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やぶれっ!住基ネット情報ファイル


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このページの目次

1.山田区長の証人申請は却下され、弁論終結−3月24日判決

2.第8回口頭弁論の書面−「横浜方式」について双方陳述

3.山田区長の陳述書

4.杉並区の準備書面(6)

5.国・都の準備書面(7)

6.国・都、データマッチングを積極的に肯定

本文はじめです、本文をとばします。

1.山田区長の証人申請は却下され、弁論終結−3月24日判決

杉並区が「横浜方式」での住基ネット接続と国賠請求を求めて国・都に対しておこした「住基ネット受信義務確認等請求訴訟」の第8回口頭弁論が、2006年1月17日10時50分から東京地裁民事713号法廷で行われました。

書面の陳述のあと、裁判長は今後の進行について、双方に意見を求めました。

杉並区側は、証人申請以外については「国・都側の準備書面に引用されている意見書を昨日もらったので、十分に検討し尽くしていない。反論の要否の検討と、反論する場合は提出する機会が欲しい」との意見を述べました。

また証人申請については、陳述書に則して敷衍する形で山田杉並区長の人証を求める、と述べました。

国・都側は、「原告への反論の要否を検討中であり、検討の機会が欲しい」との意見。

それをうけて裁判官が合議した結果、山田区長の人証については却下。

そして今後について「すでに相当に主張立証されており、反論への反論への反論という流れになっているので、これで弁論を終結する」としました。

ただ、原告側に対しては「被告の意見書への検討については、書いてもらえば参考にする。それにより新たな主張が出てくるならば弁論を再開せざるをえないが、出てくるとは予想していない」との発言があり、被告側に対しても「原告の準備書面への反論が出されれば参考にする」としました。

判決言渡しは、3月24日(金)13時15分、東京地方裁判所民事708号法廷の予定。

上記の原告、被告それぞれの文書については「正式な書面提出期限は定めないが、判決に間に合わせるには2月24日までに提出を」とされています。

2.第8回口頭弁論の書面−「横浜方式」について双方陳述

2月1日、杉並区のサイト第8回口頭弁論の書面が掲載されました。

掲載されたのは、原告杉並区では、準備書面(6)、山田区長の陳述書(甲第41号証)や黒K田充さんの意見書(甲第42号証)、神奈川住基ネット裁判の資料として横浜市の担当課長に対する2005年10月27日の証人調書(甲第43号証)や横浜方式に関する横浜市への調査嘱託書(甲第44号証)など。

被告国・都側では、準備書面(7)、堀部政男中央大学大学院教授と長谷部恭男東京大学大学院教授の意見書(乙第10号証、乙第11号証)、など。

今回の双方の弁論は、大部分が「横浜方式」についての陳述になっています。

3.山田区長の陳述書

証人申請は却下されましたが、「山田区長陳述書(甲第41号証、suit08_03.pdf)」では、杉並区の地域特性として原水禁運動発祥の地であることや住基電算化反対の直接請求運動などにも触れて、高い自治意識とプライバシー意識を紹介するとともに、横浜方式導入表明に至る経過、「選択制」についての考えなどが述べられています。

内容は従前の主張と同様ですが、2002年8月1日に当面住基ネットに不参加の方針を発表した時に、思いもよらず区民から支持する電話が鳴りっぱなしになったエピソードなども紹介されています。

この陳述書では、末尾で2点が強調されています。

1点目は、『一部には,今回の訴訟を「横浜方式による参加」を求めるのではなく,「横浜方式による不参加」を求めるものであるかのように誤解する向き」(杉並区、pdfファイル「山田区長陳述書」16ページ)があることに対して、政治家個人としては住基ネットに大変危惧しているが、行政の長としては法を遵守して参加問題に取り組んできたことを強調しています。私たちは、この裁判を「住基ネットに参加させろ裁判」とよんでおり、誤解はしていませんが。

2点目は、『私の「望ましいIT社会のために必要な選択制」の主張と,法を遵守するなかで導入しようとしている「通知・非通知申し出の選択による段階的な全員参加方式」である「横浜方式」を混同(杉並区、pdfファイル「山田区長陳述書」18ページ)しないように、ということです。これも私たちは以前から「横浜方式は選択制と似て非なるもの」と批判してきましたが、マスコミ等では相変わらず「選択制」とよんでいます。

山田区長は、「横浜方式」は選択制に近い内容を持っているが『しかし,これはあくまでも「住基ネットの安全性が総合的に確認」されるまでの暫定的な取り扱いであり,本来的な個人選択制を認めたものではありません。(杉並区、pdfファイル「山田区長陳述書」18ページ)と強調しています。また、IT社会の効率性の確保のために強制参加ではなく選択制が必要、という主張には、山田区長の「新自由主義」の政治信条を感じます。

4.杉並区の準備書面(6)

