ヨハネの福音書の目次
はじめに |
ヨハネの福音書:第2章 各章は、英文:[NLT]、和文:[拙訳]、[解説]によって構成されています。
The Wedding at Cana カナの婚礼 1 The next day there was a wedding celebration in the village of Cana in Galilee. Jesus’ mother was there, 1 次の日、ガリラヤのカナの村で婚礼があり、イエスの母がそこにいました。 2 and Jesus and his disciples were also invited to the celebration. 2 イエスと弟子たちも、その婚礼に招かれていました。 3 The wine supply ran out during the festivities, so Jesus’ mother told him, “They have no more wine.” 3 お祝いの途中で、ぶどう酒がなくなったので、イエスの母がイエスに言いました。「もうぶどう酒がありません。」 4 “Dear woman, that’s not our problem,” Jesus replied. “My time has not yet come.” 4 イエスが答えて言いました。「母上さま、それは私たちの問題ではありません。私の時はまだ来ていないのです。」 5 But his mother told the servants, “Do whatever he tells you.” 5 だがイエスの母は手伝いの人たちに言いました。「この人が言うことを、何でもしてあげてください。」 6 Standing nearby were six stone water jars, used for Jewish ceremonial washing. Each could hold twenty to thirty gallons. 6 そのすぐ近くに石の水がめが六つ置いてありました。ユダヤ人の清めの儀式に使われていたのです。それぞれの水がめに80〜120リットルは入ります。 7 Jesus told the servants, “Fill the jars with water.” When the jars had been filled, 7 イエスは手伝いの人たちに言いました。「水がめに水を満たしなさい。」水がめがいっぱいになると、 8 he said, “Now dip some out, and take it to the master of ceremonies.” So the servants followed his instructions. 8 イエスは言いました。「さあ、汲み出しなさい。それを宴会の主人のところへ持って行きなさい。」そこで手伝いの人たちは言われたとおりにしました。 9 When the master of ceremonies tasted the water that was now wine, not knowing where it had come from (though, of course, the servants knew), he called the bridegroom over. 9 宴会の主人が水を味わうと、それがぶどう酒に変わっていたので、それがどこから来たのか、知らなかったので(もちろん、手伝いの者たちは知っていましたが)、花婿を呼び寄せました。 10 “A host always serves the best wine first,” he said. “Then, when everyone has had a lot to drink, he brings out the less expensive wine. But you have kept the best until now!” 10 主人は言いました。「主催者はいつも最良のぶどう酒を最初に出すものだ。やがてみなが十分飲んだころになると、やや値打ちの低いぶどう主を出してくる。だがあなたは最上のものを今の時点まで取っておいたのですね!」 11 This miraculous sign at Cana in Galilee was the first time Jesus revealed his glory. And his disciples believed in him. 11 ガリラヤのカナで行われたこの奇跡のしるしは、イエスがご自分の栄光を現わされた最初のことでした。弟子たちはイエスを信じました。 12 After the wedding he went to Capernaum for a few days with his mother, his brothers, and his disciples. 12 婚礼の後で、イエスは、母や兄弟たちや弟子たちといっしょにカペナウムに行き、そこに数日滞在しました。 [解説] カナ(Cana)の村はガリラヤ湖の西20kmあたりにあります。英語だと「ケイナ」と発音するので英語の礼拝などを聞いていると最初は「カナ」と「ケイナ」が結びつきません・・・。イエスの時代のユダヤ人の結婚は一週間に及ぶお祭りだったそうです。この間、新郎新婦の門出を祝うためたくさんの来賓が訪れます。婚礼があると往々にして町全体の人を招くのだそうで、町中誰でもお祝いに来るわけです。逆に招かれているのにお祝いに出向かないことは侮辱行為と受け取られます。