蝶の占有行動と関連話題
                遠藤英實 作



    
    1.はじめに
    2.占有行動とは
    3.ヒメウラナミジャノメの占有行動
    4.話題アラカルト(写真集)
       ・宿命のライバル(ヒメウラナミジャノメとヤマトシジミ)
       ・ヒメジャノメは困り者
       ・ヤマトシジミ♂の戦略
       ・ヤマトシジミ♂、間違う
       ・闘うモンキチョウ♀
       ・慰め合い(?)(ヒメウラナミジャノメ)
       ・紳士と無頼漢(ツマグロヒョウモン)
       ・あっさりしているヒメウラナミジャノメ
       ・紳士から外れるベニシジミ
       ・キチョウとシオヤアブ

@ はじめに
「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」をサイトに載せた。それを見て下さった方から、
「ヒメウラナミジャノメの占有行動」について問われた。記載しなかったのは、
ヒメウラナミジャノメには、そもそもそんな性質はないからである。それでも興味ある
テーマではあるから書きたいと思った。変な目次になってしまったのは、解説書風の
体系的な記述が難しかったからである。(勿論、私の力不足も)
もっとも、蝶の生態観察に、“体系的”も“解析的”も“計量分析”もないのだが・・

A 占有行動とは

占有行動とは、
 「縄張り(=テリトリー)を設定して、それを防衛或は奪取しようとする行動」
である。例えば、
ライオン:群れで縄張りをつくり、そこが全生活の本拠となる。
     雄は悲惨である。成長すると追い出され、放浪して運が良ければ
     縄張りを乗っ取る。老いてくると乗っ取られすぐ死んでしまうのだそうだ。
     (狩りが出来ないから。)
トラ  :雄のみで占有行動を行う。そこで狩りをし、交尾相手を確保する。
     縄張りの防衛・奪取は命を賭けた闘いとなる。
かくの如く一大スペクタクルなのだが驚いたことに蝶にも、種によって或は発生期間中の
特定の時期によって、この占有行動(らしきもの)を目撃することが出来るのである。
そこであらためて、「蝶の占有行動」を定義したくなるのだが不可能な位難しい。
その理由を述べる。
                《 理由 》
「 蝶は発生期の少なからぬ期間、その発生地に留まっている。そして、そこで絶えず
同種、異種の個体と諍いを起こしている。だから発生地=縄張りとすれば、
全ての蝶は占有行動をとっていることになるが、勿論これは単なる「日常的飛翔」の
範疇である。かといって極狭くとれば、「漏れ」も大きくなるに違いない。
例えば広いエリアを縄張りにしている(らしい)アカタテハやルリタテハ等は
対象外となって不満が残る。
また、縄張り争いなのか、単なる出合い頭の喧嘩なのか、♀♂の駆け引きなのか、
の区別も実際観察してみると難しい。同じ個体が、状況に応じていろいろな行動を
とるからである。(蝶を恰も入力変数で説明出来る函数のように考えている人がいる。
蝶は“解析学”のテーマではない!“ゲームの理論”の素材でもない!)
更に、そのような行動はある程度継続していなければならないが(時間単位、日単位)、
それを確認するための観察は恐ろしい程に辛く難しい。
(単調だし蚊の猛攻を受けるしそもそも何を確かめたら良いのか分からない。) 」

そこで取り敢えず以下のように定義して見る。
           《 定義 》
  a 縄張りのエリアは「人が間近で観察出来る範囲」であること
  b 防衛・奪取は、勝敗の結果が明瞭であること。
    つまり、そのポイントを確保したのはどちらか、が明瞭であること。
  c 上記bの行動が一定時間継続すること。
  d 上記b、cの行動が、(成るべく多くの人に)しばしば目撃・観察されること。

B ヒメウラナミジャノメの占有行動

(どんなに条件を緩めても)我がヒメウラナミジャノメの♂は、条件b項を
満たさないのである。かくの如し。

      《 ヒメウラナミジャノメの振る舞い 》

 フラフラ飛んできた2匹が遭遇する。数秒絡み合うが、すぐにどちらもまた
  フラフラと離れていく。
  或は、静止していた方が近づいてきた方を追い払う。そして静止していた方も、
  その場をフラフラと離れていく。
  或は、初めからお互い全く無視する。
  これは彼らの飛翔の性質:
   《発生地内をフラフラとランダムに飛び回わる。
    境界(外は不適なエリア)に来れば反射行動をとる。》
  に因るのだろう。そのポイントへの執着がまるでない。 
  それらしい行動を目撃したとしても、その後目撃することがない。
  「蝶の行動」との出会いは一期一会、つまり《最初にして最後》のことが
    多いのである。(例えば後述)
  だから、このような目撃例を一般化して語るわけにはいかない。
  勿論、目撃例を見聞きするのは大層楽しいことではあるが、どうして“自然科学の
  論文”にしたがるのだろう?[STAP細胞事件]でも分かるように、自然科学は、他者
  が追試して真偽を確かめられるものでなければならぬ。 

