「はやぶさ」の3本の映画

1:
JAXAの小宇宙探査機「はやぶさ」については、国家プロジェクトという性格と人類始めての内容と、技術的要素と記録的要素などから興味を持たれた。
通常のドキュメンタリー映画製作だけでなく、一般公開の娯楽映画が1年以下に3本製作された。
娯楽映画と言っても、記録性の部分は変える必要もなくその部分の類似性は必然で、またいずれもJAXAの協力を得て製作されているので、むしろその部分に本質的な差は生じない。
ただし、長期間の中からどの部分をどの程度の時間抜き出すかだけでも、相当に大きな差がしゅうじる。

記録性が高いとは言え、娯楽映画として制作上の主眼とするものを持たせるのだが、3本がその部分が異なり、結果として記録部の抜き出しと比率にも影響を及ぼし、それぞれ独自の方向性を持つことになった。

1:はやぶさ/HAYABUSA
監督:堤幸彦
出演:竹内結子・西田敏行・佐野四郎
  
2:はやぶさ 遥かなる帰還
監督:瀧本智行
出演:渡辺謙・山崎努・夏川結衣
  
3:おかえり、はやぶさ
監督:本木克英
出演:藤原竜也・杏・三浦友和

2:
原作と映像化の結果は異なるが、影響は大きい。
1:は一般向け広報の「「はやぶさ君の冒険日誌」小野瀬直美」を原案とする。
2:は、科学的単行本の山根一真「はやぶさの帰還」を原作とする。
3:は原作はクレジットされていない。

1:広報担当教授と博士を目指すアルバイト員女性の視点が主体となり、そのニュースや広報を見る立場が副視点となる。
発射に関しての地元との交渉や、計画遅延に関しての政府担当との予算交渉や展示会場での説明員として子供と接っしたり着陸などのネット中継をするのは本作独自だ。
当然に重要場面では、記者会見・公式発表が描かれる。

2:プロジェクト本体が中心となる、あえていえば中心人物の視点とも言えるだろう。
場面では、民間企業との共同開発での民間所属の活躍と会社との板はさみや、NASAとの関わりや試作段階で関わった中小会社の社長とその娘で新聞社の宇宙担当は独自のものだ。

3:視点を多岐に置くことで成立させた。
プロジェクト担当者のみならずその家族や、天文台や、同時期の火星探査機の失敗とそのプロジェクトリーダー家族を描く。
そしてそれらを繋ぐ人物が存在し視点となる。
「はやぶさ」の開発者と管制員以外の登場人物が一番沢山登場する。

何故に違うかは、同じものを複数作る必要がないのは明らかだが、ドキュメンタリー映画が存在する事も大きい。
一般公開映画でも、ドキュメンタリーを易しくという立場は、時間的にも結局は二番煎じになる。

その結果として、全てがプロジェクトに関わった人間を描く事も上位に考えた事は必然だ。
膨大な期間であり関係者だけでも無理だが、その周囲の一部関係者は広く拡がり、国民に広く関心を持たせ、海外も注目したとあれば、誰を描くかの選択が映画企画段階の課題となった。

3:
完成された映画が上記の結論だとして、その過程を見るとしよう。

まずは、プロジェクトリーダーと各担当のリーダーは登場するのは必然で、それ以外にその中の技術者が描かれるかその他になるかは微妙に変わる、期間が長いと長期関わった人と途中で参加した人と、何らかの理由で仕事が変わった人が存在する。
実際に具体的日程発表から発射、そして期間延長しての帰還自体が複数年で、その中でも人の移動は起きている。

1:では技術者の移動と、視点役の広報女性のアルバイト参加から担当として見たり参加したりしながら自らの挫折を経ての博士号取得と「はやぶさ」プロジェクトの講演という成長という時間経過を見せる。
2:では初期に関わった中小企業の社長の回顧と、その娘が発射前から宇宙担当の記者になり途中で担当が変わるが帰還は見届ける変化を見せる。
3:はより多数の出来事を描くが、技術者が妻の病気手術で辞職してアメリカに行き成功して帰国して帰還を見る場面や、若い技術者が小さな時に宇宙に関する説明会を聞いてそれがきっかけでその道に進んだ事が描かれる。

「はやぶさ」の時間経過では小惑星「イカロス」から飛び立った後に制御不明になり、長期間後の探査後に見つかり徐々に回復させ、迂回コースで地球の戻す部分が長い。
この部分の描き方もそれぞれ工夫が異なる。
長く地味な探索は描くのが難しいのだ。

1:では人に見立てた「ハヤブサくん」が見つけてくれとつぶやき、広報の担当者が展示を見に来た少年の質問に悩みながら答える。
2:では、プロジェクトリーダーがNASAを訪問中に発見の連絡を受ける。
3:では、臼田天文台が探す様子と、そこで信号を見つける様子が描かれる。

またそんな状態でも地球帰還時の担当チームが訓練している様子が描かれる。

4:
業績という面で知られたリーダーをもっとも深く描くのはいわば、直球的な手法だ。
それに各担当リーダーを描くのも、その延長にある。
それに忠実なのが、2:だ。
その代わりにそれ以外は、中小工場社長と娘で新聞者の担当者の2人に比重を置いた格好になった。
大会社の共同開発者の微妙な立場、と合わせて、3人で異なる立場を代表させた。
どれも、プロジェクトに近い人達と言える。

「はやぶさ」プロジェクトでは広報担当者の優秀さが目立った、全てを知りつくし対応した。
国家プロジェクトでは広報は重要であり、そこはプロジェクトの内部と外部を見る所だ、そしてそこを視点にした1:は国家プロジェクトとしての視点が強いとも言える。
3:は多視点だが、一番印象的なのは、「はやぶさ」航行中に起きた火星探査機「のぞみ」の故障による軌道突入中止の判断だ、それはプロジェクトの失敗を意味し、プロジェクトリーダーは失望の日をおくる事になったそれを本人・家族や周囲から見る。
科学に失敗は付きものだが、一生に1度あるかどうかの国家プロジェクトの失敗がどの様な打撃を与えるは想像を超えるだろう。

参考
本件は映画を観た感想だが、梗概に当たる物とJAXAサイトを下記に載せる。
 
はやぶさ/HAYABUSA
 
はやぶさ 遥かなる帰還
 
おかえり、はやぶさ
 
JAXA

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