杉並区の「準備書面(6)(suit08_01.pdf)」は、「横浜方式」導入の合法性・正当性について、以下のように国・都の準備書面(6)に反論しています。

そして住基ネットの立法趣旨・目的の問題点について、「黒田意見書(甲第42号証、suit08_04.pdf)」を活用して、具体的に指摘しています。

私たちからすれば、「それならなぜ急いで参加する必要があるの」と言いたいところですが。

5.国・都の準備書面(7)

国・都側の「準備書面(7)(suit08_09.pdf)」も、やはり「横浜方式」を取りあげ、杉並区の準備書面(5)に以下の点で反論するものです。

この国・都の主張のでたらめさは多々ありますが、残念ながら?弁論は今回で終わりです。

6.国・都、データマッチングを積極的に肯定

今回の国・都の準備書面(7)で注目したいのは、前回杉並区が指摘したデータマッチングの問題について、国・都が「現行の住基ネットにおいて、行政機関による大規模なデータマッチングや名寄せが行われる具体的危険は存在しない(国・東京都、pdfファイル「準備書面(7)」24ページ)としつつ、「目的範囲内の利用等」におけるデータマッチングを、「当然のこと」として肯定し、行政事務の合理化のために(共済年金や恩給、旅券法事務を例に)積極的に評価していることです。

『(ア)住基法では、住基法別表の事務を行うため本人確認情報を受領した者は、当該事務処理の遂行に必要な範囲内で,受領した本人確認情報を利用し、又は提供することとされている(住基法30条の34)。

したがって、当然のことながら、この規定の定める範囲内で本人確認情報と他の個人情報ファイルに含まれる電子データを比較、検索及び結合すること(データマッチング)は許される。』

(国・東京都、pdfファイル「準備書面(7)」25ページ)

住基法を改正した第145国会の審議では、再三、データマッチングの危険性や「必要な範囲内での他への提供とは何か」等質問されながら、曖昧な答弁しかされないまま強行採決されています。

たしかに当時も政府は、こう答弁していました。

『そのデータマッチングというのは、自分の所管する、まさにその提供を受けて、それを利用するということの目的でいろいろおやりになることは、それはあると思います。しかし、それ以外の目的でデータベースをつくってみたり、あるいはそれ以外の目的でデータマッチングをやろうということ自体、目的外利用に該当をするわけでありまして、禁止されておるわけであります。』

(衆議院「第145国会 衆議院地方行政委員会第18号」1999年6月8日、野田毅自治大臣)

しかしほとんどの質問者はたとえば「データベースの結合、これは行政情報でもしないようにしようということでありますが、それは貫かれているということでいいんですか(衆議院「第145国会 衆議院地方行政委員会第12号」1999年4月20日、公明党桝屋敬悟委員)というように、住基ネット利用のデータマッチング自体が行政機関内でも禁止されているという理解で質問するなど、論議はかみ合わないままでした。

当時自治省が「住基ネットは国民総背番号制ではない」ということを説明した資料では、次のように説明しています。

『③ 国の機関等へのデータ提供は住民の居住関係の確認のための求めがあったときに限定し、個別の目的ごとに法律上の根拠が必要であり、かつ、目的外利用を禁止することから、国が個別の目的を越えてデータマッチングすることにより、様々な個人情報を一元的に収集・管理することとはなりえない仕組みであること』

(1998年6月5日(金)13時30分から15時30分まで自治省講堂で開催された、各都道府県住民基本台帳事務担当課および情報システム担当課の担当者を対象にした「住民基本台帳法の一部を改正する法律案等説明会」当日配布資料5の3ページ「総背番号制?」の「1 住民基本台帳ネットワークシステムは、」の第3号。説明会の説明者は自治省行政局振興課長、同課課長補佐、自治省大臣官房情報政策室自治事務官の3人。引用文中の下線は原文のまま。)

そもそも、本人確認が必要な際に住基ネットから情報提供を受けるということと、各行政機関の個人情報データベースに住民票コードを付加してそのデータを結合していくということは、まったく異質な処理です。データ結合については、住基法には一切規定がありません。それを国・都は、従前の住民票写しの添付などによる照合と、住基ネットの本人確認情報と他の個人情報ファイルに含まれる電子データを比較、検索及び結合すること(データマッチング)とは全く同じであり、人格権侵害の具体的危険は増大しない(国・東京都、pdfファイル「準備書面(7)」26〜27ページ)とすり替えています。

政府もいままでは住基ネットへの批判の強さをかわすために「住民票コードを使ったデータマッチングは禁止されている」という曖昧な説明を強調してきた印象がありますが、おそらく年金・社会保障制度改革や税制改革(納税者番号)、電子政府・電子自治体構築などで全国規模でのデータマッチングが現実的になってきたことを受けて、今後は「目的範囲内の利用等」でのデータマッチングを推進したい、ということではないでしょうか。

いよいよ、住基ネットの本性が露出してきた感じです。

(原田富弘・記)
本文おわりです。
奥付です、奥付をとばします。
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Copyright(C) 2006 やぶれっ!住基ネット市民行動
初版:2006年02月12日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/suginami01/court08.html
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