完全情報ゲームの先攻と後攻

完全情報ゲームとは、チェス・将棋・囲碁等のように対戦者が交互にアクションを行うときに、アクションを行う側が全ての情報を得られるゲームです。

全ての情報とは、その時のゲームの状態の情報の事を指します。

対戦者が何を考えているかとかの事は含みません。

完全に情報がある状態でアクションしますので、交互にアクションします。

なぜならば、同時アクションでは、相手側に同時のアクション情報が欠けるからです。

交互アクションの性格で、先攻と後攻が生じます。

ほとんどの場合は、先攻が有利です。

いくつかのゲームで必勝法が見つかる場合は、現状までは先攻です。

この先攻有利を如何に平等にするのかが、これらのゲームのポイントとなります。

ひとつは、偶数回を1組の対戦とする方法です。引き分けが多い事が前提となります。

また、ハンデを後攻に与える方法も一般的です。

囲碁のコミや、連珠の後攻の選択権などがあります。

将棋は、プロの世界でも現在までハンデなしです。

現実は、長く先攻(先手)が勝ち越しています。ただそれは、52%程度です。

千日手や持将棋を先後交代の、指し直しにする規定は微妙なハンデかもしれません。

先手が若干有利だから、後手は先後交代の指し直しでも良いと考えるというのは、不思議なルールといえます。なぜならば、先手が勝率が上がるほどに後手のハンデが強くなる性質だからです。

将棋界では今は大きな変化が起きています。

昔には想像さえしなかった、「後手1手損戦法」が結論がでないままに指され続けています。

アマには理解が困難な思想です。

簡単にいえば「後手は1手遅れて指すから、若干不利ならば、いっそ2手遅れよう」という考えです。

驚く事にこれが難しいのです。

理由は3つあります。

・将棋の駒の動きは、基本は前進ですので、多く手番があると前進しすぎた場合は元に戻せない。

・もし完全に飽和状態になってしまった時は、最善な状態を先攻が崩す事になる。

・そして、「後出しじゃんけん」の考えです。完全情報ゲームの情報量をより増やそうという考え方です。完全情報ゲームでは相手が1回アクションをすると情報が増えます。ならば1回パスして2回アクションしてもらえば、情報はより増えるという考えです。

相手がじゃんけんで手をみせてから、自分が手を出せば必ず勝てます。いわゆる後出しです。それならば相手の作戦を見てから自分の作戦を決めれば得な場合があるとも考えられます。

後手は先攻できないならば、相手の作戦をより多く見てからアクションを決める方法も有力だったのです。

故フランク永井の歌った「大阪ろまん」の歌詞「阪田三吉、端歩もついた・・・」は、阪田対木村義雄の南禅寺の1戦と、阪田対花田長太郎の天竜寺の1戦の双方で、後手の阪田が2手目に端の歩を突いた事をいっています。2局ともに阪田は敗れています。

阪田は平手に不満で、後手でなおかつ2手目に端歩をつきパスをしたとされていました。当時の技術ではたぶん、その通りだと思います。

2007-2008年にトップ棋士にその局面をどのように考えるかとの問いが、雑誌の企画の中で出されました。

今現在の見方は、作戦としてありえる・先手は不利ではないが、積極的に後手の端歩突きを悪手にする事は難しいでした。

思いもかけない所で技術が変わったのです。

将棋はパスはできません。

一般的な完全情報ゲームで、パスが有効な場合がある時は必勝の発見がより難しくなります。

ゲームの理論は、もともとは戦争の作戦を立てる方法として始まりました。

はたしてパスの思想は、戦争ではどうだったのでしょうか。

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