「アップルvs.グーグル」を読む

下記書籍の内容と感想を記す。


1章・書籍について


「アップルvs.グーグル どちらが世界を支配するのか」 フレッド・ボーゲルスタイン 著(2013)
依田卓巳訳(2016)
新潮文庫


目次
序章
第1章:月面着陸ミッション
第2章:アンドロイドはiPhoneを越える
第3章:発売まで24週間
第4章:友だちだと思っていた
第5章:裏切りの結果
第6章:どこもかしこもアンドロイド
第7章:iPadがすべてを変えるーー巻き返し
第8章:ミスター・クイン、このままでは処罰を下すことになりますよ
第9章:ついに来た「コンバージェンス」
第10章:一画面ずつ世界を変える


2章・本書の概要を筆者なりにまとめた


著者が描くのは、2007年始めに登場したアップルのiPhoneとそのソフトと関連技術と、同年後半に登場したグーグルのモバイルOSのアンドロイドが、現状まで辿った道だ。
2つのプラットフォームがあると、絶えずユーザーは比較し、メーカーは商品の多様な面での盗用騒ぎに巻き込まれる。


そして舞台となった「スマートフォン」は世界を変えるビジネス競争と位置つける。
それは多方面のビジネスが最終的には、2つのプラットフォームのいずれかと繋がる事でしか生き残れないと著者が見るからだ。
多くの人は双方向性のテレビ番組がパソコンを吸収すると考えていた。
パソコンに係わるマイクロソフトは、パソコンの方が吸収すると考えていた。
だか、スマートフォンが普及した2013年では、スパートフォンがテレビもパソコンも吸収すると考える人が増えた。


新技術に挑戦する人の苦悩と、先を行く商品と技術を越えようとするために開発途中の多くを白紙に戻す判断と決意の苦悩も描く。
そして、当時はまだパソコンビジネスのトップのマイクロソフトの影がアップルとグーグルを怯えさせた。
その中で異なるビジネスモデルを信じ、競う相手となった。


過去の争いはどちらかが制する形で収束していた、スマートフォンについても同様とする意見が主流だったが、確定していなかった。
そこに登場した、アップルのiPadがまた状況を大きく変えて、複雑にした。
アンドロイドが搭載機器の多さを戦略にしたが、アップルは同じプラットホームで動作する機器の種類を増やした。
タブレット端末はパソコン業界の長年のテーマで有り、過去には誰も成功しなかった。
アップルの発表は好意的に取られた面と、何が変わったのかという否定的な面で迎えられた、画面サイズがスマートフォンから変わっただけと見る人が多かったからだ。


結果は画面サイズの変更が殆どのコンテンツメディアを取り込むことに成功した。
それは、パソコンでもモバイルフォンでもない新しいプラットホームとなった。
その可能性は、中心人物のジョブズの死と重なり、複雑な加速をした。
多くの人にチャンスを与え、参加に遅れた者にはチャンスを逃す辛い結果となった。
2013年の執筆時点で著者は競う2つのプラットホームに1つの結末予測をしているかの様に見える。


3章・感想


本書の発行時の売りの1つが、即日性だ。
だが情報産業の変化は激しく、日本紹介の2016年は本書が書かれた2013年から既に時は経過しこの分野では充分長い期間だ。
もう一つは、アメリカと日本の事情がかなり違う事で、たとえ同じ方向に進むとしても時間差があることだ。
従って本書の内容は日本人には、分かり難い面は多い。


そして、たぶん深刻なのは日本あるいは日本企業が登場しない事だ。
これはアメリカで書かれたアメリカ圏向けの本だと言う理由だけとは思えない。
本書に書かれている「参加に遅れた者にはチャンスを逃す辛い結果となった。」は日本全体に対して該当したかの様だ。
そして、パソコンの将来もマイクロソフトの事もいつしか記述から消えている事だ。
それはスマートフォンがパソコンとテレビとを吸収した・するだろうと断定している事と合わすと、マイクロソフトは日本同様に「チャンスを逃し参加に遅れた」として扱われている事を意味する。(スマートフォンのはタブレット端末が含まれる)


そして、3年経過した2016年現在はパソコンが消えゆく機器とする本著の見方は、結論が出てはいないが静かに進んでいる。
同時にテレビ(アメリカでは有料ケーブルテレビが主だ)と、多数の映像・音楽コンテンツを持つ・産む産業の未来も吸収を予測する。


日本では、スマートフォンは広く認知され社会的な問題も議論されている。
一方では、iPadを最初とするタブレット端末については、本書の内容ほどには深く議論されていないようだ。
それは、3年経過した2016年現在でもタブレット端末を含むスマートフォンがパソコンとテレビとを吸収するという本書の著者の主張を認めていないか、既に乗り遅れたのかのどちらの可能性が心配される。
勿論、本書の著者の主張が日本では正しくないか、時間的にかなり遅れるという可能性は存在する。
2016年現在で、日本が例外的にアップルがアンドロイド連合との比較で世界で一番シェアが多いという特異な地域性も絡む可能性はある。


 (2016/06/26)

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