連作短編集と、連続ドラマ

1:
日本推理作家協会賞が、長編及び連作短編集部門と短編部門になったのは2000年度からです。
それ以前は、長編賞、短編及び連作短編集部門でした。
要するに、連作短編集を短編として見るか、長編として見るかの差です。

連作短編集は、個々の短編があり、何か・・通常は主人公か背景・・が同じで、短編集全体が一つの長編にもなっている構成で作られます。
定義の方法で変わりますが、連作短編にはどこかにその傾向は含まれる事がありました。
それが、1冊の短編集の中で行われる事になり、それが主流になり、単純な個別の短編集がむしろ少なくなりました。

作者側の事情からは、短編集は出版機会が少ない事と売れにくい事がありました。
また、例えば同じ主人公でかつ同じ背景の作品・短編を長く書き続ける事が少なくなりました。
ならば、単行本1冊分の短編+単行本追加短編で1冊の単行本にしたいと考えます。
そして、単行本追加短編でそれ以前の短編が実は、パーツになり全体で長編となる趣向を取る方式が単行本化に向いています。
制約としては、事前に全体の構成を考えておく必要がある事と、1冊でなにかの区切りになる為に、続編が書きたい時は解決する謎の部分の設定に工夫が必要な事です。
また、長編要素はない連作短編集もあります。

日本推理作家協会賞が連作短編集を、短編から長編に変えた理由は、短編と連作短編集が有利な評価を得やすい事情でしょう。
どちらに入った方が正しく評価されるかの問題です。

ちなみに
1999年の短編及び連作短編集部門は北森鴻「花の下にて春死なむ」で過去に短編で候補になり、連作短編集で受賞しました。
1996年、黒川博行「カウント・プラン」
1995年、加納朋子「ガラスの麒麟」で連作短編集
1995年、山口雅也「日本殺人事件」で連作短編集

長編及び連作短編集部門に変更後の最初の連作短編集の受賞は
2001年、管浩江「永遠の森」です。
変更は、問題なく経過した様に思えます。

2:
さて、テレビドラマ等では、連続物の製作も行われています。
純粋の連続ドラマも存在しますが、1話完結ドラマの連続物が多数派です。
ドラマには最終回があり、シリーズで続編が作られる時は、何かが変わる事が普通です。

昔は、長寿ドラマがいくつかあり、最終回の重要性はそれほど高くなかったとも言えます。
最近では、1ドラマの寿命が短い傾向があります。
ただし、成功した場合は次々と続編のシリーズが制作されています。
1年を4クールに分けて、1クールは3ヶ月で、平均は8-13話程度が連続で作られます。
この程度の回数になると、最終回の比重が高くなります。

そこで増えるのが、最初は1話完結で進み、最後の2-4回が連続して1話的な内容です。
勿論、それ以前の話しでも伏線的に謎を埋めておく(テレビでは埋めるというより、はっきりと浮かばせます)手法です。
原作がある作品でも、オリジナルでも同じ手法は多いですし、その最初の試みはいつかはは判らないくらい初期(昔)です。

そして、人気がありシリーズ化したドラマでは最後まで1話完結で問題はないですので、シリーズ化を予定しないドラマや始めて作られるドラマで使用される事が多いです。

シリーズ化を予定しないドラマが予定外に人気があり、続編が作られる時はもし、前シリーズの終了方法によっては、かなりの内容変更が必要になります。

3:
続編ドラマが多いと言われる事がありますが、1900年後半の長寿ドラマ時代と較べると、大した事はありません。
半年や2年単位でシリーズが作られ、続編も多数という事は珍しくなかったのです。

続編物や長寿物は、テレビ局では宝的ですが、俳優は年齢は増えるものですし、レギュラーや準レギュラーの俳優の構成も考慮の対象です。
俳優は年齢不詳と言っても、25才以下は変化は直ぐに判りますので、シリーズ化の条件にレギュラーに替われない低い年齢の俳優がいない・・またはドラマ自体がシリーズ事に年齢を重ねる事があります。

4:
一方で、1話完結の2時間枠のドラマも多く作られています。
週に3-5本くらいでしょう。
そして、タイトルに数字が付くものが多いです。
勿論、シリーズ何作目の番号です。
誰が主人公や準レギュラーで何作シリーズを持っているかは、いわゆる売れっ子のバロメーターです。
また、シリーズの制作頻度も問題で、年1作から3作位でしょう。

こちらは明確に俳優年齢が高くなるので、主人公はある程度年齢の高い人になります。
シリーズによっては、主人公が変わって行く事も多いです。
制作頻度が高いか、毎週の連続化が有るときです。

複数のテレビ局で、異なる俳優で併行して作られる事もありますが、共作になると比較されるのは避けられません。
例としては「十津川警部シリーズ」「浅見光彦シリーズ」があります。
微妙なのが、「山村美紗の各シリーズ」「金田一耕助シリーズ」「森村誠一のシリーズ」「夏樹静子のシリーズ」等があります。
「宮部みゆき」や「東野圭吾」が加わってきました。
とにかく、原作が多いか、再ドラマ化でも見られる知名度の高さが必要です。

これらのシリーズでは、最終回の事は不明です。
俳優の死去は間違いなく、何かがかわります。
2014年現在では、藤田まこと・蟹江敬三・宇津井健などが思いつきます。

5:
元に戻って、連続ドラマで主人公の俳優を変えてシリーズが続く事はあるのかどうか。
「浅見光彦シリーズ」では既に行われていますが、原作の力もあるので一般化は難しいです。
2時間ドラマでは、しばしば行われていますが、毎週の連続ドラマでは誰も答えがないのでしょう。

従ってシリーズ化の連続ドラマでは比較的緩やかな設定等の変化で続編が作られ、それ以外の1クールドラマでは1話完結+後半の続きものの連作短編集的なドラマが主流になると予測します。

そして不思議な事に、原作物で連作短編集を使用する事は増えていません。
東野圭吾「新参者」という優れた作品がありましたが、それ以降はなかなか見かけません。
原作に忠実なドラマ化は難しいという事情があるのかとも思います。
ただ、オリジナル脚本の連作短編集的試みの成功例はなかなか思いつきません。
難し過ぎない事が必要なドラマと、小説は世界が異なるものかと思います。

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