はミミズやサンゴ礁の生態系での重要性に
着目していました。当時は土中のゴミ、海中のゴミ扱いだったのに!
やはりダーウィンは途方もなく偉かったようです。
それにしても、ヘビは神話や小説では大抵碌でもない役回りで登場してきます。
困ったものです!


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ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」

ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ讃歌」

ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」

ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」

ティータイム(その6) 「蝶の占有行動と関連話題」

ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」

ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」

ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」

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ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」

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ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」

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ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」

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ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活―」

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ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」

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ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」

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ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」

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ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」

ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」

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ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」

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ティータイム(その39) 「里山の蝶」

ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」

ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」
ティータイム(その42) 「今年(2020年)の報告」
ティータイム(その43) 「徒然なるままに 人物論(寺田寅彦、ロザリンド・フランクリン、木村資生、太田朋子)」


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