24`04/19(金) -20:25- 先日TV放送された「すずめの戸締り」を観ました。 元々、TV放送されたのを録画視聴した「天気の子」が面白く無かった為、新海誠監督作品は好みに合わなそうだ、と思っていたんですが、少し前にTV放送されたのを録画視聴した「君の名は。」は面白かったので、一応「すずめの戸締り」も観てみようと録画していました。 新海誠監督の作風として、現実の風景をそのまま描けばリアリティが出るだろう、と勘違いしたような表現は嫌いです。 「天気の子」では、天気を敵役にしたファンタジーな展開の癖に、物語の障害を天気では無く警察にさせるような、ズレた感性が終始気になって全然面白くありませんでした。 あれも、ファンタジーならファンタジーらしくちゃんと描いたならば、もう少し面白かったんだろうな、とは思います。 それに対し、「君の名は。」にもリアリティとして気になる点は多々ありましたが、ちゃんと物語として盛り上がるように展開、演出した上で、ファンタジーはファンタジーとして描かれています。 タイムパラドクスを含むので整合性はおかしいけれど、エンターテインメントとしては正解です。 映画と言う表現方法である以上、まず観客、視聴者を楽しませるのは前提条件。 その上で、何か伝えたい事や哲学を盛り込むのはクリエイターの勝手ですが、「君の名は。」はちゃんと楽しませる事を優先して作られていました。 だから、作風として好みでは無いけど、充分面白かったです。 そして「すずめの戸締り」。 こちらも、序盤から息も吐かせぬ展開で観客、視聴者を引き込み、ほんの少し謎の映像を差し挟んだりして興味を引いたり、エンターエインメントとしてちゃんと作られていました。 相変わらず、現実の風景さえ入れればリアリティが出ると勘違いはしているようですが、そこは気にせず物語として楽しめました。 ……ほぼ最終盤に至るまでは。 私は、事前情報を一切知らずに観たんですが、件の要素を入れたのは失敗だったと思います。 ファンタジーはファンタジーとして、例えば架空の日本や過去、未来の日本、何だったら海外を舞台にするなりして、あくまでモチーフに止めておくべきだったと思います。 3・11、東日本大震災。 そこに、直接結び付けたのは、致命的失策。 結局、物語としては、すずめが余計な事して事件が進展して、その尻拭いの為に奔走。 そこに、草太との淡い恋物語が加わった、青春ラブストーリィに過ぎません。 むしろ、ファンタジーな部分は、抜いてしまった要石が自由になって、元の要石に戻りたく無いから身代わりを選んだ。 要石さえ無事ならミミズは抑え込めるから、身代わりを解いて要石を元に戻す。それだけ。 スケールの割りに、やっている事は大した事無い。 すずめの頑張りと、草太との恋物語、そこに実は……、と言う謎部分が絡むだけの物語が、全部持って行かれちゃうんですよ、3・11に。 紐解いてしまうと大した事無い甘酸っぱい青春話に過ぎないから、3・11で思いっ切り薄っぺらい、どうでも良い話になり下がっちゃう。 弱いんですよ、3・11持ち出しちゃったら。 私個人としては、新海誠は3・11に逃げたと感じましたが、人によっては良く描いてくれたと思ったり、何故傷を抉るような真似をするのかと嫌な気持ちになったり、賛否を分ける要素でもあるでしょう。 無理矢理入れても、良い事なんて何も無かったと思います。 ミミズが大地震を引き起こす、と言うファンタジーとして描いて、下手に現実とリンクさせる必要なんて無いんです。 これも、現実を入れればリアリティが増すと言う勘違いの所為ですかね? 賛否も評価も分かれるとは思いますが、私は3・11に逃げた瞬間、物語が台無しになったと感じました。 正直、あそこが3・11でさえ無かったら、せめてモチーフ程度で架空の物語に徹していれば、「君の名は。」よりも面白いと思えたかも知れません。 それだけに、残念でした、勿体無い(-ω-) と言う事で、序盤から引き込まれ今回は面白い、当たりだと思っていたら、最後に残念な展開を迎えて勿体無い作品でした。 新海誠って、自分の表現に自信が無いのかな? 別の何かに身を預けないと、両の足だけで立っていられないのだろうか。 私は、3・11に頼らずとも、充分面白いフィクション、エンターテインメントに出来たはずだと思いますけどね。 本人がどう言うつもりか知りませんが、3・11に逃げないで欲しかったです。 結局、ここまで「天気の子」「君の名は。」「すずめの戸締り」と観て来て、当たりは1/3でした。 ま、これが野球のバッターなら、三割打てば充分好成績って話なんですけどねぇ(^^; 取り敢えず、「すずめの戸締り」は人様におすすめ出来るような映画じゃありませんでした。 色々な意味で。
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