東京ヘビ紀行(付記 お島追想)

                        遠藤英實 作



 目次 
 0  始めに
 1  本土産ヘビの基礎知識 
 2  各ヘビの思い出
  @ アオダイショウ
  A シマヘビ(付記 お島追想)
  B ジムグリ
  C ヒバカリ
  D マムシ
  E ヤマカガシ
  FGタカチホヘビ、シロマダラ
 3  終わりに(進化論を勉強する)




0 始めに

良く遊びに行く多摩川の遊歩道にこのような看板が4〜5ヶ所に出ていた。
   
    
  「マムシ出没注意 国土庁」

私はこの地に十年以上遊びにきているが、マムシに遭遇したことはない。
そして、多分いない! 
その根拠は、
  ・この地で、ヒメウラナミジャノメを数年カウントしたことがある。
   林内や草むらに潜り込んで隅々まで数えあげた(積りだ)けれど、
   一度も遭遇したことはない。
  ・マムシには、敏捷に姿を隠す能力はない。
   自分の毒に自信があるのか、行動が鈍いのである。
  ・ヘビに精通していない人は、見たことのないジムグリなどを
   マムシと間違えるかも知れない。
  ・アオダイショウやシマヘビなども、幼蛇は親と大分変っているので
   マムシと間違えるかも知れない。
  ・マムシやヤマカガシの咬害はニュースになり易いので注意していたが、
   それらしいマスコミ報道はなかった。
   (マスコミはシマヘビをニシキヘビと伝える位だから、あまり当てにはならないけれど・・)

以上が、「いない」と主張する所以なのだが、国土庁の看板となるとその影響は小さくはない。
この地は、子ども達の自然観察の場であり、
ボランティアによる丁寧な保全作業がなされていたのだが、その作業が放棄されたようだ。
域内の小道がどんどん細くなり、林の中が暗くなっていく。
子ども達も見かけなくなった。
それはそうだろう! 
マムシが出没すると云われている(しかも役所お墨付きの)場所に、
子ども達を連れて行く学校や親はいない。

昔は、例えば岩手県の町の周辺に、或いは静岡市内の裏山にもマムシはいたのである。
勿論、看板なんぞ立っていなかった。子ども達も活発に遊びまわっていた。
(今は分からない。)
それにしても、この看板はどういう意味だろう?
 近づくな! ということか?
 マムシを根絶しよう! いうことか?
 自己責任を強調しているのか?
 責任を追及されることの防波堤の積りか?
この変化は今後どうなるのだろう?
 結局、元に戻るのか? 
 或いは、役所の今後の全面的管理開始宣言か?(――>河原を整然とする)
ヘビが(そして生き物が)根絶やしにされる前に、私の経験による都会周辺のヘビ事情を披露する。

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1 本土産ヘビの基礎知識
 
私が持っている参考書類では、
 ・日本産のヘビ  45種
  ・うち陸生  36種
  ・うち海生   9種
 ・日本産のヘビ45種のうち、
  ・本土     8種
(本土以外というのは、沖縄県や海である。)
8種とは、以下。
(対馬のマムシは別種などと云いだすとややこしくなる。)
   1 アオダイショウ   5 マムシ 
   2 シマヘビ      6 ヤマカガシ
   3 ジムグリ      7 タカチホヘビ 
   4 ヒバカリ      8 シロマダラ

以下、基礎知識(知ったかぶり)

・起源
今のトカゲの先祖(陸棲)が、段々足を退化させて1億年位前にヘビらしくなってきたと云われている。
(つまりその頃の化石が見つかったということ。)
だから、
   ・海を泳ぎ回っていた爬虫類がヘビの先祖である
   ・ヘビに足がついてトカゲになった
なる説は今では受け入れられないらしい。
然らば、ウミヘビとは何か?
コブラ科のグループの「アマガサヘビ=クレイト」の一部が海に進出していった
と云われている。
アマガサヘビの仲間は皆猛毒の持ち主だから、ウミヘビも皆猛毒である。

閑話
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    クジラの先祖という絵を見たことがある。まるでオオカミの姿であった。
    解説は、
    海に進出して足を失い、浮力のおかげでどんどん体が大きくなって
    クジラになったとあった。ホントかな?
    “進化論”は、真面目な研究とダボラとの区別が付きにくい気がする。
    ********************************
 
