今年(2020年)の報告
                         遠藤英實 作 0 初めに 1 ヒメアカタテハ 2 皇居のヒメウラナミジャノメ、ヒメジャノメ 3 (続)進化論(不勉強につき未) 4 寺田寅彦からロザリンド・フランクリン(未) 5 終わりに 0 初めに 今年は新型コロナ騒動で、殆ど自宅に逼塞していた。 それでも、ネットや本(もっぱら古本)があるので、それ程退屈感はなかった。 例えば、チェ・ゲバラの伝記を読んだ。 ロザリンド・フランクリンには、ゲバラの天性の長所がないことに思い当たった。 だから、ワトソン如きに、死後馬鹿にされたのだ。 ロザリンドの伝記を読むと、寺田寅彦博士にたどり着く。 博士は、一般的な印象では夏目漱石の弟子筋というだけだが、 途轍もない物理学者なのである。 博士の研究が、ロザリンドの大発見に繋がったわけだ。 ヒメアカタテハ、ヒメウラナミジャノメの観察について追記する。 「屋下に屋を架すの感、無きにしも非ず」ではあるけれど、全くの駄文というわけでもない。 木村資生博士と太田朋子博士の本及びサイトを読んだ。 高等数学、即ち 「確率微分方程式から偏微分方程式系を導き、分子生物学からの諸データを用いて  進化の道筋を定量的に探る」 という触れ込みであった。 こういう分野は、確率論学者の中でもスター級の学者の研究なのである。 (もっともそういう研究も、現実世界に適用したらただの遊びとなってしまうが。) だから、期待せずチョコっと本を開いてみたら、 凄まじい偏微分方程式系が現れたので本当にびっくりした。 良くあるP(i,,j,k)などを“駆使しているだけ”と、私は思っていたのだ! しかも、御両所は農学部のご出身だという。 つまり、「遊びの世界」に沈潜していれば好いというお方達ではないのだ。 どんな分野にも、凄い人はいる! 私には最早読む能力がないので、難しいところをすっ飛ばしたら 見事に何も残らなかった。そのうち頑張ろう。 最後に、ちょっとした今年の話題を報告する。 1 ヒメアカタテハ ヒメアカタテハの占有行動について付け加える。 @ 去年まで 去年(2019年)の風景    草原(手前)と自動車教習所(奥)との間が繁みで仕切られ、 草原(手前)側に4本の樹木があった。 樹木の種名は私に不明で、飛んできた種が勝手に育っていったらしい。 最も右側の樹木が彼らのターゲットで、時期・時刻には必ず飛来して、 バトルを繰り広げる。 2番目の樹木にも飛来するが、渋々という感じで 1番目の樹木を、隙あらば、と狙っている。 3.、4番目の樹木には全く関心がない。 樹木に飛来するといっても、樹木そのものに止まるではない。 樹木の根本近くの草地である。 草地に止まる           バトル 草地を占有し、襲ってきた仲間を撃退する。 これは今までにも報告済みである。 もっとも、常にバトルを繰り広げるわけではない。 仲良し(か? 隙を狙ってか?) 1匹が草地を占有していた。多分まどろんでいる。 もう1匹がそっと舞い降りて、そろそろと占有者に近づいた。 2匹並んでいるところが、何とも云えず可愛い。 3匹目が頭上に現れた。1匹目が、そして2匹目も気がついて飛び立ち 彼方に消えていった。 しばらくして、1匹(多分最初の)が戻ってきた。 最初の1匹目と2匹目の関係がちょっと不可解なのである。 喧嘩ばかりしているわけではない? 多分2匹目は、仲間と一緒に微睡みたかったのではなかろうか? ヒメアカタテハのこういう事例は以前にも報告している。 クロヒカゲでも報告した。ルリタテハの“仲良し”は未だに未発見。 A 今年は? 今年(2020年)伐採        4番目の樹 (去年の境界写真と比べてみればわかるが)4本の樹木のうち、 右側の3本が伐採されていた。(多分教習所によって。) 4番目の樹は広場側にあるので、教習所の管轄外なのだろう。 (もっとも、この樹はもともと占有には関係はなかったが。) 以後、この場所でのバトルはなくなった。 樹木がなくなっただけで、草地はそのままなのに!(右側の写真) もう1か所の樹木       路上の占有者        壁に張り付いた占有者 実はもう1ヶ所、占有目印の樹木がある。 ここでは今年も、ダイナミックにバトルが行われた。 もっとも、(占有とは関係がなさそうだが)他にも彼らの好みの場所というのはある。 上下遊歩道を繋ぐ石段    補強用ブロック     ――>   拡大、4匹がいる ブロック道          歩道 こういった場所が彼らのお好みの場所である。 とはいっても、戦闘によって縄張りを主張するわけではない。極、おとなしいのである。 そして、時間的、場所的に長く留まっているわけでもない。 然らば、あの目印の樹木は何なのだ? どうして、目印になるのだ! B まとめ 樹木一般が、ヒメアカタテハの占有行動のトリガーとなるわけではなさそうだ。 広いエリアの、この2か所のみで過激な占有行動がみられるのである。 そもそも他の場所での、トリガーとなっている樹木を私は見たことがない。 そして、モンシロチョウの撃退、イチモンジセセリとのバトルも このトリガー樹木の近辺なのである。 どうみてもこのトリガー樹木が、かれらの闘争意欲を駆り立てているようなのだ。 彼らは毎年、(まだ見たこともない)このトリガー樹木に、 何を手掛かりに集まってくるのか? 視覚か? 嗅覚か? 関係があるのかどうかわからないが、ミツバチの交尾場所の謎がある。 ミツバチの女王候補とオスバチが、ある近隣の地点に集結して交尾をする。 