装飾品と機能品

「情報機器」のイメージは「機能」だ。
勿論、デザインも重視されるが「機能」なくして語られない。
例えば「機能」には、「モバイル性」「通信」「マルチメディア」「インターフェース」などあらゆる事が含まれる。
そして、その機能に対価を払う。
コストパフォーマンスも殆どが「機能」対「費用」となる。


一方では、商品には「装飾品」が存在する。
純粋な「装飾品」が存在するかどうかは、個人で差はあると思うが、「機能」以外の所に価値を見出す。
アクセサリーやインテリアに多く、デザインや材料の比重が高い。


時計とくに腕時計は、最初は「機能」に注目された。
所が、ゼンマイの手巻きから自動巻きへ、そして大陽電池方式への移行があった。
一方では、機械式時間カウント方式から水晶や音叉等の振動数を利用した電子化が行われた。
これで大きく状況が変わり、大量生産と低コスト生産で同等以上の「機能」の提供が可能になり、コストパフォーマンスが著しく向上し用途やユーザーが急激に広がった。
ただし、「装飾品」としての比重が高い腕時計も併行して存在する。


情報機器のモバイル化は、音楽・カメラ・ノートパソコン等の多数の機器に広がった。
特に携帯電話の普及と、それを一部の機能として継承しノートパソコンの機能も限定的に組み込んだスマートホーンが登場して、一気に加速した。
ただし、従来型の携帯電話やノートパソコンも併行して存在する。


スマートホーンの普及は、その後継または後続製品に注目が行き、その1つとしてのウエラブル機器に注目が進み、腕時計も対象となった。
「ウエラブル=身につける」は、現在は腕時計の他にリストバンドと眼鏡が発表されているが、種類はまだまだ増える事が予想される。
現状は、「機能」または、「機能」対「費用」面で不満の声もある。
スマートフォーンの端末機能なので、当然に予想される事である。


アップルから発表された「Apple Watch」は、素材で3種類ある。
1:アルミ製
2:ステンレス製
3:金・プラチナ製
  
3:金・プラチナ製は情報機器としての「機能」を持ってはいるが、他方で「装飾品」であり、1:アルミ製と比較して100倍の価格差がある。
その加算費用は全て「装飾品」価格だ。


情報機器としての注目度に「装飾品」の要素が加わると事情が変わる可能性がある。
事情とは顧客層や購入者であり、購入と使用の目的も変わる可能性があるからだ。
情報機器は熟練操作と消耗品的な使用が前提にあるが、「装飾品」には必ずしもその全ては要求されない。


「装飾品」としての情報機器は腕時計が最初ではない。
例えば、欧州のN社がセレブ用の携帯電話を製作していた。
機能的にもフル装備だが、貴金属主体の材料構成で基本価格も100倍高く、オプションで宝石類を飾ると上限価格はなしとなる。


普段の生活で持ち運ぶもの、あるいは単なる「装飾品」は意外と沢山存在する。
それらが「機能」を持っても、電子化されても「装飾品」としての存在感が継続すれば、あるいは単なる「装飾品」を置き換える可能性はある。
情報機器には寿命や故障は存在するが、機能部分のモジュール単位での交換手法はほぼ確立している。


果たして、新たな市場開拓になるか、従来市場の変化になるか、別の注目点が生まれつつある。

 (2015/03/12)

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