・隠遁の術
何と言っても、ヘビの隠遁の術は素晴らしい。
草むらにアオダイショウがいた。撮影しようとデジカメを取りだして(10秒位)、
いざ撮らんと目を向けると、煙の如く姿が消えていた。
草むらといっても草刈り直後だから、
芝生に毛が生えた程度で廻りを一望に収めることが出来たのだ。
穴もない。全く不可解なことであった。
考えてみると、“だからヘビなのだ!” 
2m級の長物が足をつけたままなら、とてもこうはいくまい。
彼らは1億年(もっと?)かけてこの隠遁の術を研磨してきたわけだ。
私が不思議がるのを彼らは嘲笑っているに違いない。
(以下、アオダイショウの項で若干解説する(解説にもならないけれど)。)

・雄と雌
蛇は何処までが胴体なのか?(その後ろは尻尾)
ヘビの腹側に総排出腔がある。つまり排泄と生殖が一緒になっている器官である。
総排出腔までが胴体で、内臓があるのはここまで、
後は尻尾となり、ここからは何も器官はない。
雌雄の確認には、総排出腔内の生殖器官を確かめることになるが、
簡便法としては、
 ・尻尾が長いのが雄
 ・太短いのが雌
と云われている。
私も、もっぱらこの簡便法を使っているが、
皆、雄に見えてしまうのである。
 ・簡便法がいい加減なのか?
 ・私の使い方が雑なのか?
 ・実際、目にするのは雄ばかりなのか?

・大きさ
絶えず成長しているわけだから、大きさは難しい。
紹介されている数値(ほぼ成蛇の)としては、
  ・アオダイショウ   150m〜
  ・シマヘビ      150
  ・ヤマカガシ      100
    ・マムシ        80
  ・ジムグリ       80    
  ・ヒバカリ       50
  ・タカチホヘビ(未)  50
  ・シロマダラ(未)   50
の前後となっている。

ヤマカガシ、マムシは太いのでとても小型のヘビには見えない。   
ジムグリ以下は実際小型なので静止している時以外は区別がつかない。
(なにしろ素早いから。)
また、案外アオダイショウやシマヘビの幼蛇と間違えているかも知れない。
アオダイショウの幼蛇がマムシと間違われると、ほぼ殺されるそうだ。


2 各ヘビの思い出

@ アオダイショウ

     
 
アオダイショウ其の一   アオダイショウ其の二    アオダイショウ其の三

「アオ」ダイショウと云っても、あまり「ブルー」にはみえない。
「モスグリーン」と云いたいけれど、野外では「ブルー」でも、妙に納得する。
(確かにもう少し「ブルー」のアオダイショウも偶に見かけるけれど・・)
最も良く見かけるヘビで、都市部や住宅地にも進出してくるのは殆どこのヘビである。
運動能力に優れ樹上や人家に簡単に入り込むことが出来る。
獲物は鳥(の雛)、卵、鼠だから、こうでなければ都会で生きていけない。
渋谷駅から10分位の氷川神社にも棲みついている。
明治通り近くの鳥居の傍にいたので私が本殿近くの林に連れて行って放したのだ。
 この時、神社から旅立とうとしていたのだろうか?
 それとも放浪の旅の末に、この神社に辿りついたのだろうか?
前者なら私は余計なことをした訳だが、ただこの場所を離れたら多分生きてはいられまい。
かくの如く、神社というのは有難い場所なのである。
(それにしてもお寺は、生きとし生けるものの役に立っていないなぁ。
域内を整然と整理して、単に自らの権威を衒らかしているだけのように思える。)
      
 
   黄色い目           青い目其の一       青い目其の二
  
アオダイショウの目は、黄色が多いが、偶にブルーの目のアオダイショウもいる。
ヘビには「瞬膜」というものがあって、
光線の具合により「目が青く見える」という解説があったが、これが良く分からない。
 ・時期的なものか?(脱皮直後とか)
 ・時刻か?(夕方とか?)
 ・光線の当たり具合か?
「モルフォの構造色」のような解説もあったけれど、ホントかな?

