コラム第6回映画の中のアリゾナ 〜西部劇だけがアリゾナじゃない! (2)
アリゾナで撮影された映画を紹介するこのシリーズ。第2回目の今回は、1980年代の映画3本をご紹介したいと思います。
赤ちゃん泥棒 RAISING ARIZONA (1987)
監督:ジョエル・コーエン
出演:ニコラス・ケイジ、ホリー・ハンター
コーエン兄弟の作品である「赤ちゃん泥棒」は、笑いあり、ドタバタあり、アクションあり、そして最後にはちょっぴりほろりとさせる、アメリカ人の大好きなタイプのアメリカン・コメディ映画です。 出演は、後に「リービング・ラスベガス」(1995年)でアカデミー主演男優賞を受賞し、アクションからコメディまで幅広く活躍しているニコラス・ケイジ。そして「ピアノ・レッスン」(1993年)で感動的な演技を見せ、アカデミー主演女優賞に輝くことになるホリー・ハンター。本作はもちろんこれらの受賞前の作品ですが、2人のコミカルな名演にはやはりすばらしいものがあります。もちろんコーエン兄弟の考え抜かれたカメラワークも秀逸です。 さて、原題「RAISING ARIZONA」が示唆するとおり、この映画の舞台はアリゾナ州であり、さらにいえばテンピです。冒頭に出てくる刑務所は、アリゾナ州テンピのカウンティ(郡)刑務所という設定ですし、主人公らが居を構えるのもテンピ郊外という設定です。 実際の撮影も、スコッツデール、フェニックス、テンピ、スーパースティション山地周辺(トント・ナショナルフォレスト)と、全編がアリゾナで行われた模様です。主人公が上司を殴るシーンは、背後の山の形から見てロストダッチマン州立公園で撮影されたことが確実ですし、また銀行強盗のシーンは、今もなおスコッツデール郊外で営業中の「REATA PASS STEAKHOUSE」(http://www.reatapass.com/)で撮影されたとのことです。 この作品は、テーマとしては実は重いものを扱っています。しかし、それをカラッとした作品に仕上げているのは、ニコラス・ケイジとホリー・ハンターの名演、コーエン兄弟の技、そしてやはりアリゾナというロケーションではないでしょうか。頭を空っぽにして何も考えずに見るのがおすすめのコメディ映画です。 (写真:ロストダッチマン州立公園)
スーパーマンIII/電子の要塞 SUPERMAN III (1983)
監督:リチャード・レスター
出演:クリストファー・リーヴ、リチャード・プライアー、アネット・オトゥール
クリストファー・リーヴの代名詞といっていい「スーパーマン」。その第3作はコンピュータ・ネットワークを駆使して世界中の富の支配をたくらむ悪の一味、そして「電子の要塞」が相手です。 シリーズの中でこの「III」を特徴づけているのは、リチャード・プライアーのコミカルな演技もありますが、やはりクリプトナイトのためにスーパーマンの心に悪が芽生えたことでしょうか。無精ひげを生やし、悪態を付きながら飲んだくれとなって街をふらつくスーパーマンの姿というものは、なかなか見られるものではありません。 この映画のクライマックス・シーンは、(スタジオ・セット部分を除けば)グレンキャニオン付近で撮影されています。悪の一味の3人が気球で谷底へ下りていく場所は、グレンキャニオンダムからコロラド川を少し下流へ行ったあたりです。やがてスーパーマンがレイクパウエルの上を飛びながら近づいてきます。スーパーマンに向けてミサイルが発射されるのも、ダムから少し下流のあたりです。 なお、悪の一味が電気を奪う送電線は、水力発電所でもあるグレンキャニオンダムから伸びているものと思われます。 (写真:グレンキャニオンダム)
ベスト・キッド THE KARATE KID (1984)
監督:ジョン・G・アヴィルドセン
出演:ラルフ・マッチオ、ノリユキ・パット・モリタ、エリザベス・シュー
「ベスト・キッド」は、「ロッキー」のアヴィルドセン監督が、高校生と恋愛と空手をテーマに制作したスポーツ青春映画です。 この映画は、主人公・ヒロイン・ライバルの三角関係、最初は負けてばかりの主人公、年配の師匠、謎の特訓、そしてやってくるトーナメント…と、定石をきっちりと踏襲しています。この王道とも言えるストーリー展開と、空手というオリエンタルな雰囲気などのためか、この映画は当時ヒットし、その後2本の続編と、さらに女の子を主人公にした1本の続編が制作されました。 さて、この映画の開始早々に、セドナの風景が2回続けて出てきます。冒頭で主人公とその母親はニュージャージー州からカリフォルニア州へと車で移動するのですが、その途中にセドナを通過するのです。まず、自動車が道路をひた走るシーンで、遠方にベルロックがそびえています。次に、エンストした自動車を再発進させるシーンで、これはアップタウンのあたりです。 どちらのシーンもほんの一瞬でしかありませんので、お見逃しのないよう。 (写真:ベルロック)
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