熱伝導雑感
物理学において、古くは熱学、今は熱統計力学で熱伝導を習います。
熱計算はあらゆる機器設計で重要ですが、コンピュータの発達前までは必ずしもいつも理論的に追求してきたわけではありません。
ひとことで言えば、伝導・対流・輻射のうちの対流があまり理論向きでなかった事が原因と思います。
しかし、機器の小型化で実測が難しくなって来た事と、コンピュータシュミレーションがやりやすくなった事で見直す傾向にあります。
実測の問題は、ハイデンブルグの不確定性原理での観測の問題ほどシビアでなかっても小型機器では測定は困難になっています。
昔は理論では、偏微分方程式を解くのが主でしたが、フーリエ級数展開を使う方法も有効です。
いずれにしても、人間が計算するのは大変でした。
自然界の法則は類似しており、特に進んでいる力学・電気等と同じに考えるとずいぶんと手間が省けます。
熱伝導を熱抵抗と考え、電気のオームの法則に置き換える方法は工学出身者などにも分かりやすく現実には一番沢山、用いられました。
電磁気学のヴィーデマン・フランツの法則(電気伝導の良い物質は、熱伝導も良い)からも類似の要素が感じられます。
等価式法とも呼ばれるこの方法は、理解しやすくしかも、熱伝導の3要素の分離が近似的に可能です。
その結果、対策も考えやすいです。
人間というのはしばしば曖昧で勘違いをするものです。
熱を発生するものにアルミなどでヒートシンク(熱放射板)をつけます。
これに関して「アルミを貼り合わせると熱に強くなる」と思っている人がいます。
何かに別の材質(たとえばアルミ)を貼りあわす複合物が熱に強い筈がありません(熱膨張係数に差が生じ、破壊しやすくなります。)。
正しくは「アルミ等のヒートシンクをつけると、熱に対して温度が上昇しにくくなる」です。一旦温度が上昇してしまうと、逆に複合物の欠点が現れて弱い材質となります。
「熱に強い」という曖昧な言い方が、どこかで「高温に強い」という間違った意味に変わってしまう訳です。
最初の発言者がよく分かっていなかったのか、聞いた人が間違った解釈ををしたのかは不明ですが、間違いはあちらこちらで起きるものです。