コラム第13回映画の中のアリゾナ 〜西部劇だけがアリゾナじゃない! (9)
アリゾナが舞台となったり、アリゾナで撮影された映画を紹介するこのシリーズ。 9回目の今回は、ついに2000年代の映画に入ります。……そう、映画の舞台や撮影場所としてのアリゾナは、2000年代に入ってもなお、その価値を維持し続けているのです。 まずは、美女3人組の痛快アクション映画の第2弾「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」。 次に、ちょっとコミカルなところもあるサスペンスドラマ「ベティ・サイズモア」。 最後に、宇宙から飛来した謎の生物が次々と進化を遂げる「エボリューション」です。
チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル CHARLIE'S ANGELS: FULL THROTTLE (2003)
監督:マックG
出演:キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リュー
キャメロン・ディアス、ドリュー・バリモア、ルーシー・リューの3人の美女が大活躍する「チャーリーズ・エンジェル」。その第2弾が、本作「チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル」です。 「チャーリーズ・エンジェル」は、もともとは1970年代に一世を風靡したTVシリーズでした。それを、「姿を見せないボス『チャーリー』の探偵事務所で働く美女3人」という設定はそのままに、舞台を現代に移し、最新の映画技術を使い、そしてキャメロン・ディアス以下3人の美女で蘇らせたのが、2000年版「チャーリーズ・エンジェル」です。本作「フルスロットル」では、リメイク第1弾に引き続き、派手なアクションあり、コミカルな笑いあり、そして美女の競演ありという、爽快な作品となっています。 もちろん「フルスロットル」では、前作と同様に、様々な映画のパロディシーンも数多く盛り込まれています。オールドファンには懐かしいちょっと昔の映画から、最新の話題作まで、幅広い映画のあのシーン、あの音楽が登場してきます。そして今回のゲストはデミ・ムーア。ただでさえ華やかな本作品の中で、ひときわ輝いた存在となっています。 ところで本作にはアリゾナらしい景色は出てきませんが……実は、冒頭のダムのシーンが、何とアリゾナのグレンキャニオンダムで撮影されています。このシーンは、実写とCGとが巧みに混ぜ合わされており、また次々と画面が入れ替わるうえ、そもそも背後にヒマラヤかどこかの大きな山が写っているため(設定は「モンゴル」ですがとてもモンゴルには見えないのはご愛嬌!?)、ぱっと見るとアリゾナのダムには見えません。しかし、ダムの形、ダムの横にある岩肌、そしてダムの下流を流れる川の河岸を見ると、確かにグレンキャニオンダムです。 改めて撮影技術、特にCG技術の発展に驚かされる本作。ただしこれだけ時代が進んでも、「チャーリー」の指令は相変わらず古ぼけたマイクを通して行われる、というところがまたおもしろい演出です。ちなみにこの「チャーリー」の声ですが、1970年代と同様、ジョン・フォーサイスが演じているところも、嬉しい演出でしょう。 (写真:グレンキャニオンダム)
ベティ・サイズモア NURSE BETTY (2000)
監督:ニール・ラビュート
出演:レニー・ゼルウィガー、モーガン・フリーマン、クリス・ロック、グレッグ・キニア
「ベティ・サイズモア」は、たまたま起こってしまった殺人事件をきっかけに、メロドラマに熱を上げる女性、2人組の犯人、そしてメロドラマの主演俳優らとの間でまき起こるドタバタを描いたコミカルなサスペンスです。 メロドラマ「愛のすべて」に熱を上げるベティ(レニー・ゼルウィガー)は、ある殺人事件がショックとなって、自分が「愛のすべて」の登場人物だと思いこんでしまい、主人公を追いかける旅に出ます。一方、殺人事件の犯人であるチャーリー(モーガン・フリーマン)とウェズリー(クリス・ロック)も、とある事情から、ベティを追いかけることになります。ベティが行く先々で起こす騒動、そして犯人らのコミカルな追跡劇。はたしてベティは正気を取り戻せるのか、そして犯人らの行く末は……。 このコメディであり、かつサスペンスでもある本作品を魅力的なものとしているのは、まずはレニー・ゼルウィガーのチャーミングな演技でしょう。「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズでも見せた彼女の無邪気で自然で素直な人柄が、本作ではベティの役柄にぴったりとはまっています。この作品により、彼女が同年のゴールデン・グローブ賞主演女優賞(コメティ・ミュージカル部門)に輝いたのも納得できます。 また、モーガン・フリーマンの重厚かつコミカルな演技も見逃せません。本作では殺人犯という滅多にない役柄で、しかもコミカルな役回りであるにもかかわらず、モーガン・フリーマンはこれを当たり前のように演じています(なお、オープニング及びエンディングでは、モーガン・フリーマンの方がレニー・ゼルウィガーよりも先にクレジットされています)。 そして特筆すべきなのは、やはり綿密に練られた脚本でしょう。およそ現実にはありそうもない状況、ありそうもない展開なのにもかかわらず(そのような状況と展開がコミカルな要素でもありますが)、映画として破綻してしまうどころか、コメディとサスペンスのバランスがほどよくとられ、また思わずほろりとしてしまう場面もあるなど、うまくできていると思います。実際、本作の脚本は、同年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しているところです。 さて、本作では、グランドキャニオンという設定の場面が2回出てきます。このうち2回目は何と、…いや、あとは実際に映画をご覧下さい。 (写真:グランドキャニオン)
監督:アイヴァン・ライトマン
出演:デヴィッド・ドゥカヴニー、ジュリアン・ムーア、オーランド・ジョーンズ
宇宙から地球に突然降り立った謎の有機生命体が、短期間に進化を遂げながら人類を襲撃。これに対して立ち向かう人類――。プロットだけを見るとシリアスなSFのような「エボリューション」は、実はシリアスとは正反対の、アメリカンな笑いが満載の映画です。 本作で話題となったのは、タイトルにもなっている、有機生命体の「進化(エボリューション)」です。単純な生命体から複雑・高度な生命体への進化は、見ている者の想像を超えるテンポで進んでいきますし、またその造形も興味深いものばかりです。たまに、ややグロテスクな描写も出ており、そのあたりは日本人とアメリカ人の感覚の違いというものを感じずにはいられませんが。 ところで、この作品の舞台は、全編がアリゾナ州ペイジ及びその周辺のグレンキャニオンであり、実際の撮影もそこでなされています。主人公らのうち2名が勤務するのは「グレンキャニオン・コミュニティカレッジ」という(おそらく実在しない)学校です。また、映画中盤では「アリゾナ州知事」も登場します。 ちなみにこの映画の監督は、「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督です。そういえばこの映画、「ゴーストバスターズ」のテイストが漂っている気もします。ついでながら、「アリゾナ州知事」を演じているのは、「ゴーストバスターズ」の主人公3名のうちの1人、ダン・エイクロイドだったりします。
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