経営における組織の構築方法(縦組織と横組織)

よほどの小規模の会社でなければ、製造・開発・その他をひとりで担当する事はありません。
分担しておこなうのが普通です。
分担の方法は無数にありますが、基本は縦組織と横組織です。
縦組織というのはひとつのグループが基本的に初めから終わりまでの作業を行う事です。
横組織とは仕事の内容によりグループを作り、ひとつの製品を順序よくグループ単位で引き継いで行く方法をとる組織です。
全ての経営者が悩むのは、それぞれに長所と欠点があり絶対的決め手がないことにあります。
しかしながら、経営に於いて「長期計画」>「中期計画」>「短期計画」と具体的にして行く段階で、組織は明確な形を取る必要があります。
現存の組織に合わせて長期計画を作成する事は意味を持ちませんが、経営計画を実施するにあたり、計画に合った組織を構築する事は非常に大切です。
むしろ組織化に失敗すると経営計画は成功しないといってよいでしょう。

たとえば製造を例にしましょう。特に技術開発や設計が絡む場合が分かりやすいです。
縦組織では工程が長い程に多くの人数または、多くの技能を持つ人を要します。
組織を何を基準で決めたかにもよりますが、一般に複数のグループに分かれる事になります。
この場合の利点は組織長をはじめ多くの人が全体を管理して、計画と実進捗をチェックする事にあります。
一方欠点は、工程バランスが取り難いことにあります。
グループ毎に装置・作業者を配置すると空き工程が発生しやすくなります。
作業者の多能化をはかることは当然に必要ですが、装置面の効率低下は避けられません。
これを避けるために、縦組織では装置はグループ間で共用する事にしますと、複数グループ間での調整・工程計画が必要になります。
そして、ボトムネックになる計画とのずれが大きいグループが絶えず発生します。

横組織では、作業者・工程計画では有利になります。
特に管理グループを別に設ける事でより改善される可能性があります。
しかし管理グループといっても、設計も含めた広い範囲を含めることは困難です。
そして、最悪の場合は全体の計画と進捗を見ることが難しい事が欠点になります。
勿論、計画は作成しますが、横組織のグループは最終工程のみが、対外的な納期をもちます。
他は内部納期です。
実際はどちらも同じ程度に重要ですが、どうにかすると内部納期は軽く扱われ結果的に最終工程に全ての歪みが集まる傾向が多くみられます。
管理グループを設ける事は誰でも考え、実施される事が多いと思います。
このグループでは、全工程を縦にみるので横組織に縦組織を一部加えて改良されたように見えます。
しかし、実際は大きな落とし穴を見逃してしまう事がしばしばあります。

縦組織では、責任・成果等の責任が一応は明確です。一応というのは縦組織のグループが複数にある場合に、その間で先にものべた調整が必要になる場合、その優先度の判断で結果に影響が出るからです。
しかしながら責任の所在が明確なのは見逃せません。
横組織+管理グループの落とし穴は、実は責任の所在が不明確になる事にあります。
そもそも管理グループを作る事は、そこの計画に従いなんらかの作業等を行うグループが存在すり事を示します。
そしてそのグループ自体が横組織で複数に分かれています。
末端のグループ(例えば作業係)とこれらをまとめるグループ(例えば製造課)、これに管理グループを加えた場合に成果はどのように評価され、責任の所在はどこにあるのでしょうか。

計画があり目標が同じであれば、重要でないと考える人はこの時点で経営的に失敗しています。
現在・そしてこれからの経営は成果主義・実力主義へ移行する事に疑問を持つ人はいません。
しかし、その「ものさし」を何にするのかを明確に出来なければ、成功はあり得ません。
最後の詰めの所でうまく行かないのはいつも、この事が明確に出来ず、あるいは明確に出来ても責任の所在が明確に出来ていないことにあります。
いつも、権限なきところに責任なしといいます。
成果・実力は権限があってはじめて実現できると考えるべきです。
したがって、責任の所在が不明確ということは、権限も不明確で成果主義・実力主義はたてまえで終わる事になります。
ここまでくれば、あきらかですが見かけの組織を変えても根本的な意味はありません。
組織はそれに権限と責任が明確に付くことで始めて機能します。

では、なぜ失敗例が多いのでしょうか?。
経営者に問題があることはあきらかです。
経営者が本当に権限と同時に責任を持って行動しているか、そしてそれを前提に計画と組織を構築しているかを調べれば分かる事です。
ひとりあるいは少数の人間にそれを求めるのは無理というのが古い経営者の反論ですが、真の意味での権限の委譲を行っておれば可能になります。
誰に権限の委譲を行うのかわからないのでは経営はやはり失敗です。
組織を作ってから責任者を決めるのか、責任者を決めてから組織を作るのかもこの時点で明らかです。
組織の構築を含めた権限を委譲されていなければ、責任のみ押しつける事になります。
責任と権限を委譲しても報告義務が消えるわけではありません。
経営者が報告内容をチェックして疑問点を納得ができるまで議論することに問題があろう筈がありません。
権限を委譲しても、委譲元の責任が消える訳ではありません。
権限を委譲する場合は、具体的な報告義務と委譲範囲を双方で明確にしておく必要があります。
まかせてあるので知らない、そこまでは任せていない等が後で発生するのは典型的な失敗例です。
権限の委譲と同様に重要なのが、責任者不在時の代理担当者とその具体的代理権限内容です。
100%代理が必要か代理が置けるかも明白にしておく必要があります。
すなわち自然発生的代理と、形の上では代理に近いけれども期間限定の権限委譲があります。
一般には法律問題関係などで代理を認めない権限が存在します。
権限委譲は、委譲した側は正式に取り消すまでは委譲者を無視して決定を行う事は出来ません。
これを行うと、責任の不明確化になり組織が混乱します。
日本では、代理を必要とする場合に権限委譲元を代理とする事が多く、結果的に権限委譲が不明確になっている場合があります。
これ自体が問題ではありませんが、代理業務の内容は正確に報告の義務があります。
これは、権限委譲元が委譲先の代理を行った時も同様です。
見かけ上は、報告の方向が変わるだけですが勝手に省いてしまうと組織の混乱に繋がります。