 
 
   都心のアオダイショウ

都心の緑道沿い(というよりは通勤道沿い)の花壇/繁みに
姿を現わしたアオダイショウである。
優に150cm以上はあったと思うから巨漢である。
巨漢は、見ているだけで楽しくなってくる。
勿論巨漢でなくても、アオダイショウは無害なのだから
幾らいても構わない。
昔の人は、「鼠を退治してくれる」と喜ぶのである。
それにしても、  
汝 何処より来りて 何処へか去る
 
    
 
   アオダイショウとねこ        なつくねこ

ヘビの隠遁の術は見事である。繁みに潜り込むと忽ち見失う。
ヘビの方向決定方式は、ランダムウォークのようだ。
速さの強弱の付け方も違う。
立ち止まったり、猛スピードで駆け抜けたリ、
穴に潜ると見せかけて、通り抜けたリ・・
要するに、人間の付け焼刃の“線形回帰分析”など論外なのである。

人間が相手だとかくの如く姿を晦ますのだが、
ネコが近づいていってもアオダイショウ逃げない。
こういう場面を二度目撃しているが、いずれも睨みあっていた。
多分、ヘビの目にはそれ程相手が巨大には見えないのだろう。
私が近づくとどちらも逃げていった。

ネコは意地悪されると思ったから逃げたのだろう。
意地悪しないで餌をやるとネコは忽ちなつくのである。
それにひきかえ、ヘビは懐かないなぁ

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A シマヘビ(付記 お島追想)
      
 
  シマヘビ其の一        シマヘビ其の二     シマヘビ其の三

胴体に「黒い縞」があるのでシマヘビである。
これならまず人は、例えばマムシなどと間違わない。
(なお、この縞は「縦縞」という。「横縞」とは云わない)

   
 
 縞がハッキリしない幼蛇     普通の幼蛇

ところが、縞が不明瞭なシマヘビもいる。
成長したらどうなるのだろう? 
このヘビは早世したが、成長しても多分変わらなかったと思う。
幼蛇は変化が多いと云われている。こうした幼蛇がマムシに間違われるのではないか?
因みに、
「幼蛇」  ○ 「ようだ」       
      × 「ようじゃ」
      ――――――――――
「大蛇」  × 「だいだ」
      ○ 「だいじゃ」
である。

     
 
 シマヘビ赤い目其の一      同じ            同じ

シマヘビのもう一つの特徴は、「目が赤いこと」である。
私がこれまで目撃した範囲では、全て「赤い目」であった。
変化があるのかどうか・・
 
 
     目つき

シマヘビは目つきが悪いと云われる。
それは、瞳の上の鱗が目に被さっているからである。
性格とは関係がない。
  人に遭えばひたすら逃げる。
  逃げられなくなったら睨みつける。
  人が掴もうとすれば、噛みついてくる。
全く自然の振る舞いである。

“目つきが悪いから、性格も狂暴”という思い込みがあるようで、
「シマヘビは突進して攻撃してくる」という“解説”を読んだことがある。
「マムシでさえ、攻撃圏は体長の半分」という解説がある。
私自身の体験からいっても、いろいろなyoutubeを見ても、
おそらく後者の解説が正しい。

  
 
   体長80cm

これで体長80cmである。
シマヘビは本当にホッソリしている。
ヘビの悪口を云う人間は概ねデブである。
 
 
      死

秋、野川を散策していてシマヘビの死骸をみつけた。
土手の穴に体を半分位入れたまま死んでいた。
多分、冬眠用の穴を探していて見つからず、そのまま旅立ったのではなかろうか。
ヘビにはそういう危険もあることを知った。
(考えてみると、当たり前のことだが。)
こういう場所でのヘビの冬眠は難しいだろう。(直ぐ砂埃で埋まってしまうから。)
取り出して計ったら1.2mだった。

お島追想、再び
以前、野川で出会ったシマヘビの話をかいた。
(雄だったけれど、愛称 お島)
僅か二ケ月のつき合いだったが、本当に可愛らしいヘビであった。
その後、こういうヘビに出会うことはなかった。
折りに触れて思い出す。
	「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
	「”お島”ふたたび」

              
 
  マンション     こんにちは(2011年11月23日)  日向ぼっこしましょう
      
 
   お友だちと        恥ずかしい      あっち行け!
   