彼らにとっては、生まれて初めての場所である。   (交尾場所は、高さ20〜40mの場所、高い建物のある場所、などと喧しいが   私は写真(本、サイトで)を全く見たことがない。   場所(位置)が分かっているのなら、望遠レンズで簡単に撮れそうなものを?) ミツバチにとって(或いはサケもウナギの回帰も)種の維持に係わり、重要である。 ヒメアカタテハのような“不要不急の行動”ではないのだ! だから、大勢の人が研究しているのだそうだ。 サケが回帰してくるのは、川の匂いと天体観測を駆使してだって! ウナギは天体観測によってだって! 本当かな!?  ミツバチもヒメアカタテハも、前二者と違ってスケールは小さくなるが 観察者には、どれも途轍もなく難しい。 2 皇居のヒメウラナミジャノメ、ヒメジャノメ 以前、「皇居の蝶類相(2009?2013)国立科博専報」国立科博専報を紹介したが、 ヒメウラナミジャノメ、ヒメジャノメの項が気になった。 (私には関心のある蝶だから!) 報告によれば、以下となる。 ほぼ同じ頃私が数えたヒメウラナミジャノメの個体数を示す。 つまり、前段の皇居のデータは圧倒的に少ないのである。 そこで今年、コロナ禍をかい潜って北の丸公園でカウントしてみた。 北の丸公園の風景 北の丸公園のヒメウラナミジャノメ、ヒメジャノメの分布の中心のエリアは コロナ禍の今年は草刈りをせず、従ってかくの如く雑草が繁茂しているのだが、 私のドラスチックなカウントミスはなかろうと思う。 かくて、論文の皇居データ報告は異様に少ないのが分かる。 (著者連のカント哲学ならぬカウント哲学が分からない!) 報告済みの小石川植物園サイトの管理者のように、 息長く観察を続けてくれれば大いに参考になるのだが、 先生方のチョコっとしたこの報告では、 いかにも “後は野となれ、山となれ!” ではないか。 三軒茶屋(世田谷区)の駅近くでも、私はヒメジャノメを(毎日とは云わないが)見かける。 確かに、ヒメジャノメには彷徨性があるから、あちこち彷徨っていても可笑しくはないが、 それにしても、あの広い広い皇居にヒメジャノメ最多2匹/日だって! 勘弁してくれ! 「成虫の栄養補給は、樹液、腐果だから個体数は多くはならない」なる主張があるけれど、 それではこの狭い狭い北の丸公園の一部エリアのデータは何なのだ! (あまり前段と関係はないが)私はヒメウラナミジャノメに関して 皇居と北の丸公園は当初ソース(source)とシンク( sink)の関係と思っていた。 が、違うようだ。 もしこのような関係があるのなら、北の丸公園内でのヒメウラナミジャノメの移動は 千鳥ヶ淵側から清水門側へと見られなければならぬ。 そのような移動は全く見られない。 むしろ、清水門側の草むらで発生しているのである。 都心の大緑地では姿を消してしまったのに、 どうしてこんな貧弱な公園の一部エリアに発生しているのだろう? 園の係官に訊ねたところでは、  「この草むらは、子ども達の自然観察のフィールドとなっている。   だから、草刈りも一斉に行うのではなく、時期を分けて行う。   日なた、日陰のバランスも配慮している」 とのこと。 確かに、昭和天皇からの伝統、叡智と思うけれど、それだけなのだろうか? それだけなら、都内の大緑地の担当者や先生方にも考えつくだろう。 先生方、一体普段何をしているのだ? くだらないことはしていない! 難しい研究をしているだって? 嘘でしょう! ついで 去年の或る日 ベニイトトンボの交尾 東御苑を彷徨っていてベニイトトンボの交尾を目撃した。 ベニイトトンボが稀種なら、雌はもっと稀、交尾はもっともっと稀ではなかろうか? かくて、私にだって撮れる! もっとも蝶友に、“犬も歩けば棒に当たる!”と云われた。 3 (続)進化論(不勉強につき未) 4 寺田寅彦からロザリンド・フランクリン(未) 5 終わりに @ ツマグロキチョウ 以前サイト http://www9.plala.or.jp/tokyoinsects/kansatu-nikki-old.html 掲載の 小石川植物園のツマグロキチョウを紹介した。 私は他サイトも探してみたら、以下があった。     https://www.konchukan.net/pdf/kiberihamushi/Vol38_1/kiberihamushi_38_1_6-12.pdf    兵庫県におけるツマグロキチョウの大発生について(2015)近藤 伸一 各位には本稿を読んで頂くとして、この蝶は食草(カワラケツメイ)の多寡に敏感であるらしい。 前サイトでもすでに報告されているが、私も小石川植物園でカワラケツメイを確認した。 2020・8・6 小石川植物園 著者が目撃したツマグロキチョウは、この食草に卵等が付着していたのではなかろうか? それなら、都心でも繁殖可能のような気がしてきた。 鳩山邦夫さんなら、早速実行したと思う。 已んぬる哉! A ホシミスジ 2020・9・26 多摩川 ホシミスジ  同 コミスジ ホシミスジはこの地多摩川では定着したようだ。(ユキヤナギはふんだんにある。) コミスジとはいつも一緒だが、お互い無視しているのが可笑しい。 (そう云えば生田緑地では、路上でのクロヒカゲとヒカゲチョウも お互い全く無視していた。自然になのか、意地を張っているのか分からない。) そのうち、ホシミスジが主流派になるのだろうか? そう云えば盛岡市でも、場所によってはホシミスジしかいない。 ツマグロキチョウといい、どうも凡種、稀種の区別が段々判然としなくなってきた。 