♂同士の争いはかくの如くで、観察も撮影もあったものではない。
♂と♀の争い(=交尾拒否)は別稿「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」で触れた。
♀同士の争いは、他種でも私は未だ目撃したことはない。
(トリバネアゲハは産卵時に♀同士が喧嘩するという記事を読んだことがある。)
かくて占有行動とは全く無縁な蝶になってしまって大いに寂しいのだがやむを得えない。
もっとも、同じエリアを沢山飛んでいるヤマトシジミ、ベニシジミ、イチモンジセセリに
ついても同様で、(上記の基準では)占有行動などまるでない。あるとしたら僥倖による
目撃である。
最後に、上記d項に関連して述べる。
別稿「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」で触れた「山登りするヒメウラナミジャノ
メ」に関する目撃談である。

           《 以下、目撃談 》

小高いその丘の頂上は(蝶道)になっている。しかも、アベリアの群落があるので、
 沢山のアゲハチョウ、クロアゲハ、カラスアゲハが群がって吸蜜している。
 ここに、クロヒカゲ、イチモンジチョウ、ダイミョウセセリが縄張りを張っている。
 アカボシゴマダラも、より高所で縄張りを張っている。だから、彼ら同士は争っている
 が低所の争いには殆ど関係はない。
 ここでは、クロヒカゲの防衛行動が凄まじい。アゲハ類が頭上を飛んでくると、突進し、
 追い回し、追い払うのだ。アゲハ類はなす術もなく逃げていく。
 ここに1匹のヒメウラナミジャノメ♂が迷い込んできた(としか言いようがない)。
 下草付近で10日以上目撃することが出来た。
 或る日、頭上をカラスアゲハ♂が飛んできた。すると、我がヒメは彼に向って
 突進したのである。カラスアゲハはなす術もなく逃げ去った。我がヒメは元のポイント
 に帰還するでもなく、そのまま藪の向う側にフラフラと消えていった。
 この行動は、その後目撃していない。やがてヒメは、この地から姿を消した。 

この場所に立って、いろいろ考えた。  

            《 以下、考えたこと 》

 ・占有行動を走行性で説明する議論があるが、クロヒカゲの行動は走行性では
  説明出来ない。強い“意志”が働いているように見える。

 ・一方、上記のヒメウラナミジャノメの行動は、走行性でしか説明出来ないのではない
  か。つまり、視覚に特異のパターンが入射されたので、機械的に反応したという説明
  である。(この走行性らしき行動は、他の場所でもカラスアゲハ♂について私は目撃し
  ている。)

 ・しかし走行性で(科学的に)説明されるのなら、これまで何度も目撃されていて
  良いのではないか。私は数万回この蝶を観察しているが、この目撃例だけなのだ。
  つまり結局は説明になっていないのだ。だからこのような超例外的事象の目撃は
  大層楽しいけれど、結局は何も語ってくれないのである。

 ・イチモンジチョウ、ダイミョウセセリの占有行動は他の場所でも目撃できるのだが、
  ダイミョウセセリがクロアゲハなどを追い払う光景は見たことがない。
  この場所では特に過激なのである。占有行動は、場所に大いに影響されるようだ。
  つまり占有行動に駆り立てる「環境」があり、その「環境」は、「不思議な力」で
   (一部の)蝶を引き寄せるのだと思いたい。「不思議な力」とは、その環境の
    眼下に見おろす眺望、日陰と日向のバランス、上昇気流、他の種々の気象条件等等。


 ・「蝶道」も縄張りと看做す意見がある。して見るとこの地は占有行動の宝庫なのだが、
  この地を眺めながらつくづく考えた。
  「占有行動を、♀を獲得する為の行動とみる考え」は正しくはないと。
  この地で数年注視しているが、交尾を目撃したことなど一度もない。
  他の蝶道でも注視しているが、やはり一度もない。
  これまでの記憶を辿ってみても、全く印象に残っていない。
  この事については、これまでの私の観察例と合わせて後述したい。