それだけたくさんの人を迎える重要な意味を持つ大きなお祭りなのですから、婚礼の祝宴の計画は周到に立てなければなりません。だとすると途中でぶどう酒が切れてしまうという事態は「あら、ぶどう酒がきれちゃったわ」というようなちょっとした困り事レベルの出来事ではないはずで、イエスの母親(つまりマリア)は民族のしきたり違反、あるいは律法違反とさえ言われかねないほどの大変困難な局面に立たされていたことになります。 11節によるとイエスが水をぶどう酒に変えた出来事は最初の奇跡だったとのことですから、3節でマリアが「ぶどう酒がない」と言ったときにはイエスに奇跡を求めていたのではないはずで、自分の息子にこの困難な局面を打開する方法はないだろうかと相談したのでしょう。たとえばどこかで追加を買ってくるとか・・・。 4節のイエスの答、「母上さま、それは私たちの問題ではありません。私の時はまだ来ていないのです」の解釈は難しいですね。ですが5節のこれに対するマリアの対応は「この人が言うことを、何でもしてあげてください」です。イエスが何を言っているかわからないけれどイエスに全幅の信頼を寄せている様子です。イエスの答の意味は理解できなかったが、とにかくイエスを信じることにしたのです。これはつまり信仰の姿を現しているのかも知れません。 イエスはマリアのこの信仰の姿勢を見ると、7節で即座に「水がめに水を満たしなさい」と奇跡の準備を指示します。六つの水がめはユダヤの清めの儀式に使われていたそうです。当時のユダヤ人は日常生活で様々な「不浄」なものに触れることで自分も汚れてしまうと考えていたので、飲食の前には自分の手に水をかけて清めたのです。 10節、イエスが水から作ったぶどう酒はやはり最良の出来だったのですね。 11節、弟子たちはこの奇跡を目にしてイエスを信じました。超自然的な奇跡はイエスが自分が神であることを証明した方法のひとつです。他にイエスが神さまであること、救世主であることの証明するのは、旧約聖書の預言の実現とイエスが語った言葉の権威です。 12節、婚礼の後イエスの一行はガリラヤ湖北岸のカペナウムに移動します。カペナウムはイエスがガリラヤ地方で行った伝道活動の中心地です。イエスの一行にはイエスの母マリアとイエスの兄弟たちが含まれています。イエスの兄弟はマリアとヨセフの子供です。つまりマリアが処女懐胎でイエスを地上に送り出してからヨセフとの間に子供を持ったということです。聖書にはイエスには四人の弟と数人の妹がいたことが書かれています。聖書には記述がありませんが、伝説によるとヨセフはこの時点ではすでに死んでいたそうです。イエスの一家がイエスと行動を共にしていたのはそのためかも知れません。 このページの先頭に戻るJesus Clears the Temple イエスが寺院を一掃する 13 It was nearly time for the Jewish Passover celebration, so Jesus went to Jerusalem. 13 ユダヤ人の過越の祭りが近づいたので、イエスはエルサレムへ行きました。 14 In the Temple area he saw merchants selling cattle, sheep, and doves for sacrifices; he also saw dealers at tables exchanging foreign money. 14 寺院の中には、いけにえのための牛や羊や鳩を売る商人がいました。また外貨の両替商たちがテーブルについているのも見えました。 15 Jesus made a whip from some ropes and chased them all out of the Temple. He drove out the sheep and cattle, scattered the money changers’ coins over the floor, and turned over their tables. 15 イエスは細なわでむちを作ると、商人たちを寺院から追い出しました。イエスは羊や牛も追い出し、両替商の硬貨を床にまき散らして、テーブルをひっくり返しました。 16 Then, going over to the people who sold doves, he told them, “Get these things out of here. Stop turning my Father’s house into a marketplace!” 16 それから鳩を売っていた人たちのところへ行って、言いました。「それをここから持って出て行きなさい。私の父の家を市場にするのはやめなさい。」 17 Then his disciples remembered this prophecy from the Scriptures: “Passion for God’s house will consume me.” 17 弟子たちは聖書の中の預言を思い出しました。「神さまの家を思う熱意が私を食い尽くす。」 18 But the Jewish leaders demanded, “What are you doing? If God gave you authority to do this, show us a miraculous sign to prove it.” 18 ところがユダヤ人の指導者たちが問い詰めました。「いったいあなたは何をしているのか。もし神さまから権限を得てこれをしているのなら、それを証明するような奇跡のしるしを私たちに見せなさい。」 