集結時期のヒメアカタテハを総括する

                遠藤英實 作  目次 0 始めに 1 2016、2017年の個体数 2 発生回数 3 集結時期での行動    3の@ 交尾    3のA 交尾拒否    3のB 産卵(?)    3のC 仲良し    3のD 穏やかな場所取り(あっち行け!)    3のE 熾烈な占有行動(撃退)    3のF 睡眠    3のG 遊びか    3のH 錯覚植物(或いは誘因モデル) 4 集結時期以外での行動    4の@ ヒメアカタテハの竜巻バトル    4のA アカタテハの竜巻バトル 5 雌雄淘汰説外伝 6 蝶と鳥との関係 7 ヒメアカタテハと他蝶との関係 8 終わりに 0 はじめに 映画「アラビアのロレンス」だったと思う。 大砂漠に時々、砂漠の民がけし粒のように現れては、すぐ消える。 そのうち何がきっかけだったか、砂漠の民はどんどん増えて行って やがてリーダー(アンソニー・クインだったか?)が登場する。 当時、「類的存在」という言葉を覚えたてだったが、 どういうわけか、このシーンと結びついた。 「人間は集団になって初めて人間らしい生活を送れる」 と、知ったかぶりした。 その後40〜50年経って、また蝶を数えたリ遊んだりし始めたが、 どういうわけか、このシーンが再び現れだした。 つまり、  「孤立している時に見ている蝶は、   一体何をしているのか皆目分からないのだが、段々集結し始め、   相互に依存・反発しつつ仲間を作っていくと   私(=人間)にも、彼らの生活が少しずつ見えてきた。」 からである。 要するに、  「人は、人間に対してもっともらしい理屈(=哲学)をつけて自慢し   蝶には愚にもつかない法則を捻り出してやはり自慢するけれど、   実は、人も蝶もたいして変わらないのではないか。」 と思うようになったのである。 1 2016、2017年の個体数 2017年も個体数を数えた。観察域は前年(2016年)と同じである。 両年で、増減は歩調を揃えているのが分かる。 だから、前回触れたようなボヘミアン(風来坊)ではなく、 外国飛来説も撤回した方が良さそうだ。 この蝶の外国での大移動は昔から報告されていたが、 その理由は   “天敵から逃れるために” だって! どんな蝶にも(どんな生物にも)天敵はいるではないか!! 何故ヒメアカタテハにだけ、そのような理由をくっつけるのか? 天敵説は、そうかも知れないしそうでないかも知れないが、 いずれにしろそれを確かめるためには 気の遠くなるような追跡調査が必要な筈だ。 彼の地の大移動にしたって、毎年あるわけではないらしい。 然らば大移動のない年は、天敵はいなかったのか? 2 発生回数 上記の私の個体数データからは依然として発生回数は分からない。 それにしても、多くの図鑑で3〜4回/年としているのが不可解である。 ベテランのウェブサイトを見ても 編集者は「成虫観察時期 5〜11月」とのみ記している。   http://butterflyandsky.fan.coocan.jp/shubetsu/tateha/himeaka/himeaka.html 勿論、私には到底推測出来ない。 3 集結時期での行動 表から分かるように、9月後半から10月が最盛期となる。 この観察域内の3〜4ヶ所に ヨモギの群落(大群落ではない、小群落の集合)があって、 そこを目指して、彼らは集まってくるようだ。 ヒメアカタテハは一様に分布しているわけではなく、 多い時で1ヶ所に20匹以上がこの小群落間を離合集散する。 この小群落間移動のメカニズムは分からない。 (例えば、30匹以上集まっていた群れが2〜3日で0匹になってしまうのである。) 幼虫           巣 そしてこの集結場所で、 彼らはいろいろな行動を私に見せてくれたのである。 次項以下に、いろいろな行動を紹介する。   3の@ 交尾 交尾前プロトコル −>   交尾――>睡眠へ 交尾前プロトコル −>   交尾 交尾は2年間で計7回目撃した。 因みに、ヒメウラナミジャノメはH24〜H26に 4ヶ所で計93回目撃している。 分母を考慮すれば、ヒメアカタテハは交尾を多く見せてくれると云える。 (クロヒカゲは3年間で0回) 以下のサイトがある。 