B アカボシゴマダラ 今更触れるまでもない程、都心周辺(関東一円)で数を増やしている。 奄美大島周辺と関東一円とでは別亜種で、奄美では保護されているらしい。 そこで疑問?   ・奄美と関東との遺伝子を比較すると、    種程の違いはないが、亜種程度の違いはあるということか?    検証されているのか?   ・「亜種が違う=同じ場所に住まない」との主張があるが、    この性質と遺伝子の違いとはどう関係するのか?   ・両者の不稔性はどうなっているのか? 疑問はつきないのである。 素朴な観察と難しい分析(=遺伝子解析)が一緒くたになっていて気持ちが悪い。 それに用語はポンポン飛び出すけれど、先生方は本当に確かめているのかな〜 それに乗じて、アマがすぐ提灯記事を書くのも気に食わない! C (あまり関係はないが)モズ モズ 雄               可愛い! 間近でモズを撮影できた。 モズは速贄が喧伝されていて、大方には敬遠されているけれど雌雄共に可愛い。 ジョウビタキは可愛いのは雌だけ。(<――本当に可愛い! 野外で目撃すると感激する。) メジロが会社に飛び込んできて必死に逃げようとしていた。 こちらも駆け回ってやっと逃がしてやったけれど、何の挨拶もせずサット飛び去った。 動物園に命を救われたアザラシが海に返された時、 名残惜しそうに去っていった光景をYouTubeで見た。 他の動物でも、このような感激シーンを良く見る。 あれは本当かな〜 ティータイム(その1) 「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」
ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ讃歌」
ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」
ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」
ティータイム(その6) 「蝶の占有行動と関連話題」
ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」
ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」
ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」
ティータイム(その10) 「コムラサキ賛歌」
ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」
ティータイム(その12) 「”お島”ふたたび」
ティータイム(その13) 「オオウラギンヒョウモン考(再び)」
ティータイム(その14) 「謎の蝶 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その16) 「オオウラギンヒョウモン考(三たび)」
ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」
ティータイム(その18) 「微かに姿を顕したクロヒカゲ」
ティータイム(その19) 「不可解な普通種 ヒメジャノメ」
ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活― 」
ティータイム(その21) 「オオルリシジミを勉強する」
ティータイム(その22) 「集結時期のヒメアカタテハを総括する」
ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」
ティータイム(その24) 「東京ヘビ紀行(付記 お島追想)」
ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」
ティータイム(その26) 「ヒメアカタテハの越冬と発生回数」
ティータイム(その27) 「鳩山邦夫さんの『環境党宣言』を読む」
ティータイム(その28) 「蝶の山登り」
ティータイム(その29) 「蝶の交尾を考える」
ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」
ティータイム(その31) 「今年(2019年)のクロヒカゲ」
ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」
ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」
ティータイム(その34) 「ヒメアカタテハ、台風で分かったこと」
ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」
ティータイム(その36) 「「蝶道」を勉強する 続き」
ティータイム(その37) 「ミツバチを勉強する」
ティータイム(その38) 「「蝶道」を勉強する  続き其の2」
ティータイム(その39) 「里山の蝶」
ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」
ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」

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