 ・アゲハ類は呆れる程に軟弱である。飛んでいる蝶とダッシュしてきた蝶とでは、後者
  が有利なのは明らかだが、それにしても限度がある。実際、例えば劣勢のアカボシゴ
  マダラも態勢を立て直して反撃している。これは、飛翔の仕方に関係しているのだろ
  うか? つまり、アゲハ類の飛翔は、闘いには向いていない?
  (同サイトの「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ 7 蝶の飛び方)参照)

 ・アゲハ類の飛翔が闘いには向いていないのなら、「蝶道」は縄張りと云えるのか?
  単に、気に行った環境に長逗留しているだけではないのか?
  皇居傍の北の丸公園にも「蝶道」はあるが、そこには年によってモンキアゲハも
  飛来する。滞在日数は1〜2日。姿を消し、やがてお濠沿いを豪快に舞っている姿を
  発見して感激する。モンキアゲハは遠くからでも一目で分かるのが良い。
  かくの如くで、それ程長逗留でもなく、あまり「蝶道」に拘っているようにも
  見えない。そもそも「蝶道」にそれ程深い意味はあるのか?

取り敢えず以上。

C 話題アラカルト(写真集)

残念ながら、占有行動については提示出来るデータも写真もない。(クロヒカゲがアゲハ類
を追い回す写真は、速過ぎて私には全く無理だ。)そこで、占有行動に関する私のこれまで
の見聞は後段に廻し、ここでは蝶の面白い目撃例を写真と共に披露したい。

Cの1 宿命のライバル(ヒメウラナミジャノメとヤマトシジミ)

ヒメ♂とヤマトシジミ♂
  
ヒメウラナミジャノメ♂とヤマトシジミ♂は、しばしばぶつかる。とは云っても、
数秒の絡み合いだけで、すぐ別れていく。このようにどちらも静止して睨みあうのは
珍しい。

ヒメ♀に付き纏うヤマトシジミ♂  ヤマトシジミ♀に付き纏う♂
  
   
どちらも、♂が♀を追いかけて交尾を迫っているようなのだ。勿論♀は無視。
右側の写真では、ヒメウラナミジャノメ♂も最初写っていたのだが、私が近づくと
逃げていった。
かくの如くで、ヒメウラナミジャノメも決しておとなしい蝶ではない。ただ周囲に沢山飛
んでいるベニシジミやイチモンジセセリとの衝突は、(不思議なことに)見たことがない。
ヒメウラナミジャノメはやられたらやり返す方なのだと思う。
それに対して、ヤマトシジミは喧嘩好きである。

Cの2 ヒメジャノメは困り者

サトキマダラヒカゲ♀に付き纏う  ヒカゲチョウ♀に付き纏う
  
   

同じヒメジャノメ♀に付き纏う  ヒメウラナミジャノメ♀に付き纏う
  
   
かくの如くで、ヒメジャノメも見境がない。相手のうんざりしている表情が
目に見える。この写真を見た蝶友が、「ヒメジャノメはラテン系か?」と
“冗談”を云った。ヒメジャノメは大陸由来の蝶だから、“冗談”になるのである。
但しヤマトシジミと違って似たような相手にだけ迫っている。ヤマトシジミは、
全く似ていないベニシジミやウラギンシジミにも迫るのだから話にならない。

ヒメ♂、ヒメジャノメ♀に付き纏う  そのヒメジャノメ♀
  
   
相手がヒメジャノメでも、ヒメウラナミジャノメはやられたらやり返すのである。
(ちょっと離れているので)写真は2葉に分けたが、これは紛れもなくヒメ♂が
付きまとっているのである。

Cの3 ヤマトシジミ♂の戦略
 

a ♂、吸蜜中の♀を発見、    b 茎を昇る 
  その花の下に着地
  
   
 
 c 花に辿りつく         d 念願の♀と対面
  
 

(驚かさないように)花ビラではなくわざわざ下の葉っぱに降りたところが憎い! 
それにしてもヤマトシジミはよくやる!!
当然ながら、♀は猛ダッシュで逃げ去った。私は茫然と佇む♂の写真を撮ろうとした。
あろうことか、♂も猛ダッシュで追いかけていったのである。
 
Cの4 ヤマトシジミ♂、間違う

 錯覚した植物(♀の本物は前掲)
  
