列車運賃の計算の難しさとこれから
鉄道作家の宮脇俊三の著書の中に、鉄道愛好家が集まって日本縦断旅行を行う時に参加者にわずかな料金の差があり原因を調べる所があります。
どうやら東京都内の特別区間の関係で若干の差が生じたらしい。鉄道マニアにとって払い過ぎは恥だそうです。
また旅行関係の主任資格試験には料金の計算問題があります。また、料金計算の問題を出すメールマガジンも存在します。
もうおわかりでしょうが、料金計算は非常に難しいのです。
まず始めに「料金」と「運賃」は異なります。
料金は運賃に特急料金などが加算されますからより複雑です。
しかし「運賃」にしぼっても素人には簡単には手におえません。
運賃自体基礎体系と、沢山の例外規則からなります。例外規則は複雑で専門家にまかせるしかありません。
基礎体系は、(1)対キロ制、(2)対キロ区間制、(3)区間制、(4)均一制 等です。
鉄道の稼働距離が長いと(1)を採用し短くなるにつれて(4)へ移行してゆきます。
(4)になるほど業務上は単純になり精算業務も容易になります。距離が長いJRは当然(1)を採用しています。
「対キロ制」は、キロ当たりの「賃率」に乗車区間の「営業キロ」を乗じて運賃額を計算する方法であり、運賃は、乗車距離に正比例して増加してゆきます。
しかし、「賃率」「営業キロ」ともに単純ではありません。
「賃率」は長距離の時のみに関係する内容です。10キロまで、300キロまで、600キロまで、これ以上の4段階に分かれていて長距離ほど安くなる様に設定されています。
利用者が注意する事は途中下車の可否です。途中下車が可能な場合は全距離をまとめて購入するのが有利です。
流石にこれは誰も知っているでしょう。
わかりやすくして、煩雑さを避ける目的で設けたのが「区間の代表キロ制」です。
今では良く知られていますが、知らないと「対キロ制」の逆転現象ともいえる事がおきます。
簡単にいえば、11-15キロ(端数は切り上げ・・・ここも注意)は中央の代表キロの13キロで運賃を決める事です。
結果として、例えば(あ)から(い)へ行くときに、途中の(う)で一度おりると運賃が安くなることがしばしばあります。
現在では乗り越し運賃計算も(あ)-(い)の運賃から既に払った金額を引くので、実際に2枚の切符をもっていないと安くはならなくなっています。(昔は安く計算する改札係もいましたが)
「わかりやすくして、煩雑さを避ける目的」とは具体的には何でしょうか。
切符の自動販売機のボタンの事でしょうか。10円単位にすることでしょうか?。
これを変更するのには、非常に多くの費用と問題が現状ではあります。ただ、いつの時代にも最善かどうかは別問題です。状況は変わります。
現在では、乗車人数の多い都会では自動改札で、しかもカードの使用が主流になりつつあります。
また一般人も消費税の導入以降は5円・1円の使用になれてきています。今またICカードへの移行が始まっています。
このような変化が生じて来ていますので長期的には、「区間の代表キロ制」も見直す時期ではないかと思います。
代表キロ制は平均すると公平にも見えます。
しかし実際は、端数の切り上げと乗降者数の大きい駅を区間の切れ目に設定することで乗客側に不利になりえると思います。
運賃の公平性から考えて、端数も含めた単純対キロ制へ移行することを本気で考えても良いのではないかと思います。
これは、非常に大きなビジネスモデルの変更になります。非常に計画的で大きな変更が伴います。
かなりの早くから検討と、計画が必要になります。
短期に見れば簡単には出来ないので反対意見多数になるのは分かっていますが、長期的にみてサービスの基本は運賃の公平性であると思います。