演劇「こうべ曼荼羅」を観る
「大阪新劇団協議会」では毎年各劇団ごとにフェステイバルと称して競作?を演じています。
一応、選考と表彰もあります。
そして一番最後に、全参加劇団の共作で演劇を行います。
本作品は、2000年度の最後として、2001年に開催されました。
題名からも分かるように「阪神大震災」時の神戸のある病院が舞台となって話がすすんでゆきます。
脚本家の清水巌氏は3-5年後に書いたと述べています。
私も被災者のひとりとしては、大きな出来事の割には限られたメデイア以外ではあまり対象にされていない様に感じていました。
大阪は直接の被害は少なかったものの、直接に触れる機会が多く、そこで演劇が行われることは偶然ではないでしょう。
現実に色々な事が起こったのですから、話題にはことかかないですがむしろなにを主題にするか難しい面があります。
極限状態での数日間を色々な人々の立場から連続して演じて行くことで成り立たせています。
見る人によって、印象に残る場面は異なる構成といえます。
現実に多くの人が、異なった体験をしています。
まして見るひとの多くがなんらかの面で関係している状況ですから、
無理にひとつの事を押しつけるような演出よりも見る人の個人個人にまかせた内容を選んだのは正解だったように思います。
悪夢のような出来事が、ハッピーエンドになる訳はありませんが、
生き残った人がそれぞれの課題を持ちながら、起こってしまった事を受け入れて再出発する事は現実の事でもあり、
またそれしか方法がないと言えます。
修羅場と化した病院から、少しずつ再出発で人々が去ってゆく後半は作品としての盛り上がりなどと異なり、
見る人に多くの余韻を残したと思います。