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コラム第11回

映画の中のアリゾナ 〜西部劇だけがアリゾナじゃない! (7)


パパゴ・パーク アリゾナが舞台となったり、アリゾナで撮影された映画を紹介するこのシリーズ。

 7回目の今回は、映画の全部またはかなりの部分がアリゾナで撮影されたという作品3本を取りそろえました。

 まずは、ロデオ大会を通して家族の絆を描いた、スティーヴ・マックィーン主演の「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」。

 次に、オリヴァー・ストーン監督の不条理サスペンス映画「Uターン」。

 最後に、アメリカの荒野を舞台にした、ジョン・ウー監督のアクション映画「ブロークン・アロー」です。


ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦
JUNIOR BONNER (1972)

 監督:サム・ペキンパー
 出演:スティーヴ・マックィーン、ロバート・プレストン、アイダ・ルピノ

 「ジュニア・ボナー」は、ロデオ大会を通して家族の絆を描くヒューマン・ドラマです。

プレスコットの古い街並み この映画の主題となっているのは、スティーヴ・マックィーン演じる主人公が挑む「ロデオ大会」です。直前の大会でとある雄牛に「敗北」してしまった主人公の、静かな闘志が描き出されています。

 ロデオ大会がこの映画の縦糸だとすれば、横糸に相当する主題が「家族の絆」です。父と子の絆、父と母の絆、兄弟の絆……。ロデオ大会を通じた家族の「再生」が、この映画では様々なシーンやセリフを通して描かれます。

 何よりも、この映画の質を高めているのが、随所に見られる工夫されたカメラワークであり、またスローモーション等の効果です。特にロデオのシーンは、スローモーションとズームアップが実にうまく用いられており、単なるドラマではなく、上質のドキュメンタリーか芸術作品を見ているようです。

 さて、この映画、設定上の舞台はプレスコットであり、実際の撮影もプレスコット及びその周辺で行われた模様です。中でも、プレスコットの古い街並みは、現代(1970年代)を舞台とする映画でありながら、どこか西部劇時代を思わせるような静かで懐かしさのある雰囲気を醸し出しています。

 ゆったりとした時の流れが心地よく感じられる映画です。サム・ペキンパー監督の意外な一面がよく現れた、詩情豊かな作品と言えるでしょう。

(写真:プレスコットの古い街並み)


Uターン
U-TURN (1997)

 監督:オリヴァー・ストーン
 出演:ショーン・ペン、ジェニファー・ロペス、ニック・ノルティ

 アリゾナをドライブ中に自動車が故障したため、最寄りの寂れた町に立ち寄ったところ、町の人々は――。「Uターン」は、オリヴァー・ストーン監督による、フィルム・ノワールの雰囲気ただよう不条理サスペンス映画です。

サワロ・カクタス 社会派監督としてのイメージの強いオリヴァー・ストーン監督ですが、この映画では敢えて低予算・過密スケジュールという制約を受けつつ、実験色の強いサスペンスを見事に作り上げています。細かいショットの連続や、イメージカットの挿入といった技術的な試みは、映画全体を包む「不安感」を高めています。

 何よりも見逃せないのは、演技派俳優たちの豪華競演です。主人公のショーン・ペンはともかく、ジェニファー・ロペス、ニック・ノルティ、パワーズ・ブース、ビリー・ボブ・ソーントン、ジョン・ヴォイト、ホアキン・フェニックス、クレア・デインズ、リヴ・タイラー……。これらそうそうたる役者陣の名演、いや「怪演」を見るだけでも価値があるでしょう。

 さて、この映画、実はスーパースティション山地のふもとにあるスーペリアー(Superior)が舞台です。もちろん、実際の撮影もスーペリアー及びその郊外で行われたものです。オリヴァー・ストーン監督は、このスーペリアーの町を「不条理な町」へと見事に昇華させています。

 ところで、この映画に出てくる断崖は、「アパッチ・リープ」(Apache Leap)と言われています(映画の冒頭でも標識が出ています)。これは、その昔、騎兵隊に追いつめられたアパッチ族が、自ら死を選んでそこから飛び降りたという史実に由来しています。そうやって見ていくと、この映画からはネイティブ・アメリカン(インディアン)の置かれている環境とか、歴史とかいったものが浮かび上がってきます。オリヴァー・ストーン監督がこのサスペンス映画に巧みに織り込んだメッセージと言えるのではないでしょうか。

(写真:サワロ・カクタス)


ブロークン・アロー
BROKEN ARROW (1996)

 監督:ジョン・ウー
 出演:ジョン・トラヴォルタ、クリスチャン・スレイター、サマンサ・マシス

 「ブロークン・アロー」は、核弾頭をめぐる男たち、そして女性パークレンジャーの闘いを描いた、ジョン・ウー監督のアクション映画です。

レイクパウエル この映画で大きな存在感を見せているのは、やはりこれが本格的な悪役初挑戦となるジョン・トラヴォルタその人でしょう。核弾頭を奪おうとする悪役をさわやかに、かつ憎々しげに演じています。対照的に、本作のクリスチャン・スレイターは意外と初々しく、「ジョン・トラヴォルタ演じる先輩と対決することになってしまった後輩」という若者役にぴったりとはまっています。もちろん監督の手腕も見逃せません。これがハリウッド第2作というジョン・ウー監督は、本作の舞台をアメリカの荒野という広大な場所に設定したうえで、爆破・炎上シーンを含めたアクションを、次から次へと見せてくれます。

 さて、この映画上の舞台はユタ州という設定ですが、多くのシーンはレイクパウエルとグレンキャニオン アンテロープキャニオン周辺の砂漠やキャニオン、コロラド川等で撮影されています(クライマックスの鉄道のシーンのみモンタナ州での撮影。)。このうちレイクパウエルは、映画上でも「レイクパウエル」として登場しています。

 アリゾナの広い大地を舞台には、スケールの大きなアクションシーンがよく似合います。ジョン・ウー監督が本作の撮影地としてアリゾナを選んだのは、ベストチョイスだったと言えるでしょう。

(写真:アンテロープキャニオン近くの砂漠)

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