 
  おやすみなさい 
    
 
    もよう         もよう
   
 
  つぶらな瞳        瞳に映る風景
    
 
   かえる顔          本物
    
 
お別れします(2012年1月26日) お島の墓
    
 
  会葬者 ハナアブ    会葬者 クサグモ

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B ジムグリ

 
   
多摩川で、偶然穴から出ようとしているジムグリを見かけた。
一瞬私と睨みあったが、初志貫徹、飛び出して反対側の草むらに逃げ込んだ。
速かった!
このように地面に潜り込んでいるから、ジムグリというのだそうだ。
これは40cm位か。
   
 
このように隙間などに潜り込んでいることも多いらしい。
    
 
暑さに弱いらしく、道端でへばっていた。

かくの如くで、穴や隙間に潜り込んでいて、
暑さや日光も苦手らしい。
だから、郊外の森林などにひっそりと暮らしているようで
あまり人目につかないようだ。
都心の大公園(例えば自然教育園 港区)では、私も目撃している。
(素早くて撮れない。)
私の蝶友は、「見たことがない!」と云っているが多分そんなことはないだろう。

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C ヒバカリ
  
 
      生田緑地         盛岡市住宅地

どちらも30cm位、路上で気息奄奄、動けなくなっていた。
つまり、暑さや日光に弱いのか?
元気なヒバカリも見かけるのだが、素早いし捕まえると暴れるし、とても撮影出来ない。
「郊外、特に水田に多い」と解説されているが、「水田」は餌の関係だろう。
私は、都心の大公園(例えば自然教育園、北の丸公園)でも目撃している。
だから注意していれば、案外目撃出来るのではないか。

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D マムシ

    
 
    盛岡市郊外
              
都心周辺では流石に目撃したことはない。
勿論、高尾山にはいるだろう。
小山田緑地(町田市)では、例によって「マムシに注意」なる立て札があるが
本物の写真(=実物)が掲載されているウェブサイトは見たことはない。
果たして本当にいるのか、いないのか?
案外、どこも看板倒れではなかろうか?

盛岡市の周辺の林道、渓流沿いの道などでは、私はしばしばマムシを目撃した。
(だからこの写真は、東京ヘビ紀行には相応しくはないがお許しあれ!)
人間を意識しているのか、いないのか、ノソリノソリと樹林、草叢に消えていく。
どうも、自分に自信があるように思える。(スカンクやヤドクガエルのように。)
ところが、山歩きをしている盛岡市の住人でも
「見たことがない」という人が案外多いのである。
そんな珍種でもないのに!
関心がなければ、
 見れども見えず 聞けども聞こえず 喰らえどもその味を知らず
なのだ。

上の写真は、盛岡市の郊外の林道で弱っていたマムシである。
云わずと知れた毒蛇で、体長70〜80cm、体は相当太い。
多分1.5mのアオダイショウやシマヘビよりも太い。
シマヘビのお島は80cm位だが、前掲のような細さである。

銭形模様がマムシの特徴と云われているが、
他種の幼蛇でも、銭形模様に出くわすことがある。

また、私の写真でははっきりしないが、マムシの瞳孔は縦長だから
(つまり、つぶらな瞳ではないから)、相当に不気味である。
とは云っても、“毒蛇の目は全て不気味”というわけではない。
世界最強の毒蛇ブラックマンバのつぶらな瞳は、ヘビ嫌いにも人気が高い。

他種は人が近づけば必ず逃げる。
人を咬むのは掴まえられた時、逃げ場を失った時だけである。
ところがマムシは逃げない場合もあって、
攻撃圏(体を伸ばして咬みつける範囲)まで人が近づくと
アタックすることもあるらしい。
(私の目撃例では、近づくと必ずノソノソと逃げていったが。)
だから、マムシは自分の強さを知っていると思う。
実際に、農作業時の咬傷被害等も少なからず起きている。
その時の身体的状況、周囲の状況によるものなのか。
以下のサイトに
「全国調査によるマムシ咬傷の検討」が載っている。
      https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/17/6/17_753/_pdf

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E ヤマカガシ
 
 
  ヒキガエルに咬みついているヤマカガシ
    
 
  逃げないヒキガエル   再び襲われるヒキガエル

都心近くの某所で林内を散策していると、
ヤマカガシがヒキガエルに咬みついていた。
近づいて見ていると、ヤマカガシは嫌々ながら逃げていったが、
ヒキガエルはその場にとどまったままだ。全く動かない。
私もその場を離れ、三十分位して戻ってくると、
驚いたことに、殆ど同じ場所で再び咬みついていた。
ヤマカガシも今度は逃げず、そのまま咬みついている。
ヒキガエルの抵抗は、体を膨らますだけのようだった。

