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目次です、目次をとばします。

1.今後の訴訟について

2.損害賠償請求に対して国・都が反論

(1)杉並区に対する都の受信拒否について

(2)杉並区の「損害」について

3.杉並区の損害賠償請求と国・都の反論について

本文はじめです、本文をとばします。

1.今後の訴訟について

杉並区が「横浜方式」での住基ネット接続と国賠請求を求めて国・都に対しておこした「住基ネット受信義務確認等請求訴訟」の第5回口頭弁論が、2005年7月20日10時30分から東京地裁712号法廷で行われました。

国・都は国家賠償請求について準備書面(4)を陳述し、却下判決を求める意見書を提出。杉並区からは訴えの適法性について国・都に反論した準備書面(2)を陳述しました。7月27日に杉並区のwebサイト書面が掲載されています。

口頭弁論では、裁判長が杉並区に対して、訴えの適否についてはこの準備書面(2)でまとまっているか尋ねました。杉並区からは、論点になっている「原告の主観的権利」についてさらにまとめて主張したい、との表明がありました。次回に、杉並区側から訴えの適否について補充し、また国・都の国家賠償請求の主張に対する反論をすることになっています。

また国・都に対しては裁判長から、国家賠償請求についての準備書面(4)で、杉並区の訴状のうち「転入通知に要する費用」について論評がないが、これについて反論するか放置するか、との問いかけがありました。国・都からは、検討し次回までに補充するか決めたい、との表明があり、裁判長は補充があれば次回までに提出するよう求めました。

次回の口頭弁論は、裁判長は9月6日を提案しましたが杉並区の都合がつかず、9月21日も都合があわなかったものの、裁判長からこの週までには入れたいとの要望があり、結局9月14日(水)11時10分から712号法廷で行われることになりました。書面提出期限は9月7日となっています。

口頭弁論は2か月に1回のペースで行われていますが、次回で「訴えの適法性」については双方の論点が出尽くす、という感じです。国家賠償請求については、次回、杉並側の反論と国・都側の補充がされる予定で、年内くらいはそのやり取りが続きそうです。

2.損害賠償請求に対して国・都が反論

国・都側「意見書」は、確認請求も国賠請求も不適法であり、仮に国賠請求が法律上の争訟に該当しても、不適法である確認請求との併合提起の要件を欠き不適法であること、そして国賠請求が適法とされても、確認請求については分離して却下判決をすることを求めています。

杉並区「準備書面(2)」は、国・都側の「法律上の争訟にあたらない」との主張に反論し、併合要件や国賠請求についての主張を批判したものです。

いずれも、住基ネットそのものについては、ふれていません。

国・都側「準備書面(4)」は、国賠請求について反論したもので、この書面には住基ネットの問題からは、いくつか興味ある内容を含んでいます。

(1)杉並区に対する都の受信拒否について

都・国の行為については、杉並区の「横浜方式」採用を以下のように批判し、法的義務違反はないとしています。

ア.住基法36条の2は全住民の送信を前提としており、送信拒否の根拠とはできない。
イ.横浜市の「四者合意」は本格稼働までの期間を念頭において違法状態を解消する手順を確認したもので、非通知希望者を区分して送信することを容認するものではなく、安全性の総合的な確認を横浜市の裁量に任せたものでもない。
ウ.「横浜方式」は住基ネットの行政目的を著しく阻害し、現に横浜市では不合理な対応を強いられている。また杉並区の通知済み本人確認情報には通知希望者と非通知希望者が混在し、通知希望者のみの通知が行われた場合には、住基法の想定しないそれを区別する措置を講じる義務を都に負わせる。
エ.「四者合意」は本格稼働までを念頭に確認したもので、国の杉並区への対応が横浜市への対応と比べ不平等ということもない。

この「ア.」「イ.」「エ.」は従来の総務省の主張と同様ですが、自治体の住基ネット接続中止の根拠としての「住基法36条の2」についての裁判所の判断は注目されます。「四者合意は住基ネット本格稼働までのもの」という主張に対しては、そんなことは合意文書には書かれていない、という杉並区からの反論が予想され、文書の内容が裁判でより明らかになるかもしれません。

不思議なのは「ウ.」で、横浜市は非通知希望者については「職権消除等」として送信することで、県側では非通知希望者かどうかの識別はしないようにしており、その是非はありますが、杉並区も同様の措置を予定しています。そのことを国・都側が知らないはずはないので、この主張の意味はわかりません。杉並区議会でも議論がありましたが、今後、裁判で「職権消除等」として扱うことの是非が争点になるかもしれません。

(2)杉並区の「損害」について

また杉並区のいう「損害」については、以下のように、本件各行為によって生じた支出ではないので、本件各行為の違法性を検討するまでもなく損害と解する余地はない、としています。

ア.住基ネット設備関連費用

住基ネットに係る業務を行う義務を負うから、機器リース代は本件各行為の有無にかかわらず当然に支出しなければならず、損害にあたらない。

イ.転入転出手続上の郵便費用

杉並区からの転出者については、仮に都に受信義務違反があったとしても、転入通知を転入地市町村から郵送する費用は、本来転入地市町村が支出すべきで、杉並区が負担する法的義務はない。

※杉並区への転入者の郵便費用については記載なし。

また原告の主張する郵送費用には非通知希望者も含むが、「横浜方式」では非通知希望者は従前の郵送通知の継続になり、もともと杉並区の負担。

ウ.住民票無料交付

仮に都に受信義務違反があったとしても、杉並区に無料交付の義務はない。

また住民票の交付比率が、通知希望者と非通知希望者の比率に一致する根拠はない。

エ.人件費

「横浜方式」では非通知希望者について従前の事務を継続せねばならず、「横浜方式」は行政の効率化を阻害し、住基ネットを利用した場合としない場合で人件費の増減は即断できない。

3.杉並区の損害賠償請求と国・都の反論について

私は、杉並区の「住基ネットに接続できないことで損害を被っている」という主張に対しては、そもそも疑問をもっています。

ただそれは国・都側とは、正反対の立場です。

「ア.」については、非接続を継続し機器リースをやめれば、損害はなくなる、と考えます。

「ウ.」の住民票無料交付も、そもそも住基ネットによって従来市区町村の収入だった交付手数料が減っているわけで、接続できないから損害を被っている、という以前の問題です。

また「エ.」の人件費も、国・都がいうように横浜方式だから効率性を阻害するのではなく、そもそも住基ネットによって自治体の負担は増え人件費は増加するので、非接続を決めれば人件費の損害はない、と考えます。

「イ.」についても、もともと郵送でやっていたわけで、新たな負担ではありません。

ただこの「イ.」についての国・都側の主張は、事実関係について、疑問があります。

杉並区は訴状で、「なお、転入通知の(住基ネットを通じた市町村間のデータ送信という)処理は、非通知希望者についても行われる」と書いています。おそらくこれは、横浜市で現在行われていることを踏まえての記述と思われます。

国・都側は、非通知希望者については、従前の郵送通知の継続となる、と反論しています。事実はどちらでしょうか。

なお杉並区のいうように、「非通知申し出をした区民も、転入通知は住基ネットを通して送信される」ということは、はたして「横浜方式は選択制か」という論点にもかかわります。

(原田・記)
本文おわりです。
奥付です、奥付をとばします。
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Copyright(C) 2005-2006 やぶれっ!住基ネット市民行動
初版:2005年09月25日、最終更新日:2006年02月12日
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yabure/suginami01/court05.html
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