絆〜始〜

シャ・・・ン。 シャンシャ・・・ン。 頭の中で鈴の音が響いている。物忌みの日は何時もそうだ。だけど今日は、重々しい声も聞こえる。 ―――神子――― 誰？私を呼ぶのは誰？ ―――我が神子――― 龍神様？ ―――お前は力をつけた。龍神は、龍神の神子の力と繋がっている。その力で龍神を呼ぶ事が出来る――― 呼んだら、私はどうなるんですか？龍神様に、飲み込まれてしまうんですか？ ―――力が強ければ。絆が強ければ。そなたは己を保てる。我が気を受けてなお、黒龍の気を受けてなお、耐えられる――― 絆？ ―――お前を守る男との絆が強ければ――― 私を守る男？え？どういう事？ 「神子殿！」 ―――お前の願いは。男の望みが。叶えられる――― 龍神様？待って！ 「神子殿！外に出てはなりません。お気をしっかりお持ち下さい。」 え？頼忠さんの声？ 「龍神よ、どうかこの頼忠に神子を守る力をお与え下さい！」 龍神様の声は聞こえない。でも、頼忠さんが何か言っている。 「お願いです。私の前から消えないで下さい。神子殿！」 私を呼んでいる。でも・・・意識が・・・・・・遠のいていく・・・・・・・・・。 「神子殿！」 「神子殿！」 「んん・・・あ、れ？より・・・た、ださん？」 目覚めた花梨は頼忠を見上げた。 「神子殿。大丈夫で御座いますか？ご気分はいかがですか？」 花梨を抱き締めたまま、顔を覗き込んだ。 「気分・・・？」 激しい動悸で苦しいほどだ。だがこれは、不安が原因。 「神子殿？」 「お前を守る男との絆・・・・・・。」 「神子殿？何とおっしゃいましたか？」 小さすぎる呟きは頼忠の耳には届かなかった。訊き返す。 「頼忠さん・・・怖い。」 龍神の力は強すぎる。龍神に飲み込まれてしまうかもしれない事が、頼忠の傍にいられなくなる事が、怖い。 「神子殿。頼忠がお傍におります。神子殿を、貴女をお守り致します。」 しがみ付いてきた花梨を、深く、強く抱き締める。 「う・・・ん・・・・・・。」 信じてはいるが、それでも恐怖心は消えない。京を救えば、花梨は自分の故郷に帰れる。そう、押し付けられた運命でも、諦めずに努力すれば変えられる。だが、花梨が京に連れて来られた事実は無くならない。それを止める事など、出来はしなかった。圧倒的な強さ、急激な流れの中での運命は。 「貴女をお守り致します。必ず。」 「もう少し・・・近くに来てくれる？」 確かな絆が欲しい。どんな運命にも打ち勝つ、強い絆が。 「神子殿？」 「震えを・・・止めて欲しいの・・・・・・・・・。」 「神子殿。ご自分のおっしゃっている意味を、ご理解し―――。」しかし、まっすぐに見つめられると言葉が止まった。逆らう考えなど、頭にも身体にも、もうどこにも無い。「貴女のお望みのままに・・・・・・・・・。」 ゆっくりと唇を重ね、愛しい少女の望む絆を結んだ。 「どんな運命でも・・・貴方の腕の中に戻れますように――――――。」

注意・・・第４章後半・最後の物忌み。〜京ＥＤ〜。 これは 『―――絆〜従〜―――』（予定全６話）→ 『―――絆〜反〜―――』（予定全６話）→ 『―――絆〜歩〜―――』（予定全９話）→ 『―――絆〜終〜―――』→ 『―――絆〜後日談〜―――』（予定全２話&２話）と、続きます。 2007/01/28　01:56:37　ＢＹ銀竜草 ※全て完結致しました。 2009/03/05 00:33:25　ＢＹ銀竜草

※注意※

１・・・オリジナルキャラが多数登場。その内の一人は↑の内容で想像出来ますね。 ２・・・彼らは出張ります。人によっては八葉以上に。 ３・・・『―――絆〜反〜―――』の一部分、暴力シーンがあります。 ４・・・多くの事柄を文章にしやすいように捏造してあります。 以上の事を気にしないと言う方は、下の『―――絆〜従１〜―――』へ。