19 “All right,” Jesus replied. “Destroy this temple, and in three days I will raise it up.” 19 「いいでしょう。」イエスは答えて言いました。「この寺院をこわしてみなさい。私は、三日でそれを建てましょう。」 20 “What!” they exclaimed. “It has taken forty-six years to build this Temple, and you can rebuild it in three days?” 20 「何だって?」ユダヤ人たちは叫びました。「この寺院は建てるのに46年もかかったのです。あなたはそれを三日で建てるのですか?」 21 But when Jesus said “this temple,” he meant his own body. 21 しかしイエスが「この寺院」と言ったのは、自分の身体ことを言っていたのでした。 22 After he was raised from the dead, his disciples remembered he had said this, and they believed both the Scriptures and what Jesus had said. 22 イエスが死からよみがえったとき、弟子たちはイエスがこのように言っていたと思い出しました。そして弟子たちは聖書とイエスの言った言葉を信じました。 Jesus and Nicodemus イエスとニコデモ 23 Because of the miraculous signs Jesus did in Jerusalem at the Passover celebration, many began to trust in him. 23 イエスが過越の祭りの祝いの間に行った奇跡のしるしによって、たくさんの人たちがイエスを信じ始めました。 24 But Jesus didn’t trust them, because he knew human nature. 24 しかしイエスは、その人たちを信じませんでした。なぜなら、イエスは人の性質を知っていたからです。 25 No one needed to tell him what mankind is really like. 25 だれもイエスに人の本性について教える必要はありませんでした。 [解説] 過越の祭り(Passover)は年に一度エルサレムの寺院で開かれるユダヤ民族のお祭りです。毎年行われるお祭りは他にもいくつかありますがこのお祭りはユダヤ民族がかつてエジプトでの奴隷状態から脱出したときの出来事を忘れないように行うお祭りで一番重要なお祭りのひとつと言っていいと思います。ユダヤの律法(法律)は成人男子がこのお祭りに参加することを義務として定めていますから、イスラエル全土からばかりか、ローマ帝国領の周囲の各国からもユダヤ人がエルサレムに集まったはずです。一週間の最初の1日目が「過越の祭り」で、残りの一週間は「種を入れないパンの祭り(Festival of Unleavened Bread)」となります。この一週間エルサレムはたくさんの人でごった返します。 寺院はエルサレムの高台にあります。最初の寺院は当時から1000年近く前にイスラエルの王ソロモンが建てましたがこれはバビロニア帝国がエルサレムを征服したときに破壊されました。その後紀元前515年にバビロニアから戻ったユダヤ人が再建し、さらにこの当時イスラエルを支配していて建築好きで知られるヘロデ大王が改修/拡張したものです。寺院の内部はいくつかのエリアに区切られているのですがその一番外側に「異邦人の庭(Court of the Gentiles)」と呼ばれる広い場所があり、そこには商人や両替商がたくさんいて寺院に集まる人たち相手に商売をしていたようです。寺院に来る人々は律法に従って定められたいけにえを捧げるために動物を買ったり、外国から戻った人はやはり律法に沿って寺院税を払うために外貨を両替していました。 これらの行為そのものはユダヤの律法に照らしても合法と思われますが、イエスがこれらを蹴散らした理由はその目的に本来は神さまの崇拝に使う「異邦人の庭」を使っていたこと、法外に高い価格付けや手数料で商売が行われていたこと、それらの利益の一部が恐らく寺院の関係者に納められる仕組みになっていて金銭的な不正や癒着があったからだろうと考えられます。これらの不正直は神さまに対する誠意と相反します。これがイエスの「私の父の家を市場にするな」の言葉と暴力的な蹴散らしの行動につながり、それを見た寺院側の関係者であるユダヤ指導者からは「誰の権限でこんなことをするのか」ということで両者の対立になったのでしょう。イエスは同じようなことを約三年後、十字架刑の直前にも行っています。 18節、「これを神の権限でやっていると言うのなら奇跡を行って証明せよ」と言われたイエスは19節で「寺院を破壊すればそれを三日で再建する」と言います。 20節、ユダヤ指導者が「この寺院は建てるのに46年もかかった」と言うのはヘロデ大王が紀元前20年から開始した改築プロジェクトの年数でこの時点でもまだ完了していませんでした。イエスが「三日で再建する」と言ったのはこのヘロデ大王の寺院のことではなく、自分の身体のこと、つまり十字架の上で殺されても三日後によみがえると約三年後に起こることをこの時点で予告して言ったのでした。 このページの先頭に戻る前の章へ戻る | 次の章へ進むPresented by Koji Tanaka. 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