杉並「住基ネット裁判」報告(3)第3回口頭弁論 2005年3月15日
1.webサイトへの掲載の遅れ
杉並区が「横浜方式」での住基ネット参加を求めて国・都に対しておこした訴訟の第3回口頭弁論が、2005年3月15日午前10時40分東京地方裁判所713号法廷で行われ、4月15日に杉並区のwebサイトにその資料が掲載されました。いままではすぐに掲載されていましたが、今回は1か月後です。
2.論点は「訴訟の適法性」中心に
今回は、杉並区から2005年2月23日付けで準備書面(1)と鑑定意見書(甲第27号証、甲第28号証)が提出され、被告国・都側から3月15日付けで準備書面(2)が提出されました。
次回は、国・都側が検討に2か月ほしいと希望し、5月25日午前11時712号法廷で行われることになり、書面提出期限は5月16日までとされました。
国・都側の準備書面(2)は、訴えが法律上の争訟性を欠き不適法という主張を補充するもので、住基ネットそのものについては論じていません。
杉並区側の準備書面(1)も、この国・都側の不適法という「本案前の答弁」に対する反論を詳細に述べたもので、住基ネットそのものについてあらたな主張はしていません。
杉並区の鑑定書は、次の二つが提出されています。いずれも訴訟の適法性についての鑑定です。
- 甲第27号証「住基ネット受信義務確認訴訟の適法性について」兼子仁(都立大名誉教授、法学博士、2004年11月1日作成)
- 甲第28号証「住基ネット受信義務確認訴訟の適法性について」阿部泰隆(神戸大法学研究科教授、東京大学法学博士、2005年1月11日作成)
裁判は当面、訴訟の適法性めぐっての争いになり、住基ネットの問題点の解明とはだいぶ違う展開になりそうです。また「本案前」で時間を費やすと、そのまま却下になるのならともかく、今後住基ネットへの段階的参加の是非を議論して判決が出るまでかなり時間がかかるかも、という気がします。
当日裁判長からは、損害賠償に関する部分とそうでない部分を一緒に議論するか、別々にやるか、裁判所としてはどちらでもいいとしながら、検討を求めました。また杉並区の提出した鑑定意見書に対しては、現時点では行政訴訟法改正前だが、判決は新行政訴訟法施行後になるので、その前提で議論してほしい、との発言がありました。
さらに、権利義務主体としての国や自治体と、行政機関としての国や自治体という面を、杉並区に対してはこれをどううまくつないで議論できるか、国・都に対してはどう分離して議論するか、検討してほしい、との発言もありました。
3.不参加自治体への対応について求釈明
杉並区は準備書面の末尾で、次の2点を明らかにすることを国・都に求めました。
- 東京都が2003年6月4日の総務局長コメントで、「横浜と同じ参加方式は,住民全員が参加した段階では適法ですが,それより前の段階においては依然として住民基本台帳法に違反」「このまま住基ネットに速やかに全面参加しない場合には,法的拘束力のある地方自治法第245条の5の規定による是正の要求について,総務省と調整を進めていきます。」(甲第13号証)と表明しているが、被告国及び被告東京都の間で現在に至るまでに,地方自治法第245条の5の規定による是正の要求につき,両者間で,いつ,どのような「調整」がなされたか。
- 被告国及び被告東京都は,原告の住基ネットに関する本件事務処理が違法との前提に立っていると思われるが,それにもかかわらず,現在に至るまで,上記規定による是正の要求をしなかった理由。
不参加自治体への対応がどのように検討されたのか、という点で、国・都の見解が注目されます。
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初版:2005年08月01日、最終更新日:2006年02月12日
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