  
ヤマトシジミ♂が♀と間違えて近づいていった植物である。
私は、他の蝶でもこのような錯覚をしばしば目撃している。
ヒメウラナミジャノメも似たような植物に接近、触れて確かめる。
ツマグロヒョウモン、キタテハは黄や赤の葉っぱに接近するも、触れない。
キチョウは黄色い紙の切れ端に接近、触れたか否かは不明。
「チョウはなぜ飛ぶか」という有名な本がある。♀探索に関するアゲハチョウのパターン
認識を扱っているのだが(後半は)、このタイトルはちょっと大げさと思うのだ。

Cの5 闘うモンキチョウ♀

 交尾拒否の♀            追尾(白♀が黄♂を追いかける)
  
   
♂が交尾を迫ると、♀はかくの如く腹部を立てて拒否する。
時には空中で追尾が始まる。当然♀が逃げる側と思うが、そうではない。
お互い、追いつ追われつなのである。(モンキチョウは、♀♂が大抵識別できるから
観察しやすい。)一方が離脱して追尾は終了するが、♂からの離脱の方が多い
ような気がする。右側の写真は、♀が追いかけている証拠写真である。

Cの6 慰め合い(?)(ヒメウラナミジャノメ)
                   

    2匹             3秒後 3匹
  


  6秒後 4匹            14秒後 5匹
  


  16秒後 誰もいなくなった(私が近づきすぎて)
  
 

蝶の集団については私もしばしば目撃する。吸水、吸汁、樹液に、訪花・・
写真でなら、大発生、越冬・・
しかしこれらは全て、集まる理由がはっきりしている。ところが上の写真では、集まる理
由が皆目分からないのだ。
全て♂で、翅を閉じたり開いたりしているから、求愛ポーズのような気もする。
私が載せる気になったのは、何となくライオンの若雄を連想したからである。群れから追
放された若雄は放浪の旅を続け、同じ若雄に巡り合い、生活を共にし、団結して(運が良
ければ)縄張りを乗っ取る。上の写真は、若♂同士が巡り会って無聊を託つ姿を連想させ
るのだ。それにしても、なんとも可愛らしい写真だ。
なお、こうした光景を目撃したのはこの時のみである。

Cの7 紳士と無頼漢(ツマグロヒョウモン)

 左の♂、葉上の♀に近づく   ♂、♀にまとわりつく     ♀も飛び始める
   
    
 
以下、丹頂の如くの舞いが続く     舞い・・          舞い・・
  
     
    舞い・・           舞い・・         舞い・・
  
     
 
 ♂が飛び去る(約3分後)        ♀、また一人ぼっち・・ 
  
   
ツマグロヒョウモンこそは、異星からやってきた蝶のように思える。
蝶なぞ全く関心のない近所のおばさんも、この蝶の(長い)名前はしっかり覚えていた。
庭の園芸スミレを喰い荒して困っているらしい。(ヒョウモン類といえば、昔は草原に
出かけていって追いかけた蝶であったのに・・)
行動も破天荒である。
上の写真の如く、♂は優美に交尾をお願いする。天運空しければ静かに去っていく。
ところが、以下のような不埒な振る舞いもするのである。

  ♂、♀を攻めたてる    ♀、腹部を立てて必死に抵抗
  
   
典型的な無頼漢なのである。この後、♀はやっと逃げ出した。♂も後を追い、
二匹とも土手の向うに消えていった。♀はうまく逃げてくれただろうか?
ところが話はこれで終わらない。
別の例で、やはり♀は無頼漢の♂から逃げ回っていた。無事逃げてくれ!と思っていたら
豈図らん、交尾してしまったのである。これはどうしたことだろう?
♀が力尽きたのか、それとも、この大騒ぎは交尾前のプロトコルなのか?
次の写真も凄まじい。

交尾中のペアを2匹の♂が襲う      殆ど格闘
  

ペア、草むらに逃げ込む 2♂、流石に退散
  


いずれにしろこの蝶は破天荒である。
南方の頃からそうだったのか? 北方に進出してきてから変身したのか? ・・

Cの8 あっさりしているヒメウラナミジャノメ 

 交尾を迫られて、♀はフリーズ状態に  ♂、すぐあきらめてその場を離れる
   
    
 
 ♀、フリーズ状態続行      ♀、そろそろと動き出す
  
     
1分後 ♀、もとの生活に戻る    遠くで休んでいる♂
  
     
 
♀はその場でフリーズ状態になる。葉上で、路上で、或はこのように草むらで。
この♂はあっさり離れていったが、傍で佇む♂もいる。ほんのちょっと、或はもう少し
長く。その後、♀はそろそろと動き出す。恰も♂を監視していたように!
♂は数m離れた所で休んでいた。あの♀には何の未練もなさそうであった。