この地以外の都心近くでも、偶に見かけるのだが場所は示さない。
(「ヤマカガシ出没注意 国土庁」なんぞの立て札を出されたら困るから。)
盛岡市の郊外の林道、林間では、このヘビを最も多く見かける。(特に渓流沿い)
見つけやすいのは多分、
  ・あまり敏捷ではない。
  ・ヒバカリやジムグリのような小ヘビではない。
  ・アオダイショウやシマヘビは、むしろ平地に多い。
からだろう。
ところが、同じ位敏捷ではない筈のマムシの目撃回数は圧倒的に少ないのである。
  ・そもそも個体数が少ないのか?
  ・隠れ方が巧いのか?
私は個体数の推定に関心があるのだが、
ヘビの場合は難問である。(例えば蝶に比べて)
ヘビ関連の著書を読むと、大抵は自分自身の素朴な調査・体験を語っているのだが、
こちらはいかにも誠実な報告書のように思えて、好感がもてる。
愚にもつかない蝶の数式モデルよりは歓迎なのである。

ヤマカガシは不思議なヘビである。
 ・猛毒のヘビである。口の奥の方にある毒牙でがっぷり咬まれると人も危険である。
  当初毒蛇であると知られていなかったのは、
  「がっぷり咬まれること」がなかったからだろう。
  おとなしいヘビだから、捕まえて遊ばない限り噛みつくことはないと思う。
  無毒のミルクヘビが、捕まえている人の指に
 「がっぷり咬みついている」写真がサイトに載っていた。
  ヤマカガシもこういう捕まえ方(遊び方)をしたら、危険なのである。
  写真のヒキガエルが最初逃げなかった(逃げられなかった)のは、
  この毒がすでに注入されていたからだろう。
  なにしろ獲物だから、ガップリと咬みつくのである。
  この毒は自分で生成しているとのこと。
  つまり、消化液の変形であって、フグのような微生物由来ではないらしい。
  なお、1977年の某プロの著書には、この毒は記述されていない。
  未だ知られていなかったのだろう。

  ・毒牙とは別に首の方にも毒を蓄えている。これには開口部がないので、
   この部位を天敵に咬みつかれた時などに威力を発するらしい。
   この毒はヒキガエル由来とのこと。
   なお、上述のプロの著書には、こっちの方の毒はすでに記述されている。

  ・これ程猛毒のヘビなのに、そして有毒のヒキガエルを喰ってしまう程の豪の者なのに
   大層大人しいのである。
   人を見るとひたすら逃げる。不思議だ?
  ・ヒキガエルは有毒なので他のヘビや捕食動物は獲物にしないが、
   ヤマカガシは、この写真のように好物としているようだ。
   他のウェブサイトでも、ヒキガエルを襲っている写真が多いのである。
  (勿論、他種のカエルやトカゲを襲っている写真もあるが。)
  
ヤマカガシは見事なヘビである。
  ・首の上部に黄青色のリングがある。
   成蛇では(写真の如く)それ程目立たないが
   幼蛇では鮮明なのだ。(他のウェブサイト参照)
   わたしにも経験がある。
   道端を一瞬横切った幼蛇は、リングが目だって、まるで流れ星のようであった。
   そして速くてとても撮れない。
   ノソノソしているおとなと大違いなのだ。

  ・マムシは子どもでも、自分は強いと思っているらしい。
   咬みついてくるそうだ。
   ヤマカガシの子どもはどうなのだろう?
   ひたすら逃げ回っているような気がする。

  ・然らばヤマカガシの大人はどうか?
   二種類も毒を持っているのだから、もっと自信を持っても良さそうなのに
   やはり何故か自信が無さそうなのだ。
   「前牙」ではなく「後牙」であるということに
   引け目を感じているのだろうか?
   ヒキガエルには、余裕で咬みついているくせに。

以下のサイトに
「ヤマカガシ咬傷 にて死亡 した1例 お よび本邦報告例 の検討」
が載っている。 
   https://www.jstage.jst.go.jp/article/ringe1963/47/2/47_2_250/_pdf
また、以下のサイトに、
「沖縄県における平成 28 年の毒蛇咬症
が載っている。(最近10年間の沖縄の毒蛇咬症のデータ)
   http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/hoken/eiken/eisei/documents/h28kousyou.pdf

