ヨハネの福音書の目次

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ヨハネの福音書

はじめに
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
第8章
第9章
第10章
第11章
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第21章





ヨハネの福音書:はじめに


「Gospel of John(ヨハネの福音書)」は何世紀もの間、聖書の中でクリスチャンに最も読まれ愛されて来た本です。「聖書はどこから読めばいいの?」ときかれてこの本をすすめるクリスチャンがたくさんいます。この本を英語と日本語で一緒に読んでみましょう。


共観福音書

「Gospel(福音書)」の名前がつく本は新約聖書の最初に四つ収録されています。(1) Matthew(マタイ)、(2) Mark(マルコ)、(3) Luke(ルカ)、(4) John(ヨハネ)の四冊でヨハネの福音書は四番目にあたります。

ヨハネを除く最初の三冊を特別に「共観福音書」と呼びますが、これはこの三冊に共通する記述が多く、恐らく同じ文献から発していると考えられるからです。

「ヨハネの福音書」を除く最初の三冊のうち一番最初に書かれたとされるのが「マルコの福音書」です。記述者のマルコは使徒ではなくイエスの十字架死〜復活の後に信者になった人ですが、使徒のひとりペテロの仕事を手伝う時期が長く、その間にイエスに関する福音を聞かされて記述したと考えられています。これが西暦50年代頃、つまりイエスの十字架死〜復活(西暦30年)から25年程度を経た頃です。

「マタイの福音書」と「ルカの福音書」は西暦60年代(「マルコの福音書」の約10年後)の記述と考えられていて、つまりこの二人は自分が記述する前に「マルコの福音書」を読んでいたはずです(この他にもこの時点でパウロの書簡は多数が記述〜流布されており、また「Q」と呼ばれるイエスの説教集が存在したと言われます)。なぜわざわざ似たような福音書が何度も記述されたのかと言うと、それは想定する読者が異なったためで読み手に合わせて書き口を変えたからというのが理由のひとつと考えられています。

つまり最初の「マルコの福音書」はマルコが滞在していたローマで主にローマにいたクリスチャンと信者全般に向けて書かれ、「マタイの福音書」はイエスが旧約聖書の預言を実現した救世主であることを伝えるために特にユダヤ人に向けて書かれ、「ルカの福音書」は歴史書としてイエスに関する話を記録として客観的かつ正確に残すために書かれた、という具合です。


ヨハネの福音書

これから読む「ヨハネの福音書」はこれら三冊とはまったく異なる視点で書かれており、記述も西暦80年代後半〜90年頃とかなり遅れています。三冊の共観福音書がどちらかというとイエスの伝道に関する記録を行ったのに対し、ヨハネはイエスが地上に現れ、十字架に掛かって殺されてその三日後によみがえった、その出来事の背景や目的であるとか、意味や意図を伝えることを主眼としていると感じさせます。三冊の共観福音書が書かなかった福音の本当の意味を伝える最後の福音書です。

ヨハネがこの福音書を書いた目的は福音書の中に明確に書かれています。John 20:31(ヨハネの福音書20章31節)に「この福音書はイエスが救世主、神さまの息子、であることを信じられるように、そしてイエスを信じることで永遠の命が得られることを信じられるように」と書かれているのがその部分です。


使徒ヨハネ

記述者のヨハネはイエスが選んだ十二使徒の一人です。パレスチナ北部のガリラヤ湖で漁師を営んでいたZebedee(ゼベダイ)の息子でやはり十二使徒のひとりであるヤコブ(James)とは兄弟です(聖書にはどちらが年長かは書かれていませんが「ヤコブとヨハネ」という記述が多いのでヤコブが年長と考えられています)。二人はイエスに着いてくるようにと呼ばれるまでは父と漁師をしていました(つまり「ヨハネの福音書」は漁師が書いた神学書ということになります)。一家はガリラヤ湖の北岸にある町、カペナウムに住んでいて、聖書には船や召し使いを所有していたという記述がありますから恐らく裕福な家だったようです。

「使徒」はイエスから選ばれイエスと行動を共にして伝道の一部始終を目撃した人たちのことです。ヨハネとヤコブの二人の兄弟がイエスに呼ばれたのはイエス自身が洗礼者ヨハネによる洗礼を受けた後で、ペテロとアンデレの兄弟を呼んだ直後です。この四人の中から、ペテロ、ヤコブ、ヨハネの三人は最もイエスに近い使徒となり、イエスがヤイロの娘を死からよみがえらせる場面に立ち会ったり、イエスが変貌する様子を目撃したり、十字架の直前にゲッセマネでのイエスの苦悩の際にも共にいました。

ヨハネとヤコブの兄弟はイエスの一行の中では強気で頑固な一派だったようでイエスからは「雷の息子たち」(Sons of Thunder)のニックネームで呼ばれています。たとえばあるサマリヤの村がイエスを受け入れるのを拒んだとき、二人はイエスに天から火を降らして村を滅ぼすことを提案しました。

そのヨハネが書いた本がこれから読む福音書なのですが、書き口は控えめで、「信じる」「愛」「真実」「世界」「光」「闇」「上」「下」「名前」「目撃の証」「罪」「裁き」「永遠の命」「栄光」「パン」「水」「時間」などの象徴的なキーワードが多用されます。イエスを信じることがどれほど人を変えて行くかがその内容からもうかがえます。結果ヨハネの福音書は他の福音書とはまったく異なる救世主イエスの姿を描き出し、人々の心を揺り動かすような言葉でつづられた福音書になりました。




ここに掲載している内容は2007年1月〜2008年4月にメールマガジンで配信した内容に加筆・編集したものです。




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