「夜の訪問者」を観る

どうしても、ミステリタッチ絡みの作品を選んでしまうのは好みの問題なので仕方がないです。

脚本・演出の狙いが異なるテーマでも、自分勝手の見方になってしまいます。

大阪新劇協議会の劇団息吹で演じられた本作も、ミステリまたはサスペンスタッチですが、それだけで観るといまいちの感想になってしまいます。

作品の主題が、「個人の勝手で無責任な行動が積み重なることで知らず知らずに他人を不幸にしている、

そして素直に反省する者も言い訳で責任を逃れようとする者もいる」ことにあるのは、大筋では間違っていないと思います。

舞台はある裕福な一家、しかしひとりひとりが勝手な行動を行っている面が見られる。

そこにある夜に一人の訪問者がある。

警察官と名乗るその人物は、その日に一人の女性が自殺した事を述べ、その原因を調べた結果を次第に明らかにして行く。

はじめは関係ないと言っていた一家も、次第に取り乱し始める。

そこに先に述べた様な、人により色々な反応が見られます。

はたして、藁にもすがろうとした女性の藁を1本ずつ断ち切って行くような結果になった各個人の行動には、どの様な責任があるのでしょうか。

誰にも間違いはありますが、はたして体裁や思いやり不足の行動が招いた結果、

しかもその積み重ねのひとつひとつにはどの様な責任があるのでしょうか。

100%の人間はいませんが、素直に反省できる人間もまた少ないことを表している作品です。

劇の進行と共に、次第に展開が予想できますのでサスペンス的な見方では不満がありますが、

元々複数の原因を次第に明らかにして行く目的で構成されているだけなのでそれは見方が違うだけといえます。

少ない場面展開で、少数の出演者で話を意外な方向に展開してゆくのは新劇の醍醐味です。

ささやかな1本の藁、しかし場合によっては「最期の1本の藁」かもしれません。

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