日本的ではなくISOやQS9000等でも、多機能チームによる意志決定を要求しています。
また、各段階(工程)で経営者のサポートにより進める事も明記されています。
この事は段階的な権限の委譲がおこなわれて、その人たちの合意で作業を進めて行くことが要求されていることが分かります。
多機能チームとは組織化された各グループと考えてよいと思います。
決定事項・決定が困難だが決定が必要な事は経営者のサポートで進める事になります。
この時の経営者とは、組織を作った者あるいはその組織の権限を委譲された者をさします。
権限の委譲と報告については、個人が委譲された範囲を全て管理できるまで細分化されてゆきます。
管理できない範囲を権限としてもっていても、有効に機能させる事はできません。
組織が大きい場合は最終的にかなり細分化されるので、どこかにボトルネックが出来てしまう可能性が高くなります。
これに気づき対策できるのは、ひとつ上の組織の長(ボトルネックの所に権限を委譲した、あるいは自らは行っていなくても組織上は報告を受けるべき立場にある者)です。
対策は簡単ではありません。
しかし、行わなければ全体の組織に悪影響を及ぼすことを認識する必要があります。
経営者が権限と責任を持ち、機能する組織で仕事を出来る環境にある。
それと共に共有する目標と計画がある。
このことが成り立つことで初めて、経営と言えると思います。

さて、長期・中期・短期計画が出来、組織が出来たとして現在では組織の情報化は避ける事が出来ません。
しかし、この情報化計画がスムーズに作成・進行・実施できたケースをあまり聞いた事がありません。
多くの経営者にとっては本業は情報化ではない筈です。
従って情報化は本業の手段ですが、情報化を目標・計画に設定してしまう場合が起こりがちです。
ここまでの失敗は通常有りませんが、目標達成イメージを作成する時に本業の実務に精通した者を加えず、情報担当者と企画担当等のみで行ってしまう場合があります。
また、多機能チームで実施しても事前の会議目的等の通達・認識が不充分で情報が専門でない参加者が内容の理解と十分な準備なしで開催してしまう事があります。
結果として多機能チームであっても、実質は認識の不統一が生じて全く現実とはかけ離れた計画になってしまう事が発生します。
この状態で進むと、使用レベルに達しないシステムが出来てしまったり、人間が機械に合わせるというはなはだ不合理なシステムが出来てしまいます。
経営についても情報化の時代になっていますが、あくまでもエイド機能でありデータ入力や決定などは経営者自身が確認及び実施する必要があります。
情報化をボトムダウンして行く段階で重要なのは、管理者の明確化と能力の把握、実作業者の能力と情報化の必要性の認識と作業性です。
実作業者以外には情報化は有効な事は常識的にかなり多く考える事ができます。
しかし本業を実際に行っている実作業者にとっての有効性を明確に掴んでいないと思えるケースがしばしばあります。
簡単に言えば、実作業者にとっては余分な作業が増えたイメージになります。
この重要なポイントを外すと、収集データの不備が発生して、もしも事前に予想していないならば情報化自体が末端で停滞します。
情報化計画を最奥まで作成する者は、「実作業者が必ず入力する仕組みまたは、自動的にデータが入力される仕組み」を作る必要があります。
別の言葉で言えば、「作業者が情報化システムを利用する事で多大な利益を得られる仕組み」を作る必要があります。
これが達成できれば、末端からの情報データの収集が可能になり、システムが完成しておれば経営者の判断にも有効に働く事が可能になります。
もし組織が非常に大きい場合、外部にも情報化を広げたい場合(実はほとんどの会社が考えているので、極めて重要です)は、ここにも考慮が必要です。
なぜならば、情報化作業者は内部の実作業を詳しく知らないと共に、全体及び外部などへのより広い事情を知らない事がしばしば見られます。
結果的には個人的に慣れたハードウエア・システムを利用したり、自社や系列会社のシステムを当面の優位差で選んでしまいがちになります。
これは選択のひとつですが、システム開発の最終結果を左右する重要な事であり、目先の利点だけで決定できる事では有りません。
機種の互換性・データの互換と変換性、長期サポート、長期ランニングコストを含めて最重要経営決定事項と認識していなければならない事です。

さて、「経営>計画>情報化」の見方で話を進めてきました。
・計画=ビジョンのない経営は成功は難しいこと。
・経営>計画には組織作りが重要でありしかも権限委譲が正しく行われていること。
・権限と責任は同時に存在すること。
・現在では、計画に情報化を絡める事が避けられない事。
・情報化はあくまでも手段であって、本業にたいしては目的ではないこと。
・情報化は難しいが、成功すれば経営も含めて非常に効果があること。
等が本論の結論です。
個々には分かっている事がほとんどですが、どこかに弱点が存在するとボトムネックになり経営自体に悪影響を及ぼす事を深く認識する必要があります。

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