演劇・映画・ドラマの原作について-「座頭市」

演劇・映画・ドラマには通常は脚本があります。
テレビのバラエティや各種番組でも放送作家による台本があります。
台本・脚本・シナリオ等の呼び方はかなり曖昧になりつつあります。
演劇・映画・ドラマでは、脚本の他に原作がある事も多いですが、以前はその場合は脚色と言われていましたが、現在では脚色と脚本の区別は少なくなっています。
また、オリジナル脚本の場合でも、脚本作家が脚本・原作と表記する事もあります。
同一人物の時に著作権で何か異なるかは知りません。
最近は、原作ではなく原案の表記も増えました。これも差と著作権の扱いの差は知りません。
原作と脚本と演劇・映画・ドラマとの関係から第3者的に、推測が出来る場合と不明の場合が混ざっており、その内実はそれぞれの裏事情が存在すると思えます。
原作と演劇・映画・ドラマが存在して、脚本の明記がない事例もある様です。

著作権絡みの時は、何がオリジナルかで決まるのが自然に思えますが、そう単純ではないです。
そもそも、原作が有ったとしてどの程度に脚本家が参考にしているかは判断は簡単では有りません。
本という媒体と映像との違い、映像でも演劇・映画・ドラマでは表現や時間など制約が異なり、実現出来る様に作るのが脚本です。
もっと言えば、脚本通りに演出・監督するかはまた別の問題です。
脚本と監督が同一の時は脚本に多くを盛り込んでいる事は想像出来ます。
また題名・キャラクターのみを借用する場合にどの様に扱うかも決まりがなさそうです。
連続ドラマでは原作が不足して、オリジナル脚本になる場合は多いですが、原案に変わるケースは少ないですが、原案で充分と言えるでしょう。
原作と脚本が差が大きい場合は、当然に予想されるのですが、原作者からクレームが出る事もたまにあります。
ただ、原作通りは無理な事が多いので事前に原作の演劇・映画・ドラマの許可を出さなければ良い訳です、原作通りは期待しない方が普通です。
ただ著作権は作者の死後は権利期間は、相続者が保持するので作者の意向がどこまで反映されるかは保証されません。
実際に作者の死後に初めて、演劇・映画・ドラマ化はあります。

それぞれ、個別検証して見るのも面白いかもしれませんが、1例として「座頭市」を取りあげます。
詳細は縄田一男編「時代小説英雄伝・座頭市」に詳しいです。
「座頭市」は20数作の映画と、多くのドラマと派生作品になっています。
それには、「原作・子母沢寛」となっており、明確な原作は1作はあるだろうと思うのが普通ですが成立過程は、かなり異なります。
縄田氏の本によれば
「1:子母沢寛のエッセイに渡世人について書いた短文があり、その中で盲目の渡世人がいたらしい事。そしてあだ名を市と呼ばれていた事の記述があります。」
「2:かなり後期に子母沢寛の非常に短い小説(掌編)に映画・座頭市の第1作に近い内容が存在する。」
「3:1と2から、脚本家・犬塚稔がキャラクターもストーリーもオリジナルと言ってよい内容の映画「座頭市物語」の脚本を作り上げました。」
となります。

これは、果たして原作でしょうか。
これ以上に似た例は探せば見つかるでしょうが原作とした事を推察すれば、
1:参考にしたから、
2:原作者名があった方がインパクトがある、
3:その後多くのシリーズになる事を予測しなかった、
4:原作者名を入れる事でキャラクターの優先使用をアピールした、等が考えられます。
特に3は大きいと思います、その後のシリーズ化とキャラクターの定着は予想外だったのは推測出来ます。
後は流れで原作として続いたのでしょう。

原作があると脚本作成は容易かの質問は、その場合もあるとは言えますが、文章と映像という異なる表現方法では、オリジナル脚本制作並みの工夫とアイデアが無いと結果が出ないと思います。
私は、原作の有無は宣伝効果に有望と考えます。
また、映像のノベライズ本が書かれる事もしばしばあり、これは相互作用効果狙いでしょう。

座頭市は脚本によって初めて詳しい性格付けがされました。
時代劇のヒーローでも特異なキャラクターは結果から見れば日本人好みで類似が少なく、定着しました。
座頭市はひとり歩きをはじめて、他の企画も最近は作られています。
例えば、ビートたけしの「座頭市」や綾瀬はるかの「ICHI」等です。
これらは、脚本家・犬塚稔を踏襲した部分と離れた部分が混在しています。
しかし、成立過程を見れば、原作との距離に差が変わったとは必ずしも言えないでしょう。

映像における原作は広告効果という私の仮説は程度は異なってもゼロではないでしょう。
題名自体に原作者名をつけたテレビドラマや、原作を全面に押し出した映画のプロモーションを見ればあきらかでしょう。

作者から原案でないと許可がとれない場合等の事情以外は、原作表示で駄目な理由は明確ではありません。

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