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F,G タカチホヘビ、シロマダラ

実は両種とも、私は未だ野外で目撃したことはない。
飼われているのは見たことはあるが、
野外でなければ、目撃したとは云えない。

両種とも幻のヘビと云われ、発見されればニュースにもなるそうだが、
かと云って、深山幽谷にひっそり生息するヘビというわけではなさそうだ。
プロに云わせれば、それ程の希少種ではない!
つまり今では、
   個体数は少なくはない
と考えられているとのこと。
どちらも森林に生息していて夜行性、小型、昼は藪中や倒木の下にひっそり暮らしているから
確かに私のようなアマには、見つけられそうにはない。
或いは、案外目撃していて見逃しているだけなのか?
幸い、ウェブサイトでは幾らでも楽しむことが出来る。

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3 終わりに(進化論を勉強する)

「トカゲの一部が足を失ってヘビになった。」と知ったかぶりをしてしまった。
私は目下、ムカデの足の方に関心を持っている。
   ・どうしてムカデは、最初の足が顎になってしまったのだろう。
     眼と歯は、脳の表面に飛び出した感覚器官であるらしい。
     「追いつめられた進化論: 実験進化学の最前線」  西原克成
     しからば、どうして歯が足に移行してしまったのだろう?
   ・(ホメオティック遺伝子群の理論)というのがあって、
    ホメオティック遺伝子群の重複は新しい体の部分を生むことができ、体節となる。
    例えば、アンテナペディア複合体とバイソラックス複合体がある。
    前者は主に頭部を、後者は主に尾部を形成する遺伝子である。
    それぞれは頑固であり、だから、突然変異で頭に足が生えたりするが、
    それはあくまで足であり、歯にはならない。
    逆に、足がいつのまにか歯になったりはしない。
    とのことだ。
    
 ムカデの体
  ・ムカデの体は、頭部と胴部からなる。
  ・胴部の最初の体節は顎の形になった顎肢である。
  ・顎肢は毒腺を持ち、捕食に使う。云々
  まるで、後節に前節の機能が紛れ込んだみたいではないか!
 
       
 
    トビズムカデ

    ****************************************
    閑話
    “ムカデは獰猛で後ろへ引かない”というので、
    例えば武田軍の軍旗になっているようだが、これは嘘だ。
    私が上記の写真のムカデを突いたら、木の穴に頭だけ隠して動かなくなった。
    “頭隠して尻隠さず”そのものなのである。それとも、自分の「体長」を知らないのか?
    とは云っても、獰猛なのは確かである。
    このムカデもそれまでは、木の穴という穴に頭を突っ込んで獲物を探していた。
    また、マムシに喰らいついて獲物にしたムカデのYouTubeがある。
    ****************************************

面白いウェブサイトがあった。http://wataky.wp.xdomain.jp/?page_id=118
著者は云う。
      「見た限りでは顎肢の先端に穴があるようには見えない。
    全ての足から、何か刺激物が滲み出てくるのではないか?」
ということは、顎肢はそもそも単なる足であり、姿が大げさなだけということか?
著者は、「観察を続ける」と云っておられる。楽しみだ。
    
というわけで、多少なりとも、「進化生物学」なるものを勉強しようと思った。
メイナード=スミス等のESSなる理論がある。
これは、フォン・ノイマン、ナッシュのゲームの理論を進化論に応用した理論のようである。
“何よりも数学的な厳密さを追求する”と本人は云っているらしいが、
具体的に生きもの(=遺伝子)の相互依存・相互反発が出てこないので、
ちっとも「生きもの」を勉強している気がしない。
大体、魑魅魍魎の生き物の世界に数学的な厳密さを求めるのは、
豆腐屋で電気洗濯機を求めるようなものではないだろうか?
どうも、理工系の学者が、この分野に雪崩れ込んできたようで、
こういうが学者が数式を振り回したら、
生物学者プロパーは手も足もでないのではなかろうか?
例えば、
  「進化ゲーム理論とは,
   ゲーム理論に動学を導入して・・・・・
   この手法は初めに進化生物学で導入され (Maynard-Smith and Price, 1973),
   後に経済 学などの諸分野で取り入れられた.・・・
   進化ゲーム理論で無限集団を仮定すれば確率性を無視することができるので,
   そのダイナミクスは決定論的となり,・・・・・」
なる主張がある。
「無限集団を仮定すれば確率性を無視することができる」
とは何ぞや???
私が翻訳するに、
「連続空間上の条件付き確率を考えて云々・・、
その条件付き確率(=普通の関数)を解析して云々・・」
ということではなかろうか?
こう云うのは所詮、数学の分野での遊びであり、
具体的な問題(例えばカンブリア紀の大爆発の問題)に対しては零解答である。
(数学屋にとっては、そんなことは知ったことではない! “論文”が出来れば良い。)
例えば、ブラック・ショールズ理論も、
数学理論としては画期的でも、現場への応用(=実戦)では破綻した。
というよりも、「破綻」という言葉がそもそもおかしいのである。
バクチの世界では、上昇・下降は当たり前、
音頭を取っていた連中が、下降局面で、売り抜けていたら、
彼らにとっては大成功ではないか!
多分、ボンクラが損をしたのである。理論のせいではなかろう。