https://tefteff.exblog.jp/i97/ 秩父の蝶 この編集者は驚いたことに、あのクロヒカゲを 2011〜2017年迄(つまり今に至るまで) 延々と観察し続けているのである。 大方の人には魅力のない蝶だろうが、 必見の幼虫の写真が数多くある。 ところで、氏も交尾のシーンは目撃されていないようだ。 超ベテランの氏でさえ目撃されていないのだから やはりクロヒカゲは、Aクラスの「謎の蝶」なのである。 以下のサイトに、クロヒカゲと難物アカタテハの 交尾写真がある。(やはり、インターネットは強力だ!)  http://futao2.blog135.fc2.com/blog-entry-997.html  http://ze-ph.sakura.ne.jp/blog_old/zeph.exblog.jp/00467_00000.html 3のA 交尾拒否        交尾拒否          交尾拒否          交尾拒否           交尾前プロトコル→  交尾へ 交尾拒否ではいろいろなパターンを見せてくれる。マナーなんぞなさそうだ。 要するに、嫌なものは嫌! なのである。 3のB 産卵(?) 近づいたら逃げていった。 だから卵を確認したわけではないが、多分産卵直前だったと思う。 というのも、ヨモギにしがみついているヒメアカタテハは 私はこれ以外に目撃していないのである。 (それに、卵から追いかけていると肝心の成蝶の行動が観察出来ない。) 目撃していないのは、多分草刈りも影響していると思う。 この場所は頻繁に草刈りが行われ、しかも場所をずらしながら行うので 結局、草刈りの頻度は私には分からない。産卵との関係も分からない。 但し、「場所をずらしながらの草刈り」は、 生態系の保存に甚だ有効なのだそうだ。 3のC 仲良し                    値千金の写真1        値千金の写真2 蝶とて、仲がいい時も喧嘩している時もある。 3のD 穏やかな場所取り(あっち行け!)                対モンシロチョウ この50m長のコンクリートの土手が、ヒメアカタテハのお気に入りである。 多い時で20匹以上が屯する。 当然、他蝶とバッティングすることになるが、 その時は追い払うのである。 “あっち行け!”  これは、おおげさに“占有行動”と云わなくても良いだろう。 瞬間的に終了するから写真は撮れなかったが、 対モンシロチョウは、どうにか撮れた。 3のE 熾烈な占有行動(撃退) 然らば、ヒメアカタテハは占有行動を行わないのか? 行うのである。 前述のコンクリートブロックの両端の樹木に彼らは執着する。 樹木というよりは、傍の地面である。   縄張り1 (側面から)      縄張り1 (上部から) 縄張り2 私の観察した限りでは、広い観察領域で この2か所のみが占有領域であった。 つまり、際立って執着する場所(ポイント)が、この2か所以外にはないのである。 たまにいがみ合っているポイントがあっても、 そのポイントを離れ20〜30分で戻って来るとどちらも姿を消している。 そのポイントは、単に一過性のいがみ合いの場所だったのである。 コンクリートブロック道は他に幾つもあるし、樹木はいうまでもない。 だから彼らを引き付けているのは、この両者の位置関係なのだろう。 彼らの眼には、この光景がどのように写っているのだろう? (視野の広さと動体視力では、人は及ぶべくもないらしいが・・)  樹木前の地面(1匹、或いは離れて2匹)   執拗な追尾         大空に消える               (どちらかは戻ってくるが・・) この行動の特徴は、  ・配偶行動には関係ないようだ。場所取りである。  ・占有者の方が侵入者より概ね強い   夕方から日没迄では、占有者の圧勝である。  (これは写真照合で確認した。)  ・次の日の占有者は、明らかに入れ替わっている。  (これも写真照合で確認した。)  ・日中、占有者が不在の時がある。   直ぐ次の占有者が登場するのだが、   どうも入れ替わっているようなのだ。   (写真照合して、1日に10個体以上登場していた日もあったような気がする。)  ・矮小個体、ボロの個体も見かけるが、   彼らは明らかに占有者にはなっていない。   