コエンザイムQ10とは、体内のエネルギー源であるATPを作り出すために必要な補酵素の一つである。細胞や組織の生命活動を補助する働きがあるため、心臓疾患や高血圧などに利用される。また、強力な抗酸化作用をもつため、さまざまな生活習慣病の予防効果も期待される。コエンザイムQ10は、体内に広く分布する分子であり、食事からも摂取できる。特に、エネルギー代謝の盛んな心筋や骨格筋、肝臓や腎臓などに多く存在する。コエンザイムQ10にはいくつかの種類があるが、ヒトに存在するのは主に、コエンザイムQ10である。コエンザイムQ10は、ミトコンドリアの呼吸鎖において作用し、ATP産生に関する他、強力な抗酸化作用をもつ分子であるため、生活習慣病の改善や予防に効果があると考えられる。たとえば、DHCの研究グループが2003年の国際栄養食事療法会議で発表した臨床試験のデータでは、コエンザイムQ10と抗酸化ビタミンの投与によって、酸化ストレス障害が減少することが示された。コエンザイムQ10は、加齢によって減少する。また、ガン、心臓疾患、肝臓や膵臓疾患、パーキンソン病の患者では、コエンザイムQ10の血中濃度が低いことが知られている。そのため、コエンザイムQ10をサプリメントで補うことによってこれらの疾患の予防や改善効果が得られると推奨されている。
コエンザイムQ10は、さまざまな疾患に対して効果が検証されていきた。まず、心筋梗塞患者144人に120mgのコエンザイムQ10を4週間投与した研究では、胸痛や不整脈の頻度などにおいて改善が認められた。狭心症に対する研究では、効果が認められないとするものもあれば、狭心症発作が減少したという結果が得られた臨床試験も報告されている。心不全についてコエンザイムQ10の効果を検証した研究では、8つのうち7つの臨床試験において心機能の改善が認められた。高血圧症の患者59人にコエンザイムQ10を投与した研究では、収縮期血圧と拡張期血圧の両方で低下が報告された。また、コエンザイムQ10投与によって、心臓血管バイパス術施行の際の虚血に伴う障害が改善されたという臨床試験も知られている。最近、パーキンソン病の初期症状に対しても、高用量のコエンザイムQ10が効果的であったとする研究が報告され、注目されている。ガンについては、乳ガン患者に効果があったとする報告もあるが、臨床研究が十分ではない。その他、悪玉コレステロール酸化の予防効果、過酸化脂質の減少などが報告されている。
通常の食材で近い成分であり、特に問題となる健康被害や副作用は知られていない。アメリカでは広く利用されており、安全性の高いサプリメントである。稀に消化器症状を認められることがある。医薬品との相互作用として、高コレステロール血症の薬を服用すると、コエンザイムQ10が減少することが知られている。したがって、コレステロール降下薬を服用している場合は、コエンザイムQ10で補給するほうが好ましいだろう。
効用・効果
狭心症や心筋梗塞、心不全などに対する予防や改善作用。
高血圧や糖尿病などの予防や改善作用。
抗酸化作用および抗ガン作用。