オオウラギンヒョウモン考(三たび)
                遠藤英實 作     「オオウラギンヒョウモン考(再び)」 を読み返しながら考えた。 オオウラギンヒョウモン衰退の理由は、以下の三つで説明出来るのではなかろうか。  @ 産卵数が異常に多いこと  A 稀種ではあるが、発生地では個体数が多いこと。  B 旺盛な食欲 2個産卵すれば、(原理的には)十分ではあるが、 勿論諸々のリスクを勘案して多めに産卵するわけである。 それにしてもオオウラギンヒョウモンの産卵数は多すぎる。 不適な環境では、@はプラスに働くだろうけれど、 反面、好適な環境ではマイナスに働くこともありそうだ。 どんどん個体数が大きくなっていくからである。 勿論、彼らの旺盛な食欲を満たしてくれる広大な環境が、 彼らに提供されていれば問題はないのだが、 勿論日本はそのような状況ではない。 食草は喰いつくされてしまう。 然らば、彼ら自身が産卵数を適正にコントロール出来るか? 或いは、個体数を適正にコントロール出来るか? Aから、そういう能力はなさそうだ。  “いる所には沢山いて、いない所には全くいない” のである。つまりコントロールが出来ないようなのだ。 だから環境が悪化すると(<――日本の趨勢)、 新天地を求めざるを得ず、結局不毛の地を彷徨い、 滅びの道を辿っていくわけだ。 以前から、オオウラギンヒョウモンの衰亡を 飛蝗に結びつけて、あれこれ夢想している。 飛蝗は個体数のコントロールを移動という形で行っている。 日本のトノサマバッタも移動は行うらしく、小規模且つ散発的な例は知られている。 勿論普段は我々の周りで、平穏に暮らしているのである。 北米のロッキートビバッタこそはドラマティック、ドラスティックである。 1870年頃史上最大級の移動を行い、30年後絶滅した。 つまり地球から姿を消した。 その数は12兆匹とも言われている。 西部開拓が、ロッキートビバッタの生存を根底から覆したと云われているが、 どうして日本のトノサマバッタのようにつつましく生きていかなかったのだろう? ロッキートビバッタは、個体数のコントロールが致命的に不得手だったに違いない。 我がオオウラギンヒョウモンも、同様だったのではなかろうか? (スケールは大分小さいけれど。) オオウラギンヒョウモンのこの性質こそが、 「衰退のスピードが、他の草原性の蝶よりも際立って大きい理由」 ではなかろうかと思っている。 ティータイム(その1) 「不思議なシマヘビの物語 (野川で出会った“お島”)」
ティータイム(その2) 「ミノムシ 《皇居外苑北の丸公園の蓑虫》」
ティータイム(その3) 「ゴイシシジミ讃歌」
ティータイム(その4) 「空飛ぶルビー、紅小灰蝶(ベニシジミ)」
ティータイム(その5) 「ヒメウラナミジャノメの半生(写真集)」
ティータイム(その6) 「蝶の占有行動と関連話題」
ティータイム(その7) 「ヒメアカタテハの占有行動」
ティータイム(その8) 「オオウラギンヒョウモン考」
ティータイム(その9) 「ヒメウラナミジャノメの謎」
ティータイム(その10) 「コムラサキ賛歌」
ティータイム(その11) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ」
ティータイム(その12) 「”お島”ふたたび」
ティータイム(その13) 「オオウラギンヒョウモン考(再び)」
ティータイム(その14) 「謎の蝶 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その15) 「我が隣人 ヒメアカタテハ」
ティータイム(その17) 「姿を顕さない凡種、クロヒカゲ」
ティータイム(その18) 「微かに姿を顕したクロヒカゲ」
ティータイム(その19) 「不可解な普通種 ヒメジャノメ」
ティータイム(その20) 「散歩しながら動物行動学を学ぶ ― 蝶の知的生活―」
ティータイム(その21) 「オオルリシジミを勉強する」
ティータイム(その22) 「集結時期のヒメアカタテハを総括する」
ティータイム(その23) 「毒蛇列伝」
ティータイム(その24) 「東京ヘビ紀行(付記 お島追想)」
ティータイム(その25) 「ヒメアカタテハやクロヒカゲの占有行動は交尾の為ではない(序でに、蝶界への疑問)」
ティータイム(その26) 「ヒメアカタテハの越冬と発生回数」
ティータイム(その27) 「鳩山邦夫さんの『環境党宣言』を読む」
ティータイム(その28) 「蝶の山登り」
ティータイム(その29) 「蝶の交尾を考える」
ティータイム(その30) 「今年(2019年)のヒメアカタテハ」
ティータイム(その31) 「今年(2019年)のクロヒカゲ」
ティータイム(その32) 「蝶、稀種と凡種と台風と」
ティータイム(その33) 「ルリタテハとクロヒカゲ」
ティータイム(その34) 「ヒメアカタテハ、台風で分かったこと」
ティータイム(その35) 「「蝶道」を勉強する」
ティータイム(その36) 「「蝶道」を勉強する 続き」
ティータイム(その37) 「ミツバチを勉強する」
ティータイム(その38) 「「蝶道」を勉強する  続き其の2」
ティータイム(その39) 「里山の蝶」
ティータイム(その40) 「岩手の蝶 ≒ 里山の蝶か?」
ティータイム(その41) 「遺伝子解析、進化生物学etc」
ティータイム(その42) 「今年(2020年)の報告」
ティータイム(その43) 「徒然なるままに 人物論(寺田寅彦、ロザリンド・フランクリン、木村資生、太田朋子)」


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