簡単に一蹴されるのである。  ・昆虫の世界でも、  「喧嘩ばかりしている個体は無敵になっていく。」   という報告がある。(<――例えばカブトムシ)   つまり、   “筋力が全てではない、喧嘩のコツがある”   ということだ。   実際私は、モンシロチョウがアオスジアゲハを追い払うのを   目撃したことがある。 3のF 睡眠   かくの如く、相当暗くなってからの睡眠である。 この個体は、「3のEの 熾烈な占有行動」を行っていて その後睡眠に入った。 この時刻では、他の蝶は(ヒメアカタテハを含めて) 全て活動を停止していた。 私は、睡眠中のツマグロヒョウモンの廻りを活発に飛んでいる 他のツマグロヒョウモンを目撃したこともある。 蝶といえども、照度とやらで、その行動を完全に規定されているわけではないのだ。 3のG 遊びか       「散歩しながら動物行動学を学ぶ --- 蝶の知的生活」 で既に報告しているが、 ヒメアカタテハとイチモンジセセリは遊んでいるのだと、私は思う。  http://www5f.biglobe.ne.jp/~ssato/src/info_teatime20.html 3のH 錯覚物(或いは誘因モデル) 嘗てヒメウラナミジャノメを観察していた時、 雄は、(多分雌と間違えて)しばしば紛らわしい植物に引き寄せられていた。 そこでヒメアカタテハにも注意していたが、結局目撃出来なかった。 錯覚しないのかな? ヒメウラナミジャノメでは、下の写真の如く頻繁に目撃出来る。 その際、錯覚植物に前足で触れている(接触覚)ように見えた。   ヒメウラナミジャノメの例 ついでに他種も紹介する。 (他種では、植物に触れずに途中Uターンする。)   モンシロチョウ錯覚物 確かに錯覚したのである。それなら例の、「紫外線理論」はどうなるのだろう?  つまり、この白い物体は、メスの翅のように紫外線を反射しているのだろうか?     キタテハ錯覚       ツマグロヒョウモン錯覚  キチョウ錯覚 ついでに、アゲハチョウ錯覚 (アカボシゴマダラに付き纏っていたが、私が近づいたら逃げていった。)                              ―――――――――――――――――――――――――――――――――― 上記に関連してD・マグヌス教授の実験について述べる。 マグヌス教授のミドリヒョウモンの実験は有名である。   【工夫を凝らしたモデル(紋様、及び開閉の動き)を作って1ヶ所におき、    通過個体への誘因度(%)を調べる】 のである。 モデルによっては、大幅な誘因度アップが実現出来て、 国際昆虫学会で大喝采を浴びたとのことだ。(<――日高敏隆氏 季刊アニマ 76) ところが、私の観察のヒメウラナミジャノメでは、 廻りに他個体も次々に飛んでくるのだが、 他個体は、最初の個体の錯覚植物に誘引されないのである。全く無視する。 つまり、再現性=0なのである。 これはどうしたことか? ――――――――――――――――――――――――――――――――――― そこで、ヒメウラナミジャノメの配偶行動について 私の観察を纏めてみる。 約10年間で観察場所は最大4ヶ所であるが、 数値はかなり雑であり、観察場所、期間も決まってはいない。  交尾直前   ・空中で雌雄が一瞬絡み合う。ほんの一瞬である。   (10年間で3例目撃したように思うが、いずれも撮影は不可。)   ・上記のうち1例では、雌雄直ちに葉上に止まり直ちに交尾。    撮影成功。他の2例では、交尾後から撮影。   ・交尾前プロトコルは一切ないようだ。  交尾   ・H24〜H26に4ヶ所で計93回目撃している。    交尾時間は、18分〜2H超  交尾拒否   ・雌による交尾拒否である。    交尾よりも多数回目撃している。(200〜300回か)  雄同士の牽制   ・互いに接近するとやや牽制し合い、直ぐ離れる。    すれ違い時の行動だからカウントも難しい。   ・そのポイントに執着するわけではないから、占有行動とは到底言えない。  錯覚による誘因   ・交尾よりは少ない。50回位か?    交尾拒否は長くても1〜2分、錯覚例は瞬間的である。    交尾は、2H超続く場合もあるのだから、どうしても目撃回数は多くなる。   ・それにしても、再現性=0には吃驚した。  産卵   ・雌の「産卵らしき行動」は、頻繁に目撃するが、    どういうわけか産卵に結びつかないのである。(産卵は10数例)    雌は何か思案しているようなのだ。(産むべきか?産まざるべきか?)  纏め    雌による交尾拒否が多い。    雌にとっては、交尾よりも交尾拒否(即ち産卵へ)が重要なのだろう。    交尾は雌にとっては、手近な所に雄は沢山いるのだから、    最初の1回は容易な作業に違いない。    (多分)2回目以降は、ひたすら雄から逃げ回っていて    まるで雌雄間の闘いである。    (ヒメウラナミジャノメは何回交尾するのか分からないが・・)    《雄にとっての、理想的な雌の姿》の解明に、マグヌス氏は奮闘したようだが、    雌にとっては、腹立たしい“研究”ではなかったろうか?    雌にとっては《屈辱の姿》に過ぎない。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 今私が、ヒメウラナミジャノメのモデルを作り、 このモデルを、私の前述の観察の舞台(=実戦の場)で 活用しょうとする。  ・各フェーズで配置すべき個数? 場所?  ・そもそも、式を使いたくなるような行動   (つまり或るルールに則ったと思しき行動)を   彼らは見せてくれるのか?  ・雌側の願望・選択をどのようにして捉えるか?   (変化しているのである!) 実験する前から想像できるが、 《木に竹を接ぐ》とはこのことだ。 現場に立てば(立つ前から)、マグヌス氏の実験なんぞ、 単なる遊びであることは想像出来る。 ミドリヒョウモンもアゲハチョウも多分同じだ。 雄たちは野外では、何か彼らには目立つ特徴を有する雌だけを、 集中的に追い回しているわけではなかろう。 そんなことをしていたら、大多数の雄も雌もあぶれてしまう。 雌にしても、雄の期待に応えようと自ら装いを変える努力に 刻苦勉励しているわけではなかろう。雌は闘っているのである。 或る範囲内で(失敗・成功を考えず)万遍なく追いかけた方が、 全体としては、種の維持に有利なのだろう。 標準から大きく外れていても頻繁に追いかければ 失敗する確率は大きいだろうが、成功回数は増える。(疲労は増える) 標準から小さく外れているものだけを狙えば 失敗する確率は小さいだろうが、成功回数も増えない。(疲労もしない) 天候、疲労度、欲求度を考慮して自然に振舞っているに違いない。 結局神が与え給うた計らいによって 落ち着くべきところに落ち着き、 何千万年にも渡って子孫を残してこられたのだと思う。        生き物についての実験など、所詮遊びだと思う。 実験室を小さく設定すればする程、もっともらしい“法則”は出来上がる。 (例えば、自分の家近くのどぶ池、或いは庭の笹薮。) ところが何にでもその反動はあって、 場所をちょっと変えれば、その“法則”もドラスティックに変わる。 例えば万有引力定数やアボガドロ定数が普遍であることとは大違いなのである。 これでは自然科学とは云えまい。 最初から、(自分の金と暇で)遊びと思ってやれば、楽しくなる。 4 集結時期以外での行動 集結時期以外での行動(つまり9月中旬頃までの行動)について紹介する。 4の@ ヒメアカタテハの竜巻バトル 路上に静止          竜巻的上昇 2016・8・5の観察報告である。 この日は広い観察域に計4匹で、まだ集結していない。 1匹が路上に止まっていた。 するともう1匹が現れ、両者激しく絡み合いながら上昇し やがて樹上に消えていった。 すぐ1匹が現れた。やがてもう1匹が現れ 同じことが3度繰り返されたが、 (多分人通りのせいもあって)、やがて2匹とも姿を消した。 この場所は、これ以前もこれ以後も、戦場にはなっていない。 だから、これは場所取りではない。 羽化したての雄は気が荒い。 雌を求めて激しく飛び回る。 だから、これはライバル打倒の闘いであり、 即ち配偶行動であると思う。 “雌か雄かを視認し・・”などと呑気なことを 考えているわけではなかろう。 雌か雄かは、少なくとも初回のみで分かる! これこそ、雄同士の闘いだ。 