全体的に見て、マーチもずいぶん変わったなあ、という印象を受ける。先代マーチは用と美を兼ね備えた、とてもまとまりのいいスタイルで10年近く生産され古さは感じてきたが、それはそれで受け容れられていた。そのデザインから見ると、このスタイルの未来的に振りすぎた形は、よく言えば素晴らしいデザイン進化と言えるが、悪く言えば先代の奇形とも言える。 でも受け容れられているのは確かだから成功と言えるのだろう。
走りに関して言えばまあ、あたりさわり無くといったところ。ハードに振るわけでもなく、フツーにキビキビよく走る。取り回しも(ダッシュボード全体のボリュームがない分)しやすいと思う。女性が日常使うにまったく不便はないだろう。走る楽しさは求めてないから用に徹するのみで面白くもなんともない。つまり味は無い。 このスタイルからして好みが分かれるのでは?と思ったが順調に販売実績をあげているようである。しかし、このスタイルが受け容れられる日本にしたのは実はヴィッツの成果ではないだろうか?まだフィットもマーチもデビューしていない頃、ヴィッツの先進的なスタイルは非常によかった。が、先進的すぎて日本の風景に馴染むのか心配だったことも確かだ。都会の若い女性が乗るのなら似合うが、田舎のオバチャンが乗るのは抵抗があるのではないかとも心配していた。 それまではスターレット、カローラが主流だったからだ。それらを一切製造しないことでヴィッツは「これからの日本のスモールはこの形です」と日本人にインプットさせた。そのおかげか今やオバチャンだろうが、おじいちゃんだろうがヴィッツに抵抗もなく乗っている。田舎を走ってても何の違和感もない浸透ぶりだ。このヴィッツの成し得た成果のおかげで、少々冒険したデザインでも受け容れられる日本になったと思う。 もし、ヴィッツより先にこのマーチがデビューしていたら、当時の、スモールカーはスターレットやカローラが定番の世の中でも今の爆発的ヒットになっていただろうか?もしかしたらビークロスと同じ運命をたどっていたかもしれない。マーチのヒットの影にヴィッツのスモールカーデザイン革命とも言うべき偉業ありといったところではないだろうか?そんなことマーチにはぜんぜん関係ないか。