ツマグロヒョウモンとは全く違う。蝶の世界は面白い。

Cの9 紳士から外れるベニシジミ 

 手前は♂、♀は翅を震わせて逃げる。   ♀、逃げる
   
    
 
 ♀、翅を震わせて逃げる      ♀、やっと逃げ切る(1分後)
  
     
 ♀、やれやれ
  
     
 
ベニシジミは、ヒメウラナミジャノメに比して紳士とは云えない。
交尾を迫るベニシジ♂に対して、♀は翅を震わせながら逃げる。(少しは飛ぶけれど)
殆ど草むらを走り回るのである。♂は追いかける。私の観察範囲では♀は全て逃げ切った。
翅を震わせる行動は、イチモンジセセリでも良く見かける。他の蝶は概ね、フリーズ状態
の♀に対して傍でじっと佇んでいる。(長期戦に持ち込む♂もいて、案外これは、闘いなの
かも知れない。)というわけで、ヒメウラナミジャノメのようにあっさりしている蝶が多数
派という訳でもなさそうだ。

Cの10 キチョウとシオヤアブ

 キチョウ♂(下の文とは無関係) キチョウ♀(下の文とは無関係)
   
    
川の畔を散歩していると、キチョウが葉に止まっていた。淡黄色なので♀だと思う。
すると鮮黄色のキチョウ(よって♂)が飛びながら近寄ってきた。すると、♀は体をブル
ブルと震わせたのである。♂はすぐに飛び去った。どう見てもあれは、
“あっちへ行け!”という♀からの信号(=怒声)だったと思う。
だからその後、キチョウに注意を払っている。交尾や♂同士の追尾(=絡み合い)は時々
目撃するのだが(何と云っても数が多いから)、交尾拒否行動は全く目撃していない。
考えてみると、あの“ブルブル信号”が交尾拒否行動なら瞬時に終わる筈だから、
目撃の機会が少ないのも尤もだと思う。
以下に、“ブルブル信号”が交尾拒否行動である例を示す。

 
交尾しながらスズメバチを喰らうシオヤアブ♀
  
     
交尾中のシオヤアブ♀に、別の♂が近づいてきた。すかさず♀はブルブル信号を送ったの
である。すると、♂は直ちに飛び去った。正に鎧袖一触であった。キチョウの場合と全く
同様である。ベニシジミがブルブル信号を送っても全く無視されるのに、キチョウとシオ
ヤアブでは効果覿面というのはどうしたことだろう。
ところで、シオヤアブは猛虫中の猛虫である。私はウェブサイトで、シオヤアブが
オニヤンマ、カマキリ、他のシオヤアブ等を襲っている写真を見ている。
キチョウとこの猛虫が同じというのも・・

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	ティータイム(その1) 「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」
ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ讃歌」
ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」
ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」
ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」
ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」
ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」
ティータイム(その10) 「コムラサキ賛歌」
ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」
ティータイム(その12) 「”お島”ふたたび」
ティータイム(その13) 「オオウラギンヒョウモン考(再び)」
ティータイム(その14) 「謎の蝶 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その16) 「オオウラギンヒョウモン考(三たび)」
ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」
ティータイム(その18) 「微かに姿を顕したクロヒカゲ」
ティータイム(その19) 「不可解な普通種 ヒメジャノメ」
ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活―」
ティータイム(その21) 「オオルリシジミを勉強する」
ティータイム(その22) 「集結時期のヒメアカタテハを総括する」
ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」
ティータイム(その24) 「東京ヘビ紀行(付記 お島追想)」
ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」
ティータイム(その26) 「ヒメアカタテハの越冬と発生回数」
ティータイム(その27) 「鳩山邦夫さんの『環境党宣言』を読む」
ティータイム(その28) 「蝶の山登り」
ティータイム(その29) 「蝶の交尾を考える」
ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」
ティータイム(その31) 「今年(2019年)のクロヒカゲ」
ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」
ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」
ティータイム(その34) 「ヒメアカタテハ、台風で分かったこと」
ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」
ティータイム(その36) 「「蝶道」を勉強する 続き」
ティータイム(その37) 「ミツバチを勉強する」
ティータイム(その38) 「「蝶道」を勉強する  続き其の2」
ティータイム(その39) 「里山の蝶」
ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」
ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」
ティータイム(その42) 「今年(2020年)の報告」
ティータイム(その43) 「徒然なるままに 人物論(寺田寅彦、ロザリンド・フランクリン、木村資生、太田朋子)」


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