演劇「ナイル殺人事件」を観る

10月3日夜、「覆面作家」シリーズのテレビ化も見ずに私は大阪・近鉄小劇場にいた。

第26回大阪新劇フェステイバルの中に、劇団往来が10月1日から4日までの間、「ナイル殺人事件」を上演するとなっていたので、観に来たのである。

原作;アガサ・クリステイ、翻訳;伊藤麻里子となっているが脚本家の名前がない。様子は分からないがとにかく演劇好きの私は来たのである。

パンフレットを観ると、翻訳者(現在大学講師)が5年前にイギリスに1年留学中に50以上の演劇を観て、何本かの脚本を持ち帰ったとのことである。

本場イギリスの演劇の日本での初演とのことである。

内容は巧妙に原作を演劇化しており、本格ミステリの演劇であった。

映画の「ナイル殺人事件」はスペクタルと言おうか、旅行記化していたが、演劇はまさしく本格推理であった。

演劇の最大の制約は場面の展開が困難なことである。いかに少なく、早くがポイントである。

吉本新喜劇の様に1場物は非常に少ないのである。また、ナレーターが説明するのも技術的に低いと評価される。

本作は完全な1場である。はじめから終わりまで、ナイルを航行する船の展望室のみで行われる。

舞台を変えずにスポットで別の場所を仮定したり、同じ舞台を違う場所として使うなどの細工はない。

小説を読んだひとは、可能かどうか考えて欲しい。1場で、会話以外の説明なしで2時間40分でいかに本格演劇化できたかである。

中心人物だけは同じである。事件とトリックも同じで有る。犯人も同じである。他はすべて上記の条件を満たすために変えてある。

ポアロは出てこない。実は小説も映画も見ている私も、伏線探しと探偵役探しだけで、充分に楽しめたのである。

登場人物が全員怪しい。パンフレットに載っているのに登場しない役者がいる。怪しい人物の中に探偵役がいる、工夫が見える。

事件が起きるのは2/3を過ぎてからである。すぐにクレームが来そうであるが、小説自体も事件はかなり遅くおこる。

演劇では、背景の説明が会話の中でされて、その中に伏線が入っているのである。事件までが長いのは逆に必要である。

途中1度舞台が暗転する、そうあのトリックの場面である。再び明るくなると、同じ場面が現れる。

当然、私は何が変わったか知っている、しかしもう1ヶ所変化が有ったのは見落とした。

少しあとで、さりげなく演じられたが伏線もきずかなかった。その後で証拠品が見つかる場面でやっと気がついた。

登場人物について書くとネタばれになるので省くが、かなり均等に登場が割り当てられており、全員主人公的で熱演であった。

再演の機会があれば、興味のある人は観劇される事を薦めておきます。

11月28日には、別の団体で浅田次郎の「鉄道員」があるので都合がつけば、観たいと思っている。

フェステイバル自体は14団体が参加で9月から12月まで大阪の各地で行われる。

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