4のA アカタテハの竜巻バトル 林中のアカタテハ ついでに、アカタテハの竜巻バトルについて述べる。 場所を変えて生田緑地での観察である。 生田緑地のアカタテハは珍しい。年1、2回目撃出来るかどうか。 2016・07・18、ヒメアカタテハと同じような竜巻バトルを目撃した。 樹林内の遊歩道に止まっている雄を、他の雄が襲撃してくる。 (多分どちらも雄) アカタテハは遊歩道の、わずかに日が差す位置に静止しているのだが、 それは微小面積で、そこから空は殆ど見えないのである。 当然ライバルも、飛翔中の大空から彼を視認出来ない筈なのだが、 驚いたことに、それでも見つけ出して襲ってくるのだ。 「匂い物質に引き寄せられて」としか考えられない。 そう云えば、広い野川流域で、 ただ1匹樹液を吸っているアカタテハを目撃したことがある。 当然、匂いに惹かれて ということだろう。 「密探索」だけではなく、「疎探索」においても 「匂い」は強力な武器になっているに違いない。 (なお、肝心のバトルについては、すぐ樹冠に姿を消すから撮影出来なかった。) 5 雌雄淘汰説外伝 雌雄淘汰説とは、 「最終的には、雌が立派な雄を選んでいる」 というダーウインの説である。   雄、雌を追い回す   雌、逃げていく ヒメアカタテハの配偶行動を目撃した。 後ろの雄は、矮小個体である。 雄は執拗に交尾をせまるのだが、雌は逃げ回る。 約3分後、雌は土手の上に逃げ去り、雄も追いかけていった。 多分不首尾だったろう。 雌は矮小な雄を嫌ったのだろうか? もし交尾していたら、ダーウイン説への反証になったのだが・・、   ヒメアカタテハとキタテハ ヒメアカタテハはボロ ヒメアカタテハがキタテハに交尾を迫っている。 (これは珍しい写真である。) 9分後キタテハは逃げ出し、ヒメアカタテハは追いかけていった。 キタテハは相当嫌がっていた。 写真に見るように、ヒメアカタテハはボロである。 ボロだから雌に相手にされず、 仕方なくキタテハに迫ったのだろうか? 当然不首尾であるから、ダーウイン説の反証にはならないのだが・・ 6 蝶と鳥との関係 この地では、コムラサキと、ツバメ及びカラスとの遭遇・争いは目撃されるが 他の蝶と鳥との遭遇・争いは一切目撃できなかった。 因みにこの地の他のタテハチョウとは、   ヒメアカタテハ、キタテハ、アカボシゴマダラ、ツマグロヒョウモン   ルリタテハ、アカタテハ、 である。 蝶の飛び交っている場所に鳥はどんどん進出しているのだが 争いはないのである。 蝶が警戒しているのか、お互い無視しているのか? いずれにしろ、「鳥は成蝶の天敵」説は要検討である。 つまり、《母集団、サンプル集合、サンプリング》によって、 どんな結論も出そうなのである。 7 ヒメアカタテハと他蝶との関係 ヒメアカタテハと他のタテハチョウとの付き合い方も面白い。 対キタテハでは、多少のトラブルはある。 休んでいるヒメアカタテハの近くにキタテハが近づいていって 追い払われるのである。 とは云っても勿論、両者不倶戴天というわけではなさそうだ。 キタテハは付き合えば付き合う程、 おっとりした性格のように思えてくる。 駄蝶などと軽蔑すまい。 対アカボシゴマダラ、対コムラサキでは、 互いに巧妙にトラブルを回避しているようだ。 互いに離れたところで視認して、 以後双方が近づかないよう配慮しているように思える。 縄張り争いとは、全く無縁のようだ。 この地では、ツマグロヒョウモンは “異星からやってきた遊び人”のようには見えない。 極く真面目な“お隣さん”のように思える。 とは言っても、やはり油断のならない蝶かも知れない。 対ルリタテハ、対アカタテハこそは謎である。 気の強さ弱さの問題ではなく、 互いに“限りなく透明な存在”と見做しているように思えるのだ。 8 終わりに ヒメアカタテハ成蝶の行動を観察した。 ほんの一部ではあるけれど、分かったこともある。 例えば、  「蝶は、喧嘩と性にあけくれている、つまり   雄が縄張りを作って、他の雄は追い払い、雌なら追いかける   ことをひたすら繰り返している。」 わけではない。 こういう馬鹿げた観察(=論文)に拝跪してはなるまい。 ヒメアカタテハの個体数の変化を、 孤独相、群生相と名付けたらクレームがつくだろうから、 孤立モード、集結モードと名付けてみる。 集結モードでは、彼らの生き方をある程度観察できたように思うが、 孤立モードでは依然として全く謎である。 そして、これからも私には謎のままのような気がする・・ ティータイム(その1) 「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」
ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ讃歌」
ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」
ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」
ティータイム(その6) 「蝶の占有行動と関連話題」
ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」
ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」
ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」
ティータイム(その10) 「コムラサキ賛歌」
ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」
ティータイム(その12) 「”お島”ふたたび」
ティータイム(その13) 「オオウラギンヒョウモン考(再び)」
ティータイム(その14) 「謎の蝶 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その16) 「オオウラギンヒョウモン考(三たび)」
ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」
ティータイム(その18) 「微かに姿を顕したクロヒカゲ」
ティータイム(その19) 「不可解な普通種 ヒメジャノメ」
ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活―」
ティータイム(その21) 「オオルリシジミを勉強する」
ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」
ティータイム(その24) 「東京ヘビ紀行(付記 お島追想)」
ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」
ティータイム(その26) 「ヒメアカタテハの越冬と発生回数」
ティータイム(その27) 「鳩山邦夫さんの『環境党宣言』を読む」
ティータイム(その28) 「蝶の山登り」
ティータイム(その29) 「蝶の交尾を考える」
ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」
ティータイム(その31) 「今年(2019年)のクロヒカゲ」
ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」
ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」
ティータイム(その34) 「ヒメアカタテハ、台風で分かったこと」
ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」
ティータイム(その36) 「「蝶道」を勉強する 続き」
ティータイム(その37) 「ミツバチを勉強する」
ティータイム(その38) 「「蝶道」を勉強する  続き其の2」
ティータイム(その39) 「里山の蝶」
ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」
ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」
ティータイム(その42) 「今年(2020年)の報告」
ティータイム(その43) 「徒然なるままに 人物論(寺田寅彦、ロザリンド・フランクリン、木村資生、太田朋子)」


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