以下の本を読み返してみた。
  「ダーウィンを越えて」 今西錦司+吉本隆明
吉本氏は論外として、
(エンゲルスだのヘーゲルだの宇宙論だの振り回して、今西氏をイライラさせていた)
今西氏も他説の批判には精彩を放つけれど、
肝心のご自分の「棲み分け理論」はどうも私には分からない。
それにこの研究は、もともと可児藤吉博士の研究ではないのか?
(今西氏も、この研究には参加していたようだが。)
その後御自分が付け足している部分(“種社会”、“同意社会”・・)が、
私には分からないし、大方にも不評なのである。
或いは「定向進化論」に結びつけてみたりしているけれど、
これもちっとも分からない。(多分他の人たちも。)
ただ氏に対して忌憚のない意見を具申したら、猛烈に怒り出しただろうな。
 
可児藤吉博士は、old虫屋でなければ名も知らないのではなかろうか?
  昭和19年召集され、
  その年7月18日、サイパン島にて戦死、36歳
  可児藤吉全集 全一巻 を残す
  伝説的な昆虫学者。
全集によると、御自分のライフワークとは別に、
 ・マルクス主義の経済学・社会学に関心を持っていた。
 ・G・F・Gauseと云う人の「生存競争の問題」を翻訳している。

当時にあって、マルクスを勉強していたのか!
また、後者は勿論今読むとレベルは高くはないけれど
当時は最先端の理論だったのではないだろうか?
いずれにしろ、「死ぬか生きるか!の時代」であったことを考えると、
涙がでてくるのである。

サイパン島は、太平洋戦争最大の激戦地となった。
そして可児は、死んで還ってきた。
生きて還ってきて、京大の先生になればよかったのに
と心底思う。

日本の大学の教授連は
本人は威張りくさって、
廻りはひたすら卑屈に迎合する傾向があるのではなかろうか?
あの血液学の東大の大先生のように!!
 



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ティータイム(その1) 「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」
ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ賛歌」
ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」
ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」
ティータイム(その6) 「蝶の占有行動と関連話題」
ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」
ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」
ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」
ティータイム(その10) 「コムラサキ賛歌」
ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」
ティータイム(その12) 「”お島”ふたたび」
ティータイム(その13) 「オオウラギンヒョウモン考(再び)」
ティータイム(その14) 「謎の蝶 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その16) 「オオウラギンヒョウモン考(三たび)」
ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」
ティータイム(その18) 「微かに姿を顕したクロヒカゲ」
ティータイム(その19) 「不可解な普通種 ヒメジャノメ」
ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活―」
ティータイム(その21) 「オオルリシジミを勉強する」
ティータイム(その22) 「集結時期のヒメアカタテハを総括する」
ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」
ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」
ティータイム(その26) 「ヒメアカタテハの越冬と発生回数」
ティータイム(その27) 「鳩山邦夫さんの『環境党宣言』を読む」
ティータイム(その28) 「蝶の山登り」
ティータイム(その29) 「蝶の交尾を考える」
ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」
ティータイム(その31) 「今年(2019年)のクロヒカゲ」
ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」
ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」
ティータイム(その34) 「ヒメアカタテハ、台風で分かったこと」
ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」
ティータイム(その36) 「「蝶道」を勉強する 続き」
ティータイム(その37) 「ミツバチを勉強する」
ティータイム(その38) 「「蝶道」を勉強する  続き其の2」
ティータイム(その39) 「里山の蝶」
ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」
ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」
ティータイム(その42) 「今年(2020年)の報告」
ティータイム(その43) 「徒然なるままに 人物論(寺田寅彦、ロザリンド・フランクリン、木村資生、太田朋子)」


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